うちりらた

随筆家、たまに小説、香り好き。 お仕事の依頼はuchirirata@gmail.com…

うちりらた

随筆家、たまに小説、香り好き。 お仕事の依頼はuchirirata@gmail.comまで

最近の記事

パリで一杯のカフェ、たまに香るワインと余韻①

わたしはよく、パリを散歩する。 散歩といってもちょっとの散歩ではなく、マジなやつ。 どのくらいかというと、シャンゼリゼ通りからメトロ一番線のSaint-Paulまで、もしくは左岸のモンパルナスから右岸のサン・ラザールまでの距離だ。 おそらく9駅分くらいだろうか。(日光浴したい) ただ、これだけ歩いていると喉が渇く。お手洗いにも行きたくなる。 そんなこんなで、パリのカフェをよく利用するのだが、この街のカフェの雰囲気はどうにもこうにも可愛い。 街並みとセットで可愛い。

    • 名前が秀逸だと思う香水③

      フランスがロックダウン明けで、混沌としていたときのこと。 ふらりと入ったパリのブティック『セルジュ ルタンス』で、「これは」と思う香水があった。 その名は、「ラ ドントゥーズ アンカジェ(La Domptese encagée)」。 日本語に訳すと「檻の中の調教師」となる。 本来なら檻に入れられた動物を扱うはずの調教師が、逆に檻に入れられてしまった・・・というわけだ。 一体、どういうこと?  そんな疑問が浮かぶと同時に、わたしは「ああ、セルジュルタンスらしいな」と

      • パリのロマンチック美術館がロマンチックなワケ

        今日は「香り」ではなく、わたしが愛する「ロマンチック美術館」(パリ9区)について、書きたいと思う。 この場所、正式名称は「ロマン主義博物館(Musée de la Vie romantique)」という。 「ロマン主義博物館(Musée de la Vie romantique)」はもともと、オランダに生まれフランスで活躍した画家、アリ・シェフェール(Ary Scheffer)のアトリエ兼自宅だった。 それを遺族がパリ市に寄贈したため、市営の「邸宅美術館」となった。

        • 名前が秀逸だと思う香水②

          もうすぐ、薔薇の季節がやってくる。 ここフランスに根付く薔薇の生命力は、日本のそれよりすごい。 車がビュンビュン通る道路脇にも生えているし、家の軒先にも、もちろん森林にも、太陽の姿を追いかけながら力強く自生している。 そんな逞しい姿には、カタカナのバラではなく、アルファベットのROSEでもなく、漢字の薔薇という文字がよく似合う。 「薔薇」 ・・・強そう。・・・なにこの無双感。 キーボード変換じゃないともう、正しく書ける自信がない。 さて、スウェーデン発のフレグラ

        パリで一杯のカフェ、たまに香るワインと余韻①

          名前が秀逸だと思う香水①

          名前。 その人に一生付きまとう、名前。 これは大事だ。 もちろん各香水にも名前が付けられているわけで、それぞれ、インスピレーションソースとなった地名や花の名前、あるいは哲学的なものなど、例を挙げればキリがない。 ところで、わたしは長文よりも短文の方が難しいと思っている。 極端に言えば、タイトルが最も難しい。 難しいだけに、ハマったときの達成感・爽快感がヤバいのだ。 そんなことを、調香師の皆さんも感じているんじゃないかと思う。 名前が先に来るのか、香りができあが

          名前が秀逸だと思う香水①

          パリ、その光と影、匂う。

          ここに来て、6年が経った。 パリに暮らす人々は、つくづく前衛的だと思う。 異文化を受け入れる懐の深さも姿勢も、変化を求めて上げる声のボリュームも、熱量についても。 しかし、何も変わらないものがある。 「背景」と「風景」だ。 街自体は、進みもせず後退もしなかった。 常識世界を覆すほどの進歩は、この街にはない。 しかし言い換えれば、簡単に没するほど荒れてはいない、ということにもなる。 時間はつまり、19世紀から止まったままなのだ。 だからだろうか、「光」と「影」

          パリ、その光と影、匂う。

          浅春の香り、ムラムラ感

          2024年、あっという間に3月になったと思ったら、また、あっという間に4月になろうとしている。 季節がまたしても、更新されたのだ。 こういうときは、思考より嗅覚の方が敏感に働いていると思う。 「あ、春の匂いがする」 こんな風に、感覚が先にキャッチする感じ。 でもわたしは、ミモザを嗅いだときには、そうはならなかった。 ミモザは、パリでは1月中旬頃から出回る。 だからだろうか、春の花、というより、“冬の花”としての印象が強い。 それ故に、ミモザを嗅いでも、春の匂いを

          浅春の香り、ムラムラ感

          秘めたかった香り

          内緒にしておきたいはずなのに、人に話したくてたまらない香りがある。 “スキンノート” いや、もっと明確に言えば、“ダークムード・スキンノート” となるだろうか。 パンデミックのスタートから丸4年が経った。 当時、世界はパーソナルスペースを死守しながら心を落ち着かせることのできる、癒しの香りを求めていたと思う。 でも、それもすっかり過去のものになってしまった。 今思うのは、香りであれ何であれ、「動きたい」「どこか遠くへ行きたい」「確かめたい」という、気分の高まりそ

          秘めたかった香り