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うちの場合は。 12、日曜のおやつの時間

 昔、車で10分ほどの所に住む祖父母の家に、2週に1度、日曜15時に家族4人で遊びに行く習慣があった。おやつの時間を祖父母と一緒に6人で過ごすのが決まっていたのだ。私達家族は当時はマンション暮らしだったので、ペットを買えない環境だった兄と私は祖父母が庭で飼っていたワンコに会いに行くのがとても楽しみだった。ワンコ側も普段の祖父母との生活は体力を使うことがないので、パワーが有り余っている私達を慕ってくれていて、祖父母の家についたらすぐ、2人と1匹でわちゃわちゃと走り回って遊んだ。

両親にとってはたぶん祖父母との情報交換や孫見せの意味があったと思うが、私はかなりちいさかったことと、ワンコのことしか考えていなかったので、2週に1度の祖父母との時間にどういう会話が繰り広げられていたのか全く覚えていない。ただニオイと風景だけは記憶にしっかりと焼きついて残っていて、古い洋館に昭和テイストをMIXしたデザインだった祖父母の家でのおやつの時間は、ゆったりとしたハイカラなティータイムといった感じだった。

クローネのコルネが大好物だった祖父は、おやつはそれしか食べず、(ティラミスが激流行りしたときとミルフィーユが激流行りしたときはそれを一瞬食べた時もあったが)父はだいたいショートケーキで、祖父と父はコーヒーを必ず飲むのだが、なんともレトロな理科の実験で使うようなアルコールランプのサイフォン式だった。沸騰してコポコポいっている情景は今でも手に取るように思い出せる。祖母や母は花柄のティーカップで紅茶を飲んでいて、そのときどきの買ってきたケーキを食べ、子供達は祖母が酒屋さんに配達してもらっていたビン入りの三ツ矢サイダーかバヤリースのオレンジをシュークリームなどと一緒にいただくのが決まりだった。大人になった今でもビン入りのコーラを見かけるとついつい買ってしまうのは、その頃の美味しい体験が染み付いているからだと思う。

3世代でのこういった時間の使い方は世代が入れ替わっても続いていくものだとてっきりあの頃は思っていたが、大人になって地元に住むことがそもそもなくなり、DINKSだったり、日曜でもそんな余裕がなかったり、リモートで手軽な会話で済ませたりで、過去からの地続きの今日のほうが珍しい事態なのだとゆうことがわかってきた。けれどこうやってしっかりと体の真ん中にその頃の思い出が残っていてくれているので、本日日曜の15時にひとりでパソコンに向かっていても楽しい気持ちにさせてくれる。

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