寝不足のハシビロコウはクレーマーと間違われる

その日は眠たかった。

眠たかったが朝早くにコンビニに行く必要があり、目的の物を手にレジに向かいお金を払った。お釣りを手の上で受け取りそのまま眠たかったので微動だにせずにレシートをくれるのを待ったが。

ここで時が止まった。

五秒くらいだっただろうか? 何故か店員がレシートを渡してくれない。そんな疑問を浮かべたが眠たかったのでそのまま全く動かず石像のように、もしくは眠たかったので目付きが悪かっただろう、ハシビロコウのような目付きでお釣りを受け取った手でレシートを待ち、完全に制止していた。
レシートを渡さない店員を見ると何故かオロオロと困った表情で狼狽し始めている。
何事だと思ったが眠いので声がでない。声を出すのにエネルギーを消耗するタイプなので寝不足というコンディションでは咄嗟に声がでなかった。

店員は「あ、あのお釣りはあってます!」と言った。眠たい頭に店員の声は届かない。更に「お釣りは間違ってませんよ!」幾らか強気で重ねてくる。

ここで始めてハシビロコウは動いた。

眠たい頭で「おつり」「まちがい」そんな言葉を拾ったためにお釣り受け取った手を見た。獲物に狙い済ますハンターのようにゆっくりを頭を動かすが、眠い脳味噌では買った商品の値段も店員から告げられたお釣りも曖昧で、合っているのかどうか皆目検討もつかない。買った物が求めているものなのかも怪しかった。
手に乗っていたのは三百円くらいだったが、きっと一円玉三枚でも気にせずに帰った気がする。それほどに眠たかった。

何故か店員は更に狼狽え始めた。

「なんだコイツ」と思った。店員もそう感じていた思うが眠い脳味噌ではわからない。早く帰りたいので「レシートを待っているんですけど……」と膨大なエネルギーを絞り出して微動だにしない理由を一言答えて瀕死になった。

店員は「い、いま渡すとこです!」と何故か挙動不審に答えている。お釣りを貰ってからタップリ三十秒は経過したと思うが、今とはいつだろうか? 早くレシートが欲しい。

この辺でやっと鈍く眠い脳味噌が「あ、これはお釣が少ないとごねるクレーマーと間違われているのか?」と状況を理解したが理由がわからない。コチラの認識ではお釣り貰った手で全く動かずに無言でレシートを待っていただけだ。眠い頭でも理不尽で少しイラッとしてしまう。

何も言っていないのにクレーマー扱いされ、やっとレシートを店員から受け取ったが、非常に残念なことに「どうしたの?」「あの、さっき、あの客にお釣りあってるのにお釣りが足りないと……」等とコンビニから出ていく直前に背後でそんな会話が聞こえた。

流石に眠くて眠くてしょうがない頭も怒りで覚醒していく、怒鳴り混んでやろうかと思い始めたが、やはり眠たかったので、何も言わずにそのまま去った。

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