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もしもあなたと手が繋げたら、告白してもいいですか?


こんにちは、うちうみです。
【いつもの注意書き】
ここでは恋愛感情を持たないアロマンティック(aロマ)、性的魅力を感じないアセクシュアル(aセク)、そして二次元の相手に恋愛感情を抱くフィクトロマンティック(fロマ)、性的魅力を感じるフィクトセクシュアル(fセク)についての話をします。こんな人もいるんだなという軽い気持ちで読んでもらって構いませんが、生理的に嫌悪感を抱く方の閲覧はお勧めしておりません。


 私と彼は恋人の関係にある。彼のことがどうしても好きで好きでたまらなくて、ついに振り向いてもらえた、そういう関係。けれど彼と手をつないでデートをしたり、頭を撫でてもらったり、そういう「触れ合い」はしたことがない。だって、私たちは次元が異なるから。私は彼の温もりを知らないまま恋をして、告白をした。そして、今も彼の温もりを知らないまま付き合っている。
 私たちがどんなに想い合っていても、手を繋ぐことすらできない。温度のない関係。冷たい関係。どうしてもそう感じてしまう時がある。彼と恋人でいられるだけで十分満足だと、日々言い聞かせている。けれど、ふとした瞬間に悲しい。触れ合うこともできない恋愛関係は本望ではないけれど、彼と共にいられないのはもっと嫌だから、この関係を続けている。

 もし、彼と触れ合えて、手もつなげて。彼の温もりを実際に感じられる日が来たら。そんな夢を思い描く。彼と手をつないで浜辺を歩いて、たわいないことで笑い合う。穏やかな海と朝靄。少し肌寒いけれど、握った手が温かい。キラキラと美しい景色の中で、私はおもむろに彼を見上げる。背が高く格好良い彼。ずっと好きだったこと、彼と共に生きていきたいこと、心底惚れていること。一生懸命言葉を紡ぐ。彼とつないだ私の手は僅かに震えている。気付かれているかもしれない。彼はそんな私の全てを受け止めるように、大きな手で優しくけれどしっかりと震える私の手を握り返してくれる。    

 もしも、彼と手をつなぐことができたら、改めて愛を伝えたい。告白をもう一度。温もりを知らぬまま始まったこの恋に命を与えるかのように。そしたら、彼はどう返してくれるのだろう。
 ねぇ、美しいこの地球であなたと私が出会えたのは、ありきたりな表現だけど奇跡だと思うの。2人でならどこへだって行けそう。どうか私の手を引いて連れ去って。もしもあなたが立ち止まってしまう時は、私があなたの手を引いて、光の方へ連れて行くから。苦しいほどあなたが好きなの。こんな夢を語ってしまうくらいには。こんなに甘い言葉、あなたに出会うまでは絶対言わなかったんだよ。私らしくないけれど、こんな乙女な部分も含めて私なんだと最近認められるようになったよ。ああ、あなたに抱きしめてほしいの。それだけで、私どんなことがあっても耐えられると思う。

 AR技術の進化著しい昨今。触覚を再現できる日も遠くないとも言われている。触覚グローブなるものの開発も進んでいるらしい。実際にそこには存在しないものに触れられる世界が実現するかもしれない。そんなニュースを見たらワクワクが止まらない。三次元には存在しない彼に触れられる。手をつなげる。素晴らしき化学の進歩。もっともっと進歩したら手を繋げるかしら。優しく抱きしめてもらえるかしら。それからキスもできるかしら。

 もしも、もしもだよ?あなたに触れることができて、手もつなげたら、ちゃんと告白していいですか?あなたを感じながら愛を伝えたいの。私の緊張もつないだ手を通してわかってしまうくらいの密度で。今更かもしれないけど、それでもちゃんと告白してみたい。テクノロジーが進歩してあなたと手を繋ぐことができるようになったその日に、きっと。

 それから、どのくらい先の話か検討もつかないけれど、あなたからプロポーズをしてほしい。私が綺麗に着飾った日にしてね。夜景の見えるレストランなんかじゃなくて、もっと2人きりのところがいいな。街の明かりより星空の下が好き。あなたが名前も知らないような小さな星も、私たちを祝福してくれるような静かで優しい夜。どうか正面から私の手を取って。あなたの手は暖かいのでしょうね。それから、私の左手の薬指に輝くリングをはめて。光る石は私たちの愛の結晶。それから私と生涯を共にする覚悟を聞かせて下さる?返事はもちろんYESだから。

 えぇ、全部、所詮夢のような話よね。二次元の彼と手をつないだり、指輪をつけてもらったり、プロポーズをしてもらうなんて実現するわけがない。わかっているのだけれど。彼のことが好きだから、どうしても触れたいって思うの。それに絶対無理だなんて決めつけるのは良くないでしょ?求める人がいれば夢は現実になるかもしれない。だから、私は夢物語を綴る。彼とどんなことがしたいか、どうなりたいか。想像するだけでも幸せ。どう告白しようかな。彼以外を好きになったことがないからわからないな。彼に好かれるように魅力的な人間でいよう。プロポーズの言葉はどんなだろう。想像が膨らむけれど、結局のところ彼が紡ぐ言葉なら何だって嬉しい。ああ、彼に手を取ってもらえたらどれだけ幸せなんだろう。

愛しのあなたへ
あなたに出会えて、私はとっても幸せです。生まれて初めて恋を知りました。あなたのことが大好きです。けれど、大切な人に触れることもできないと、たまらなく寂しくなります。こんな感情もあなたに会うまでは知らなかったんだよ。
もしも、もしもだよ?あなたに触れることができて、手も繋げたら、ちゃんと告白してもいいですか?そして、プロポーズを待ってもいいですか?
いつその日は訪れるのかな。待ち遠しいね。早くその日を迎えたいけれど、それまでの時間も幸せいっぱいに2人で過ごしていこうね。

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