車の燃費とは
【はじめに】
燃費というのは文字通りの意味であれば、燃料にかかる費用のことではあるものの、実際には走行距離と燃料量の関係を示すことが多いです。
そのため、日本で使われるレギュラー、ハイオク、軽油でも同じ指標が用いられますが、どれだけの費用がかかるのかは、使われる燃料単価で換算しないとわかりません。
燃料についてはこちら
【単位】
日本では走行距離を燃料量で割った[km/L]が使われる事が多いです。
よく「リッター何キロ?」といったことを言います。
北米では距離がマイル、燃料量容量がガロンと単位が違うので、MPG(miles per gallon)を使います。
欧州では日本とは逆数になり、燃料量を走行距離で割った[L/100km]が使われます。
【燃費計】
最近の車はメーターに燃費が表示されるようになっているものが多いです。
その多くは瞬間燃費と平均燃費で表示されます。
瞬間燃費はその時の速度から走行距離を換算し、主にエンジンの燃料噴射量から使用した燃料量を算出します。
平均燃費の算出は瞬間燃費の積算もしくは、燃料タンク容量変化と走行距離から演算されると思いますが、実装はまちまちだと思います。
瞬間燃費計を気にしながら走行すると、車がどんな時に燃料をいっぱい使って、どんな時に少なくなるのかが分かります。
が、くれぐれも走行中の注視は避けてください。
【満タン法】
簡単かつ精度の高い燃費の計測方法です。
満タンに給油するたびに、給油量と前回給油から現在までの走行距離を使って計算します。
昔はトリップメーターのA/Bを使って走行距離を把握していましたが、最近は燃費計算のサイトを利用するのが良いです。
オススメはe燃費というサイト↓です。
http://e-nenpi.com
アプリでメーターとレシートの写真をアップするだけで計算してくれますし、過去の推移をグラフで見る事も同一車種の他ユーザーと比べる事もできます。
e燃費は投稿型の燃費サイトのため、その車の他のユーザーも含めた平均燃費は投稿をする人の善意に依存します。
しかし、統計的に信頼度が低い値は省く等の処理が行われるので比較的信頼性は高いです。
燃料はエンジンで燃やす以外にも、燃料タンクから出たり、クランクケースからも少しずつ漏れ出します。
満タン法だとそのような場合にも確実にカウントされるので、燃費計よりも精度が高く出る可能性が高いです。
ただし精度はガソリンスタンドの供給装置とトリップメーターの精度に依存します。
タイヤの空気圧を適正に保ち、出来れば同じ場所の同じ機械で同じ方法で給油するのが良いでしょう。
【モード燃費とは】
本来、燃費は走り方で大きく変わって来てしまうため、他の車と比較するのが困難です。
しかし、燃費の値は車の維持費を算出するためにとても大事なので統一が必要となり、決まった走行パターンで計測することになりました。
これがモード燃費です。
元は排ガス規制のために始まりましたが、現在では燃費の色合いが濃いです。
(エコカー減税も絡んできます)
【モード燃費の計測方法】
燃費計測は室内で行うことにより、条件を一定に保つ配慮がされています。
シャシーダイナモというローラーに発電機をつなげた機械の上を駆動輪にあてて、車体は固定することで室内での計測が可能になっています。
走行風は車速に比例した風を送ることで行います。
使った燃料の量を測るのではなく、テールパイプからのガスを全て集め、成分を分析することで燃費(を含めた排気ガス)を計測します。
【モード燃費の歴史】
燃費は同じ走行パターンで計測しますが、技術の進歩とともに、より実走行に近いパターンになって来ています。
〈4モード〉
1966年に日本で初めての排出ガス規制導入。
内容としては「アイドリング 加速 40km/h一定 減速」という台形パターン。
〈10モード〉
1973年に導入。
より実走行に近い形を目指して作られた。
走行パターンとしては、運輸省の三鷹研究所と霞ヶ関を往復する周回コースでの実走行データをもとに作られたもの。
最高速度は40km/hで試験時間は135秒。
〈15モード〉
高速道路を想定した走行モードで、最高速度は70km/h。
結構ギザギザしてるけど間にアイドリング期間は無い。
試験時間は231秒
〈10.15モード〉
1991年に導入。
10モードと15モードを足し合わせたものです。
はじめに10モードを3回、その後に15モードを1回行う。
試験時間は660秒。
〈11モード〉
1975年に導入。
それまでのモードはエンジンが暖気状態(ホットスタートと言います。15分以上の暖気走行後)で行われていましたが、エンジンが冷えた状態から開始するモード(コールドスタートと言います)。
