「ひたすら面白い映画に会いたくて」10本目『ファースト・マン』
主観的カメラ。このおかげで、宇宙飛行士の視点から彼らのミッションを追体験できる。大迫力でリアルな映像の連続に思わず息を呑む。こんな宇宙映画観たことがない。本作での宇宙飛行士のリアルにあなたは耐えられるか?
本作では、リアリティ溢れる「60年代の宇宙飛行士」を追体験することができる。これは本作最大の特徴であろう。当時の宇宙飛行士はこんなにも恐ろしい仕事をしていたのか、と思わずゾッとしてしまうはずだ。
10本目:『ファースト・マン』
『ファースト・マン』(2018)
原作:ジェームス・R・ハンセン / 脚本:ジョシュ・シンガー /
監督:デイミアン・チャゼル
「That’s one small step for man, one giant leap for mankind.」
物語の概要&見所
物語は、ニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)が1962年にNASAに入ったところから始まり、1969年に月から帰還したところで終わる。
監督のデイミアン・チャゼルによると、「この7年間のなかで、ニールと彼の家族がどのような困難を乗り越えたのか、ということに焦点を当てて描いた作品」なのである。
つまり本作は、「宇宙へ行く男たち」だけの話ではないのだ。残された家族の話もしっかりと描き切っている。この辺りが本作の見所と言えよう。
本作を観ると、 宇宙飛行士は「緊急事態に陥っても、冷静な判断を迫られる非常にタフな職業」であることがよくわかる。人間は、こんなにも冷静になれるものなのか。スクリーンの前で展開される驚くべき事実に、観る者は言葉を失ってしまうことだろう。
私の1番印象に残った場面
中でもジェミニ8号のミッションが、1番印象に残っている。
以下ではネタバレにはなるが、この場面について見所も含めて詳しく述べていく。
1966年3月、ニールとデイヴィッド・スコットは、ジェミニ計画遂行のためジェミニ8号に乗り込んだ。このジェミニ8号に乗り込んだ彼らに与えられた任務とは、人工衛星アジェナと世界初の地球周回軌道上でのドッキングであった。
打ち上げ前、ニールは船内に虫を発見する。彼は、その虫を目障りだと思ったのだろう。その虫を殺すために「バンっ」と叩いた。すると、機体の色々な場所がミシミシいうのだ。
この出発前の「ジェミニ8号」に一抹の不安を感じさせる演出は、観ていて本当に恐ろしかった。ニールたち宇宙飛行士の不安が伝わってくる。こんな機体で本当に宇宙まで行くことができるのか。ニールたちの頭にそんな考えがよぎったはずだ。
今から考えると、なんて恐ろしい計画だったんだろうと思ってしまう。当時の宇宙飛行士たちの勇気や決意には尊敬の念が絶えない。
ジェミニ8号は、アジェナとのドッキングに成功する。しかしその27分後、ジェミニ8号とアジェナはドッキングしたまま回転してしまう。そこでニールたちはアジェナを切り離す判断を下す。だが、なぜかジェミニ8号の回転は止まるどころかますます速くなってしまうのだ。最終的に宇宙船の回転が1秒間に1回転するほど速くなり、乗組員が意識を失う危険性が出るまでに至ってしまう。
このシーンに私は戦慄させられた。この場面、どのホラー映画よりも怖いのではないか。心臓の高鳴りが止まらない。そんなシーンの連続であったのだ。恐ろしすぎる。
こうしたトラブルがあっても、冷静かつ素早い判断でこの難局を乗り越えたニール。このジェミニ8号でのニールの功績があったからこそ、彼は偉大な英雄として世界中の人々の胸に刻まれたのであった。彼の宇宙飛行士としての並外れた能力が遺憾なく発揮された瞬間である。
最後に
映画館でこんなにもリアルでスリリングな追体験をすることができるなんて、なんて幸運な世代なのだろうか。この感謝の気持ちを忘れないでおこう。また鑑賞後、「NASA」について詳しく調べたくなるような作品であった。本作の原作『ファースト・マン 初めて月に降り立った男、ニール・アームストロングの人生』を読み、ニール・アームストロングの生涯について知ることから始めようかな。
参考文献
・(株)東宝ステラ (2019) 『FIRST MAN パンフレット』東宝(株)映像事業部
予告編
↓映画『ファースト・マン』の予告編です↓
(出典 : 【YouTube】ユニバーサル・ピクチャーズ公式「『ファースト・マン』本予告映像」)
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