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『Outer Wilds』最期の宇宙おくりびと(完結編)

よくきたな、俺は宇宙探索隊OuterWildsのお望月さんだ。数多の労災事故の果てに、OuterWilds世界の崩壊原因を突き止め、ループを終焉ることができた。今回は、Twitter上で報告できなかった内容も含めて探索業務を報告していこうと思う。

なお、先日のNitendo Directで本作がNitendo Switchでもプレイできるようになるとアナウンスがあった。プレイ可能な範囲が広がったので、少しでも興味を引かれたのであれば、ぜひプレイをしてみてほしい。(2021年夏の配信予定)

本記事はゲーム『Outer Wilds』の結末の内容を含みます。

前回のインシデント報告

これまでのあらすじ
宇宙冒険団 【Outer Wilds】の一員である君は、古代宇宙部族Nomaiの遺物と出会ったことにより「宇宙崩壊の22分前」を繰り返すループ世界に囚われてしまった。君はNomaiの足跡を追いながら半径数十キロのミニチュア宇宙を飛び回り、この宇宙はすでに寿命を迎えていたことを知る。

導かれし者たち

というわけで『OuterWilds』をついにクリアしました。結論から言えば、21世紀で最も優れたアドベンチャーゲームのひとつであると断言してもよいでしょう。

プレイヤーごとに異なる探索の道筋、ランダムのようでランダムでない量子学的に裏打ちされた再現性、不自由ながらも体感で習得していく操作性、そして生き生きとした登場人物の足跡。どれもが素晴らしい【体験】に導いてくれる要素になっている。

物語の主題は「観測」「好奇心」である。未知の電波を追い、新たな宇宙まで到達して滅びた三眼種族ノマイ。ノマイの足跡を追って宇宙へ飛び出し、ついにはノマイが到達できなかった【宇宙の眼】の観測に成功した四眼種族ハーシアン。彼らは、二眼人類(つまりプレイヤー)が観測をしなければ存在することはなかった。

進化途中のハーシアンとノマイ族の邂逅を描いた貴重なシーン

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それはまるで『アラビアの夜の種族』のような、プレイヤーとキャラクターの甘い共犯である。読者が観測をすることで、それはそこに至り、ついには現実化して次の世界へ向けて旅立っていく。非常に巧みなストーリーテリングの手法を用いていると唸らざるを得ない。「これは俺のためのゲームだ!」と叫んだプレイヤーも多いのではないかと思う。

登場するNomai族がとても魅力的なことも、それに拍車をかけている。中でも残されたメッセージから推測される恋愛模様は特筆すべきものだ。【宇宙の眼】を追うために実験を重ねながら(公開メッセージ上で)交わされる軽口や愛の言葉に胸を打たれる。

Nomaiの恋愛相談が胸を打つ

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ループを繰り返すたびにNomaiの人間臭さに共感を抱くものの、コトの真相に迫るほどに相互理解が不可能な倫理観の断絶も味わうことになる。

彼らは好奇心を満たすためだけに、この宇宙の太陽を超新星爆発させようとしていた。その計画は(幸運にも)失敗に終わったことが明らかにされるんだけど、Nomaiはとんでもないアホ星人だったことを君は実感するわけだ

そして、彼らの残した「超新星エネルギーを利用した時間遡行ワープ装置」と「記憶を保存し再生させる石仮面」が思いもよらぬコンボを生み出してスパーク、22分間の葬式ツアーがはじまる。とんだ大迷惑である。

すでに滅んだ世界で、アホ星人の残したアホ計画の尻拭いなんてする必要もないんだけど、その計画のおかげで我々は事態を観測して宇宙の葬式をする準備ができた、と考えると、なんだか(良かったような、そうでもないような)なんだかなあ、という気持ちになるわけです。ふいに沸いたおまけの22分間は『何処へでも行ける切手』の「おまけの一日」ですよね。巨人の大海に居た彼のように、何もしないで終わってもそれでいいんだ。

