阿蘇 like no other place
旅行手配で参加させていただいたgreenzさんのリジェネラティブツーリズムin 阿蘇。まさに人の手が加わりながら自然が維持されている場所だったため、これは直接体験せねばとツアー同行させていただいてきました!
日程は12/9(土)・12/10(日)の2日間。
事前に最低気温がマイナスになるような予報も出ていたのでビクビクしていたのですが、蓋を開けてみればすごく過ごしやすいお天気に恵まれ、絶好の草原日和となりました。
※かなり例外的に好天が続いたみたいです!
初めて牧野に佇む
空港から出発して向かったのは米塚(こめづか)。
考えるより感じようということで、牧野に佇む時間となりました。
※普通は入れない米塚の麓の牧野に、特別に許可を取っていただき入ることができました。
360度見回しても広がる草、草、草。
振り替えると米塚とはおよそ似つかない山がそびえています。
一部山が切れてゆるやかに下っていく傾斜の先には、先ほど出発した熊本空港がかすかに見えていました。
この広がり感をうまく表現できないのがもどかしいですが、草と山に囲まれるこれまで見たことない風景にすっかり圧倒されました。
地中は焼かない野焼き
そんな牧野のまさに現場に立ちながら、草原を維持するために行われている『野焼き』の超初歩を解説していただきました。
『野焼き』はそのまま放っておくと、どんどん遷移が進んで森林になっていってしまうところを、敢えて火を入れて焼くことで草原として保つ作業と、なんとなく聞き知っていました。
そこでふと湧いてきた「一面焼き切っちゃって、その後生えてくる草の種はどこから来るんだろう?」という疑問をぶつけてみることに。
その答えは、「牧野に生えている草は基本多年草なので、種ではなくすでにそこにある根・株から新しい芽が出てくる」という意外なもの。
「え?焼くのに根や株は無事なの?」と思いませんか?
なんでも野焼きの火が同じ場所で燃えている時間は、3~5分程度だそう。
枯れている葉や茎を燃やすので、すぐ燃え尽きて火は次の場所にどんどん移っていくのです。
火が付いているのがその程度の短時間であれば熱は土の中まで伝わらず、根っこや土中に控えている次の新芽は無事生き残るというカラクリになっているのだとか!
つまり野焼きの火で焼き払うのはお役を終えた枯れた葉と茎で、それが生き残った根や新芽に場所をつくることになるんですね。
(だから冬の終わり~春の初めに野焼きするんですね)
めっちゃよくできてる~!
草原の貴重さを学ぶ
牧野で感覚を開いた後は、阿蘇草原保全活動センターへ移動して草原のイロハを学びました。
解説して下さったのは、阿蘇グリーンストックの増井さん。まさに草原博士です。
ポイントをざっくりかいつまむと、以下の通りです。
どうです?
草原、なかんずく阿蘇の草原がどれだけ貴重な存在か良く分かります。
もう、これは大切に守っていかないと、と思いますよね!
草原のお手入れ体験
と、阿蘇の草原のかけがえのなさを学んだところで、いざ自分たちも保全活動に参加させてもらいました。
携わったのは、刈ってある草を運び出す作業。
草を刈っておくことで、野焼きの火をコントロールしやすくする効果があるのだそうです。
場所を移して2か所の草を運び出しました。トータル1時間弱でしょうか。
作業したのは広大な阿蘇の本当にほんの一角ですが、実際に自分の身体を動かしてお手入れに加わると、すっかり愛着が湧いてくるから不思議です。
阿蘇ゆたっと村での夜と朝
草原での作業の後は阿蘇の温泉に入ってさっぱりし、宿泊先になる阿蘇ゆたっと村へチェックインしました。
阿蘇ゆたっと村は阿蘇グリーンストックの体験交流施設で、里山体験ができたり、野焼き支援ボランティアの方が野焼きの際に宿泊されたりする施設です。
夜ご飯は阿蘇のあか牛のバーベキュー。
近隣で採れたシイタケやナスの野菜もめちゃくちゃ美味しかったです!
