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『THE STANLY PARABLE(ザ スタンリーパラブル)』で「自由」の意味を履き違えろ!!(2013年のビデオゲーム)

やあ僕はスタンリー。キータイピングを生業にしている隷重類(サラリーマン)だ。僕専用に割り当てられた専用ブースでキーを叩き、日が暮れたら愛する妻が待つ家に帰る。毎日その繰り返しさ。飽きないのかって? 僕はこの仕事で社会に貢献してる。そこに何の議論を挟む余地が……ある日突然訪れたのだ。

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『THE STANLY PARABLE(ザ スタンリーパラブル)』

あなたはとある企業に勤務するスタンリーを操作して社屋から脱出しなければならない。目の前には無数の選択肢が出現するが、ナレーションが全てを教えてくれるだろう。

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従え(OBEY)

スタンリーはナレーションに従い左へ向かう。そして、不気味な無人の会議室を通り過ぎ階段を登って上司のオフィスへ向かうのだ。

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従え(OBEY)

暗号に悩んでもナレーションが教えてくれるし、なんなら自動的にドアを開けてくれる。オフィスの隠し通路を抜けて社員失踪の謎を解き明かすのだ。

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従え(OBEY)

目の前には「マインドコントロール施設」が。だが、ナレーションは大きな扉を潜り抜けたといっている。そのまま進もう。

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そのまま進もう。

従え(OBEY)

そのまま進もう。

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従え(OBEY)

そう、そのまま……

本当にそのままでいいの?

俺はマインドコントロール室へ侵入し、すべてを停止させた。
全社員を洗脳して従わせる悪の装置は取り除かれたのだ。

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会社という名の命令、人知れず行われる洗脳、蔓延る社会悪にスタンリーは打ち勝つことができた。人類はまた一歩、大きな進歩を遂げたのだ。

ありがとう、スタンリー!!君は自由だ!!

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よくきたな、お望月さんです。
今日は世界一意地が悪いゲーム『THE STANLY PARABLE(ザ スタンリーパラブル)』を紹介する。

本作は至ってシンプルな脱出ゲームのようにも見えるが、実際にはゲームの自由度や創作姿勢に対して激しい疑問をぶつけてくる強烈なSF作品なのだ。

自由を求めるほど従属させられていくゾッとするゲームデザイン。ゲームをプレイしていてこのような恐怖を味わったことは初めてだ。

冒頭の設問を見てみよう。ナレーションは左のドアへ入ったと述べているが、あからさまに右側のドアも開いている。この場合、あなたはどちらの扉へ向かうだろうか。そしてどちらを選ぶのがより自由なのだろうか。

人類には二種類に分けられる。「左のドアに入った」とナレーションされたら右のドアに入るやつと話を聞かずに右のドアに入るやつだ。


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生来の天邪鬼であるあなたはこの設問では100%の比率で右側の扉へ入ってしまう。そして、当然のように右側に入った場合のナレーションも用意されている。ナレーターは臨機応変なのだ。

あなたは何度もスタンリーの人生を繰り返す。だが、真実に到達することはない。なぜなら、あなたはナレーションの言う通りの選択肢を選ばない自由さを持っているからだ。誰にも束縛されない自由意志こそが最も尊重されるべきものだからだ。

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その先に非業の死が待ち構えていることが予言されていても、あなたには自由意志を貫く自由がある。だが決して、真実に到達することはない。

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あなたは自由を貫き真の自由を勝ち取ることはできるのか。ゲームデザイン上の自由さの価値とは? 是非『THE STANLY PARABLE(ザ スタンリーパラブル)』をプレイしてその真実を確かめてみてほしい。本作は21世紀のマスターピースである。

従え(OBEY)

この命令に従うも従わないもあなたの自由だ。


『THE STANLY PARABLE(ザ スタンリーパラブル)』
Steam価格  ¥ 1,480 日本語非対応(有志日本語化パッチあり)

なお、私は最初の扉の前で完全に行動を停止しました。嘘つき村の住民にこのような選択をさせてはならない。こんなの非人道処刑装置だよ。





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