外交感覚

3年くらい前だろうか、子どもと上手にコミュニケーションできる人間は外交官としてのセンスも持ち合わせているはずだと書いたことがあるのだが、近頃、あらためてそのように感じることが多くなってきた。ただし状況は以前とは異なる。前は”子ども”は長女一人だけだったが、今は次女が加わり二人になっている。

今の問題意識としては、「私のことをもっと見て!もっとかまって!」とアピールしてくる子ども等に対して、体一つの自分がどう接すればよいか、ということである。

多くの人は「二人とも均等に接するのがフェアではないか」と考えるだろう。国際政治でいうところの、いわゆる「中立外交」というやつだ。スイスなどはこの考え方を国是としている。

しかし、である。中立・・・ 美しい響きだが、現実の世界はそんな甘くはない。政治学でも中立を政策で掲げることのリスクは昔からよく指摘されてきた。

例えば、A国とB国の2つの陣営が争っているとしよう。巻き込まれたくないC国は中立を掲げて両陣営から等距離を取ったとする。すると、どうなるか。両陣営はそれぞれの正義を掲げて争っているわけで(立場変われば正義も変わる)、それに加わらないC国は、両陣営から不誠実だと見なされ、敵対視されてしまう可能性があるのだ。ちなみに、そのことを重々承知しているスイスは、そんな有事に直面するかもしれないことを覚悟し、国民皆兵制度を維持したり国中にシェルターをつくったりと国を挙げてゲリラ戦を展開する体制を整えている。

二人の子どもにフェアに接しようとして私が直面している問題が、まさに上記のような中立のジレンマである。

「順番づつ・・・」とか「妹/姉が終わったらね・・・」など言うと、もう一方から「お父さん、ずるい!」と言われることが多くなった。本当に悩ましい。

こんなジレンマに直面した時、「優秀な外交官ならどう振る舞うだろう」と想像したりする。

推測するに、一度に向き合えるのは1カ国(一人)だけでも、その時に「あなたのことだけを心から気にかけていますよ」などと囁きながら、相手にもそう思わせてしまう振る舞いに徹することができる人間ではないだろうか。そして、別の国に対しても、徹頭徹尾同じことができる人だと思われる。相手に「2枚舌だ!」などと決して思わせず、「あの国(人)は常に自分のことを見ていてくれる」と思わせてしまう人ではないか。

でも私の場合は人たらしには程遠く、不器用で不愛想、おまけに面倒臭がり屋で、外交官の素質のかけらもない。ため息をつきながら試行錯誤の毎日を続けています。

とりあえずは、何をしても喜ぶ天真爛漫な3歳児(妹)と、脳が発達してきて複雑な感情や自意識が生まれてきた6歳児(姉)を鑑み、長女の方を意識して優先的に向き合うことを心がけている(すまん、次女)。

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