ブロッコリーが指定野菜になると生産者、小売、消費者は何が変わるの?

先日実に30年ぶりに国が指定する特に重要な野菜に新たな野菜が加わりました。
それが皆さんおなじみのブロッコリーです。

さて、このブロッコリーが指定野菜になると消費者や小売にとって良いことがあるのでしょうか?という質問を先日マスコミの方からいただきました。その時に回答した内容をXにつぶやいたところ、多くの農家さんからも知らなかった。勉強になったという回答をいただきましたので、こちらでより詳しく記載していきます。


ブロッコリーが指定野菜になって良いことはあるのか?

結論から言いますと
「生産者、消費者、小売りと特に今までと変わらない」

と思います。以下に理由を列挙します。

理由1「生産者の視点」

農業者から見て指定野菜は国指定産地の部会以外にはあまり利点はないです また新規に指定産地化するなら20haは集めないとダメなので平野部以外はすぐの変化は厳しいし、平野部だと既に産地があるから、これらの産地の人が機械導入などの補助金加点項目として利用できるぐらいなんじゃないかと思います。
また指定産地となると相場が下落した時に価格保証対象になる代わりに、産地廃棄などの出荷調整の義務を負う事になります。
価格保証に関してはいくつか条件があります。
①共同販売であること
これは指定産地になるためには共同出荷を行う会が必要でこの会に対して保証金などが支払われるため、共同販売として認定されている産地の名前で出荷する必要があります。
※部会の規定にもよりますが、必ずしも部会に出さなければいけないというわけではありません部会次第です。しかし価格が高い時は自分で高く売り、低くなると価格保証を目当てに部会出しをするような人は困るので出荷量を制限されたりはあるかもしれません

②価格下落に対して過去5年間出荷期間平均単価より低くなった場合
この5年間出荷期間平均単価より低くなった場合なのですが、例として下の図を作ってみました。2019~2023年は市場価格を反映させていますが、今年の単価は適当です。平均単価ー今年の単価で出てくる差引がプラスになっているところがkgあたりの補助対象額です。

実際にはこの差引の分の20円のうち90%までが保証対象だったような記憶があります。(うちの場合キャベツが指定産地でした)
これが平均価格600円なのに今年の価格は300円ぐらいであれば、非常にありがたいのですが、結局5年平均を見てもらうとわかりますが、ブロッコリーの値動きは基本的に安定しています。
1月~3月安い
4月~6月横ばいやや上がり始める
7月再び安くなる
8~9月どんどん上がる
10月~11月下がり始める
12月安い
みたいな値動きです。大きく値上がりすることがあっても12月~3月の相場が死んでるような時は結局毎年死んでるので補助対象となったとしても微々たる数字にしかならないでしょう。特にブロッコリーはドライアイスや発泡スチロールを使うといった感じで梱包にコストがかかります。
むしろ潰した方が良いことも多いです。

そしてこの保証金・・・入金がすごく遅くてだいたい年明けです。
キャッシュフローがあまり面白くありません。市場で売れれば10日後には入金されますが、下手すると半年後入金だと・・・これなら普通に保証が発動しない販売される金額の方がありがたいのです。

理由2「消費者の視点」

ブロッコリーは店持ちが悪く、また生産側としても在圃性が悪いため、できると全国一斉に出すみたいな感じになるのは指定産地が増えたところで変わりません。理由1でも書きましたが値動きが分かりやすく、元々乱高下の激しい品目であり、安いときも高い時も極端な値段になりやすいです。
通年で買いやすい価格を期待するのが消費者心理だと思いますが、品目特性上恩恵は感じにくいと思われます。 ただ、冬場に生産がより集中しやすくはなると思うので冬場の価格下落は増えるかもしれませんね。
しかし2022年なんかは地獄の安値相場で1本30円みたいな価格が付いていたりしましたから、ここがさらに安くなったとしてもおそらく小売りの価格は下がることは無いのではないかと思います。

理由3「小売りの視点」

小売が指定野菜、指定産地に期待するのは理由1の図の通り、値段が大きく跳ね始める8〜10月の物量確保だと思います。しかしながらこの時期には以下のような産地拡大しにくい課題があります。
①気温的に栽培適地が少ない
②収穫→パッケージ→保管と設備から整えないと難しい品目なので高温期産地になり得る山間部では設備がない、老人ばかりでJAが投資もできない
③同様に山間部では冷蔵持ちの輸送業者が激減

このような悪条件があるため一気に産地化へ踏み切るのは中々厳しいのではないかと思います。正直なところ生産よりもその次の段階がハードル高いためすんなり指定産地を取りに行く部会があるかは微妙です。
すでにある夏のレタスやキャベツなどを生産できて設備もある程度ある高原産地で品目転換が進むか次第ですね。

最後に

上記のような理由で指定野菜にブロッコリーがなった!やった!安くなる!という値動きにはすぐにはならないかと思います。そのため個人的には消費者がそんなに気にするようなことではないですね。
ブロッコリーは国の進める水田転換での園芸品目(米から野菜への転換)として重点品目に入っていて、水田から畑地に変える補助金が取れたり、3年間奨励金が貰えたりするので、平野部の大型化している水稲農家ないし法人が部会を作り産地化して作付け増える可能性はあります。
しかしこの場合、あくまで主生産品目は米なのでだいたいは米の作業と競合しない12月~2月ぐらいまでの出荷を狙う場合が多いです。
そうなると先に書いたようにベッタベタに安い下落相場率が上がる可能性があります。そのためその時期のブロッコリーの安全策として市場だけでなく一定数は加工業者と一緒になった産地育成プログラムなどの補助事業も活用していくと思われますので、ブロッコリーの国産冷凍物が増えると予想してます。 そういう意味で通年国産物は手に入りやすくなるかもしれませんね。

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