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「ひたすら面白い映画に会いたくて」40本目『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』

 TVアニメ放送25周年を記念して制作された劇場版「ちびまる子ちゃん」3作目。本作は、前作から実に23年ぶりの劇場公開作品である。

 劇場版「ちびまる子ちゃん」の中でも、絵が1番綺麗で観やすい作品なので、初めて観る人は本作から手を出すのが1番だと思う。

 私は初期の「ちびまる子ちゃん」の絵も好きなのだが、小さい頃からリアルタイムで観ていたこの綺麗な絵の「ちびまる子ちゃん」がやはり1番親しみ深くて大好きである。だからこそ、劇場版「ちびまる子ちゃん」を新旧両方の絵で観ることができたのは、本当に幸せなことであった。

 今の絵柄でさくらももこさんの原作・脚本の劇場版をもう少し観てみたかったなあという寂しい気持ちはもちろんあるが、贅沢なことは言ってられないな。さくらももこさん、長い間本当にお疲れさまでした。たくさんの素晴らしい作品を私たちに届けてくれてありがとう。

40本目:『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』

『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』(2015)

      脚本:さくらももこ / 監督:高木淳

        「私は…漫画家になりたいんだ」

物語のあらすじ

 まる子たちの学校に様々な国の子供たちが、ホームステイしにやって来た。

    アメリカからはマーク、インドからはシン、ハワイからはネプ、香港からはシンニー、イタリアからはアンドレア、ブラジルからはジュリアと合計6人の子供たちが、まる子たちクラスメイトの家へとホームステイすることになったのだ。

   イタリアから来たアンドレアは初めて「まる子」の名前を聞いたとき、「まる子が好き」だと大胆にも告白する。これにはさすがのまる子も戸惑った。まる子が戸惑っているうちにアンドレアは、まる子の家にホームステイしたいと猛アプローチをかけてくる。そんなアンドレアのことをうっとうしく思っていたまる子は「私はヤダよ」とストレートに嫌がっていた。

   しかし、友蔵がヒデじいからの「アンドレアをさくらさんの家でホームステイさせて欲しい」という頼みを断りきれず、さくら家はまる子の気持ちとは裏腹にアンドレアのホームステイを引き受けることになってしまった。果たして、まる子とアンドレアは仲良くなることができるのか。

   国境を超える友情を描いた心温まる作品である。

ちびまる子ちゃんで描かれてきた「友情」

 これまで劇場版の「ちびまる子ちゃん」は、1作目では、大野くんと杉山くんとの男同士の「友情」を描き、2作目では、まる子と絵描きのおねえさんとの年齢を超えた女同士の「友情」を描いてきた。

   そして3作目に当たる本作では、まる子とアンドレアとの国境を超えた男女の「友情」を描いている。

   マルコとのん気屋呑兵衛を営む夫妻との「友情」のバトンであるビールの栓抜きを、アンドレアがまる子へと別れ際に渡す場面に、2人の間での大切な友情を感じた。この場面のおかげで、やっぱり劇場版に共通するテーマは「友情」なんだということが確信に変わったのだ。

 改めて振り返ってみると、どの作品も「友情」を描いている作品には変わりはないのだが、「性別・年齢・国籍」は全て異なっていることがわかる。

   これらの劇場版以外に私が知っている範囲で「友情」を描いた作品を紹介して、「ちびまる子ちゃん」で描かれてきた「友情」についてもう少し掘り下げていきたい。

   まず1期(1990年)の31話&32話「まるちゃん 南の島へ行く」では、まる子とプサディーとの同年代の国境を超えた2人の「友情」が描かれていた。ここからは、国境を超えた「友情」の物語をかなり早い時期から考えられていたということがわかる。

   次に2期(1996年)の5話「たまちゃん 大好き」では、まる子と親友のたまちゃんの「友情」が描かれていた。「ちびまる子ちゃん」は、劇場版1作目の大野君と杉山君の男同士の「友情」だけでなく、まる子とたまちゃんの女同士の「友情」についてもしっかり描いていたのである。

 このようにさくらももこさんは、「友情」というテーマを作品を作っていく中でとても大切にしていたということがよくわかるだろう。

 彼女の作品からは「友情には、性別・年齢、そして国籍なんて関係ないんだよ」という素敵なメッセージを感じる。きっと彼女は、このメッセージを劇場版3作品を通して観ている者へと伝えたかったんだろうなあ。

   私も「友情」を大切にするということを自分の胸にしっかりと刻みながら、これからの人生を歩んでいかないとな。

私の1番好きな場面

   私の1番好きな場面は、まる子とアンドレアが2人で灯籠流しに行く場面である。2人で手を繋いで一緒に花火を観ている場面も、そして、まる子がアンドレアに将来の夢を聞かれた場面も最高にステキで大好きなのだが、特に個人的お気に入りの場面は、まる子とアンドレアの流した灯篭が寄り添う描写である。

 「アンドレアにまた会えますように」と日本語で書かれた灯篭と、「まる子にまた会えますように」とイタリア語で書かれた灯篭を横並びで観るだけでウルっときてしまうものがある。2人の関係は観ていてとってもほっこりする。恋人関係になったらいいのにって思ってしまうよ。

最後に

 さくらももこさん、様々な「友情」を扱った作品を劇場版という形で私たちに届けてくれてありがとう。これらの作品に癒されたり、心が救われたという人もたくさんいることだと思います。

 また、「ちびまる子ちゃん」だけでなく、沢山のステキな作品の数々を視聴者に届けて下さってありがとうございました。本当に長い間お疲れ様でした。どうぞ安らかにお眠り下さい。

 あなたの作品は、ずっと忘れません。

予告編

↓『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』の予告編です↓

(出典 : 【YouTube】シネマトゥデイ「まる子たちの住む町に、世界から子供たちがやって来た!映画『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』予告編」)

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