絶賛

学生バイト時代の事である。

店が昼休憩に入る時間で上がりだった。客足が途絶えたのでラストオーダーで上がれるな、と思っていた時にその男は現れた。

「これ最高じゃないか!」

何やらランチメニューをやたらと絶賛してくる。そんな男の第一印象はかなり悪い。ラストオーダーで上がれるとこだったのにそれを止めるタイミングで来たせいだが、それを差し引いても面倒な奴だった。
働いている身でなんだが、スタッフとしてみていると最低ではないが誉める気が全く起きない有り様を色々見ているので、絶賛されてると困ってしまうし、客から理想をちょっと違えるだけでメチャクチャにキレそうな雰囲気を感じてしまい早く帰って欲しかった。

不安になる褒め方をしている上に、細々とした雑用をこなさないと行けないのだがやたらと話しかけて作業の手を止めてくる。導線なんて考えてない店なんで色んな場所に色んな必要な物が散らばっているため移動することが多く、その客の近くを通る度に独自のビジネス理論を披露したり、料理を誉めたりしてくる。

それがひたすらに面倒臭かった。

最後まで絶賛していった上に、定期的に通いそうな雰囲気を出してくる。ヘタなクレーマーよりも恐ろく感じる客だったが、それから一度もあっていない。

やたらと絶賛していたが、ビジネス論とか、その手の商売やってるなどの話ばかりしてきたので、客に見せかけたセールスマンだったのだろうと今では思っている。

「うわ、迷惑」としか思っていなかったせいかもしれないが、ヘタクソなセールストークだった。


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