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「沖縄嫌い」

 私は今までに沖縄の暴走族やヤンキーの若者に聞き取り調査をしてきた。そこで出会った若者の多くは、ゆいまーるとは異なる社会に生きていた。そのような若者がいることを記録していきたい。
* *
 2007年7月の平日深夜。北部出身の拓也(仮名)は、中部のバイク仲間とゴーパチを走っていた。ガラス工場や離島の農業での仕事を経験して21歳、運送業に就いた。毎日、北部の実家から浦添の会社まで通いながら、夜はバイクでツーリングを楽しんだ。

拓也 北部は(中南部と比べて)もっと仕事がない。今のところは給料いい。
―― いくらなの?
拓也 6千円。
―― だけど燃料入れて通ったり、弁当買ったりしてたら、4千円くらいしか残らんやん。
拓也 しかたないさー、それでも他よりいいのにー。(地元の中学は)合わなかった。同窓会行くけど、面白くない。上の世代とも面白くない。シカトされたり、見てないふりしたりされる。地元だと、先生、警察より先輩が怖い。いじめもあったし。○○の人は心が狭い。考え方が幼い、幼稚。ずっと根にもつし……。だから、ここで働いているわけよ。北部楽しくない。仕事ないし、沖縄嫌い。人も嫌い。
―― 地元でエイサーはしてなかったの?
拓也 エイサーは強制だった。エイサーも嫌。(練習に)来なかったら、死なされる。先輩がいばってるのがいちばん嫌い。つぶれかけたこと何回もある。
―― そんな時どうするの?
拓也 なにもしない、(その時)いなぐーがいたら、いなぐーと会う。だからいなぐーいない時はきつい。
仕事頑張ってるつもりなのに、やる気なしって言われるとむかつく。しょっちゅうこんな。
 (離島で働いてたとき)やる気ないと言われて、離島手当てをカットされた。初めての仕事で、分からなかっただけでやる気ないって言われた。けど、先輩がおごってくれて、チューハイ飲んだ。「あんな言われてるけど、辞めんなよー」って、「お前辞めたら、近い年いないから、へんなどー」って。
 基地とか、分からん。明日も7時から西原で仕事だから、そろそろ行こうね。

■打越正行,2016年10月7日,「沖縄嫌い」『琉球新報』(2016.10.7 朝刊).


【打越正行の研究室】

https://blog.goo.ne.jp/uchikoshimasayuki

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