そして翌朝は・・・
きれいな雲海が出ているではないですか!
山の端から漏れ始める陽の光、稜線のシルエット、その麓に広がる雲海・・・
なんて幻想的な景色なんでしょう!
とてつもないおまけをいただいた気分になりました。
牧羊で草原を守るさとう農園さん
2日目の午前中は、牛にかわって羊で草原を守ろうとしているさとう農園さんの牧野を見学に。
もともと阿蘇の代表的な家畜といえばあか牛でしたが、肉牛は傷が付くと大きく値が下がってしまうとのことで、放牧から畜舎での飼育に移行が進んでいるそうなんです。
しかもサシが少ない肉質のため、今の等級の付け方だと高いランクが付かず、飼育頭数も減ってきています。
減った牛の代わりに何か他の家畜で草原を利用し、保全できないかと考えた代表の佐藤智香さんが目をつけたのが羊でした。
羊は牛を育てるより初期投資が少なく、エサ代もかかりません。肉だけでなく羊毛も製品になるため、余すところなく活かすことができます。
何より地元にある東海大学の阿蘇キャンパスで40年にわたり羊を育てている蓄積がありました。
草原を守り続けるためには、牧羊を継続性のある事業にしていく必要があります。
それには一定の規模が必要ということで、現在150頭ほどいる羊を将来的には500頭台まで増やしていく計画なのだそうです。
また育てた羊のお肉を流通させられるよう、自前で食肉加工工場も整備しました。
今は試験的な出荷ですが、それでも県内のホテルなどから引き合いがある状況だといいます。
加えて羊毛についても、自前での加工を追求。一切化学物質を使わず、水だけで洗浄して糸に加工する技術を開発されているとのことです。
こちらもセーターやバッグの製作を始められていて、本格的な出荷に至るまであと一歩のところまできています。
羊を育てるだけでなく、食肉加工から毛織物の開発までー「農園」という名前ながら、手掛けられていることの幅広さ(とそこまで拡げられる胆力)には驚きました。
それも1,000年かけて守られてきた草原を次の1,000年に残したいという想いあってのこと。そのために必要なことはやり抜く、という芯の強さを感じました。
ウマいが一番!
2日間のツアーもあっという間に大詰め。
地域の方々が「もち」を囲んで集まっていた集会所を転用した「もちとこ」さんでランチをいただき、あまりに天気が良かったので前庭で2日間の振り返りをしました。
振り返りでも話したのですが、理屈の上で阿蘇の草原が貴重で大切ですなのは間違いありません。
でもそれ以上に阿蘇には、初めて牧野に降り立ち草地や山に囲まれた時に感じた「なんだここは!」という圧倒される感じ、山・平地・その向こうにまた山というオリジナルな地形、そこで体を動かす気持ちよさ、土地と結びついた農産物や畜産物の美味しさ、といった体験としての純粋な楽しさがありました。
しかもこれはまだまだ阿蘇の本気のほんの一部だという・・・
その面白い体験が回りまわって阿蘇の草原を守ることにつながる、それをつなげられる方たちがいる、稀有でいい場所だなぁというのが今回阿蘇を初訪問しての率直な感想でした。
実は阿蘇自体、空港から3~40分で牧野の入り口にたどり着ける十分好アクセスな場所なのですが、九州まで移動せねばならないのも事実。
楽しむことを通じて草原の保護に関わる人を増やしていくためにも、まずは関東近郊で自然のお手入れを普段の暮らしに取り入れていく人を増やしていきたいと、改めて感じたのでした。
お声がけ下さったgreenzさん、丸2日間アテンド下さった阿蘇グリーンストックの増井さん、見学受け入れて下さったさとう農園の皆さん、どうもありがとうございました!
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