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技術進歩への感謝

 本章よりこの本のネタバレが含まれます。そこんとこご了承願いたい。尚本記事にはペスト菌の画像が出てきますので無理な方はお控えください。あなたがスマホを投げ出す可能性があります。

序章

 8月某日、私はTwitter(現:X)にてとあるツイートを見た。それはペストが中国の一部地域で流行り出したという旨のツイートだ。「えっ、やばくね...、日本に来たらどうしよう!?」とこのときまだ無知な私は思ったーーまぁ中国側からしたらやばいのだがーー。
 ペスト自体は高等学校在学時代に世界史の授業でちらっと出てきたのを覚えている。そのとき史上最悪の感染症で、COVID-19よりもやばいと聞いてゾッとしたのを覚えている。そんなこともあり、「これはペストについて知っておく必要があるんじゃないかと」当時無知な私は思ったのでAmazonで即ペストの本を予約した。その本がこれだ。

 ペストの本は色々あったが、内容で選ぶときは新書という私の謎ポリシーに従った結果(例外あり)、必然的にこの本になったーー新書のペストの本はこの本しかなかったーー。
 前置きが長くなってしまったが、今回はこの本を読んだ感想を綴っていこうと思う。

本章

初発の感想

 まずこの本は語彙が難しい。知らない単語やわからない読みが多くて読むのに苦労した。総ページ数は192ページとそこまで多くないが、1つ1つのトピックが濃密だったり、先述の通り語彙が難しかったりで、理解に少々苦労した。理解できたところは無茶苦茶面白い内容であった。
 ちなみに本書の初版を確認したら1983年だったので、「そりゃ、語彙もむずいわけだ」と1人で納得していた。

ペストとは

 まずペストとはなんなのかというのを軽くご紹介する。

 ペストーー別名、黒死病ーーとはペスト菌と呼ばれる細菌が人間に感染して起こる感染症である。
 ペストの症状は主に2種類にカテゴリーされるが、まずこの2種類共に共通する症状としてひどい高熱、頭痛、極度の倦怠感などが挙げられる。ここからさらに鼠蹊部が腫物が、全身の皮膚に出血性の紫斑や膿疱が現れる「腺ペスト」ーー黒死病と呼ばれる所以は死体の紫斑と膿疱が黒いことからであるーー、血痰や喀血といった肺炎症状が現れる「肺ペスト」ーー「肺ペスト」も「腺ペスト」ほどではないが紫斑や膿疱が見られる。割と軽微なものーーに部類される。

要約
ペスト菌

 急に少しビビらせるような画像を出して申し訳ないがこれがペスト菌である。結構グロい...
 話を戻して、まずペストの症状を把握したとき特徴的だなという感想を持った。特に「腺ペスト」。鼠蹊部、いわば股関節のあたりが腫れてくる症状というのは聞いたことがなかったので、非常に見分けはしやすそうな印象だった。

そこまで心配の必要はなかった

『今日、ペストは必ずしも恐ろしい疫病ではなくなっている。』
 この文言を本書の序章で見たとき少し安心した。この文言が書いてあるページには軽く治療法も載っていたので、ご紹介しよう。

イェルサン=ルー血清という血清を感染早期に患者に与えることにより治癒率は改善される。また数多く開発された抗生物質の中にペストに効果的なものもいくつか存在する。ストレプトマイシンはその好例である。

要約2

 私の不安感はこれを知ったときに消えた。対処法があるならそんなに過度に心配する必要はない。杞憂であった。
 高等学校時代に聞いた“史上最悪の感染症”という言葉が頭にあったことと、当時まだマスク生活だったこともあり、過剰に感染症を恐れる節があったがなんとか解消された気がする。
 さらにイェルサン北里柴三郎の凄さも同時に実感した。この2人はペスト菌を見つけた研究者である。この2人のおかげでペストはネズミを宿主とするノミの人間への咬傷が原因であることや、上記の治療法が見出されたと考えると偉大だ。これは尊敬に値するだろう

えぐいほどのヒューマンキラー

 ペストが恐ろしい疫病だった頃、どれだけ恐ろしかったかということもふれておきたい。
 ペストが流行した時期といえば中世が思い当たるだろう。その中世の内、ペストが流行したのは1348年頃から1370年頃だと言われている。そのときの世界総人口は推定1億人と言われている。そこから過去の資料などで概算すると(詳しくは本書第6章を読んで欲しい。)約7000万人の死者を出しているという。単純に考えて致死率70%、恐ろしいすぎる。COVID-19が可愛く見えてしまう。また当時は治療法も確立されていなかったとはいえこの値は凄すぎる。
 ちなみに当時の治療法は鼠蹊部の腫脹の切開という選択肢があったようだ。ペスト患者の中には腫物の破裂によって死を免れるものが多かったらしいので多分それで行き着いた結論だろう。後は自然治癒のみだ。
 これを踏まえると現代はどれほど技術が進歩したかというのがわかる。余計にイェルサンと北里柴三郎に感謝の念が生まれる。そして、現代に生まれたことをこの点ではありがたく思える。

終章

 本書のサブタイトルに“ヨーロッパ中世の崩壊”とあるようにこの本の本質は実は今回取り上げた部分とは別にある。これに関しては別機会に触れようと思う。
 難しい内容で、全ての内容をインプットできたかと言われれば嘘に近い。ただ得るものはあった。ペストの症状、治療法、それが引き起こした人間の行動など色々ある。読解力を今よりも身につけ、ヨーロッパに関する知識を得た上でもう一度読み直したい。そう思った。

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