暖気をするぶんの熱を奪われるし、冷えた状態では機械的に効率よく動けないことから燃費には厳しい試験。
燃費もさることながら、触媒コンバータが冷えてるので排気ガス成分の有毒物質(NOx、HC、CO等)により厳しい。
走行モードそのものは10モードとあまり変わらない。
最高速度60km/h、試験時間505秒。
〈JC08モード〉
2008年に導入。
10.15モードと11モードを1つの試験に統合したもの。
10.15モードよりもさらに実際の走行パターンにより近く、最高速度は81.6km/hに引き上げられた。
〈WLTC〉
燃費の計測モードが世界で統一します。
2018年10月以降に発売される新型車に表示が義務付けられます。
表示は混合モードの他、市街地(WLTC-L)、郊外(WLTC-M)、高速道路(WLTC-M)の3種類でも表示されるので、自分の運転シチュエーション配分によりモード燃費を計算することが出来ます。
混合モードではだいたい現在のJC08モードよりも1km/Lほど低い値になると予想されています。
出典:乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試 験法(WLTP)の概要について 経済産業省 国土交通省
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/sho_ene/jidosha_wg/2015/pdf/001_03_00.pdf
〈RDE(リアルドライブエミッション)〉
それまではシャシーダイナモの試験でしたが、車に排ガス計測装置(PEMS)を乗せて、実際の走行で計測します。
フォルクスワーゲンの不正ソフトが明らかになったのもPEMSによる試験結果が発端でした。
日本で導入される見通しはありませんが、車両認定基準の国際統一の流れがあるので無視はできません。
出典:欧州における検査方法見直しの動向について 国土交通省
http://www.mlit.go.jp/common/001121839.pdf
【燃料消費曲線】
最近はほとんど公になることはないですが、以前は結構紹介されていました。
横軸に回転数、縦軸に馬力÷燃料消費量をプロットします。
エンジンの効率を表すグラフで熱効率とほぼイコールです。
だいたい3000rpmくらいが効率が良いですが、それは全負荷(アクセル全開)のときの値なのであまり気にしない方が良いでしょう。
できるだけ低回転で運転するのが燃費には効きます。
省燃費運転は以下をみてください。
【モード燃費対策】
〈エンジン単体〉
モード燃費はさほど速度を出さないので、低負荷走行時の燃費に効く対策が多いです。
〈ギア比〉
出来るだけエンジンが効率の良い領域を使えるギア比が良いです。
モード燃費は計測モードが決まっているので、対策は打ちやすいです。
CVTのモード燃費が優れているのはここが優れているからです。
〈電動パワーステアリング〉
モード燃費計測は車輪は回しますが走りません。
なので、直線状態でしか無いのでステアリングアシストのためのパワーは余計です。
油圧のパワステでは常に油圧をかけておくのでエンジンの負荷は上がりますが、電動であれば電気を切っておけば負荷は減ります。
バッテリー充電制御も効きます。
【モード燃費に関係しない改善】
〈ナビ強調回生ブレーキ制御〉
プリウスPHVから採用された停止を予測して、強い回生ブレーキを行うことでバッテリーへの充電を促す制御です。
〈カーエアコンの省力化〉
モード燃費ではカーエアコンは動作させずに計測するので、エアコンで燃費を良くしてもカタログスペックには現れません。
【モード燃費と実燃費の乖離】
運転の仕方や車にもよりますが、およそ3割引程度の乖離があります。
前述のようにエアコンを切ったり、直線だけだったり、運転負荷が小さかったりするので実際の燃費とはどうしても乖離があります。
乖離率が気になる人は以下で見ることが出来ます。
https://e-nenpi.com/enenpi/jc08achieve?defact=carname_best
ランキング上位は燃費が良くない車が多いような。。。
【燃費計測のメリット】
燃費は車の健康を測るバロメーターです。
人で言うと体重計みたいなものでしょうか。
何かしら不調があると燃費に現れるので測っておくと、手間以外は損はないです。
【あとがき】
燃費は維持費に直結する話題なので、皆さん比較的関心は高いのですが、実態が分かりづらいと思います。
車を持っている人は、まず計測することから始めると良いです。
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