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数字

最近、6歳になった長女が一人で買い物ができるようになるためのトレーニングを始めた。4月からは小学校が始まる。保育園では周囲が世話を焼いてくれるが、小学校になるとそうはいかない。一人でいろいろできるようになってほしいという思いからである。
 
今取り組んでいるテーマは"お金の使い方"を学ぶこと。いったんのゴールを、家の近くのコンビニまで一人で行って、彼女が大好きな"割けるチーズ(98円)"を買ってくることに定めた。
 
がしかし、やってみてこれが簡単ではないことが判明する。

普段私たちは意識していないのだが、じつはお金には2つの数字が伴う。1つは額面。1円、5円、10円・・・・など。そしてもう1つの数字は、枚数である。1枚、2枚、3枚・・・。
 
彼女は数字はかなり読める方なのだが、お金については分かっていない。なので、まずお金の2つの数字の使い分けから学ばなきゃいけないのであった(デジタル通貨の場合は額面しかないので、この問題は発生しない)。
 
ちなみに、彼女にとってリアルな数字は実際に手にとって実感できる"枚数"の方だ。なので、額面よりも枚数を気にしていて、500円硬貨1枚よりも、1円硬貨が10枚の方が価値があると思っていたりする。コンビニのレジで98円の"割けるチーズ"を買うため、握りしめていた100円硬貨を店員に渡したのだが、1円硬貨が2枚も戻ってきたので「お金が増えた!」と言って喜んでいた(笑)。
 
彼女の反応に私はびっくりしたのだが、よく考えると「なるほどね」とも思えてきた。というか、おもしろい。"当たり前を疑うこと"を学ばさせてもらった気がする。今の状況がおもしろいので、しばらくこのまま様子を見ようと思う。
 
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上記のような経験をして、これから彼女と数字について一緒に考える機会が増えそうで楽しみになってきた。引き算、ゼロ、(-1) x (-1) = +1 ・・・など、子どもにとってつまづきやすい数字の話はいろいろあるだろう。
 
ちなみに、"引き算"というものはよく考えてみると理解するのが難しいはずである。なぜなら、足し算であれば、リンゴ1個と2個を足したら3個・・・というように実生活で体感できるが、引き算となるとそうはいかない。ミカン3個から2個を引いたら1個になるのは分かるが、2個から3個を引こうと思っても、実生活では不可能だからだ。でも数学では (2-3) という計算は成立するのだ。
 
これでは「おかしい!」と疑う方が自然ではないか。「2個引いた時点で0になるのだから、2 - 3 = 0 のはずだ!」と子どもが主張したら、はたしてちゃんと説明できるだろうか。じつは中世の学者たちもマイナスの概念を受け入れるのには大変苦労したらしい。あの近代科学の父であるデカルトでさえ、方程式でマイナスの答えがでると「無より小さな数はありえない」として拒否していたらしい。
 
(-1) x (-1) = +1 についてはどうか。直感的に理解しようとしたら、次の事例を考えれば良い。毎日、学校帰りに100円のジュースを1つ買い続けるような事例である。1日ごとに貯金が100円づつ減っていく(-100)。1日目は100円、2日目は200円・・・n日目は(100 x n) 円が減ることになる。では、過去に遡って考えてみよう。昨日(-1日目)は今日より100円多かったはずである。
 
つまり、(-100)円 x (-1)日 = +100 でなければいけない。この事例より、マイナスにマイナスを掛けるとプラスになるとが実生活の経験から推測できるだろう。
 
何事も基礎が一番大事である。その基礎を子どもから機会を与えてもらって、学び直すことができそうだ。
 
 
*後半の事例は「数学の言葉で世界を見たら」(大栗博司)という本に載っていたもの。物理学者で父親でもある大栗さんが子どもに話しかける形で説明している。深い内容をとても分かりやすく伝えている素晴らしい本です。

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