宇宙と好奇心をトレードオフするNomai太郎の壁画

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とはいえ、我々は度重なる崩壊の末にNomaiの人生を知ってしまった。アホ星人がどのような生活を送り、何を目指して、どのような滅んだのかを知ってしまったのだ。知識は「火」は、次代へ受け継がなければならない。そんなこんなで、僕は好奇心ひとつを友にして、宇宙を行くことになったのであった。まるでNomaiのように、宇宙おくりびとの使命を全うするために。

さようなら、また来世で

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こうして宇宙は滅びた

Outer Wilds 宇宙は寿命が尽きるのを待たなくても滅びに向かっていた。

例えば、闇のイバラは自らの種子を飛ばして勢力を広げる宇宙捕食者テッカーメンそのものである。

Nomai族を捕獲し絶滅寸前まで追い込んだ闇のイバラの壁画

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彗星「侵略者」は致死性の病原菌を宇宙にばらまいていた。

幽霊物質により絶命したNomai

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とはいえ、このような宇宙絶滅インシデントも、Nomaiと同じ、宇宙生命活動の一環である。自らの生存域を広げるのは全存在の熱力学的本能だ。闇のイバラも幽霊物質も、好奇心で太陽を爆発させようとするNomaiと変わらない。

プレイヤーが彼らを理解できるかどうか、言葉が通じるか、視点を合わせることができるかどうか、という違いしかない。彼らも生きていた。

プレイヤーの最初の死亡(好奇心で井戸に落ちてペアリング前に死亡してエンドロールが出た)と最後の死亡(宇宙アンコウに喰われる)が同じエンディングであったことに最後に気がついた。すでに宇宙は滅びている。なにをしても結果は変わらないが、その死に向かう道中をどう生きたかという話なんだよね。

最初の死亡

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最後の死亡
(同じエンディングを迎えたが、その生きざまは異なる)

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当然ながら、プレイヤーもそういった存在のひとつだ。君が瞳を閉じれば世界は終わる。お前が観測をすることではじまった物語だ。宇宙おくりびとになれ。

第三の観測者の存在

ところでこれは与太話として聞いてほしいんだけど、実は遠い過去の話だと思っていたOuter Wilds宇宙は、もしかすると近い未来の話なのかもしれない。これがその証拠だ。

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これは、どこか遠くの宇宙から放たれた片翼の宇宙探査船、と思われるものだ。この物体についてはゲーム中で間違いなく会うことができるので確かめてほしい。宇宙の果てから届いたコレからは、他の知的生命に向けて放たれた顔写真(驚くべきことに目が二つしかない!)と音声メッセージが放たれている。

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我々は同じ宇宙に二眼地球人がいることを観測してしまった。ゆえに地球人類も遠からず絶対惑星破壊超新星爆発に巻き込まれることが確定してしまったのだ。おめでとうございます! それまで、せめてよく生きましょう。

最後のヒヤリハット

労働災害に向き合う当アカウントとしては、宇宙の労災防止案件に触れていかねばならない。

最終セクション灰の双子星のコアエリアの主電源装置の主電源スイッチがGood Pointです。このスイッチがアナログ二段階スイッチになっていることにお気づきでしょうか。「いいですか?」「 ほんとうにいいですか?」となっています。誤操作防止を目的とした優れたシステムです。

さらにコア内の重力発生源がアナログな遠心力式回転重力発生装置を採用しているのもよいですね。インシデント発生時に電源が断たれた後も事業継続できるしくみづくり。Nomaiは優れた設計者ですね。

まあでも、この遠心力重力発生装置の外周に巻き込まれて初回のループ解除(時間切れ)エンドに到達したプレイヤーがいたことをNomaiは考えていかなければなりません。確率的に可能な事故は必ず起こります。Nomaiも自分を基準にするのではなく、規格外のアホを想定して装置を設計するべきでしょう。

貴重な二段階スイッチ

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未来へ

以上で、Outer Wilds プレイ報告を終わります。無数の労災事故と向き合い、時には無理筋をプレイヤースキルで押し通したり(南部観測所反転着陸事件)しましたが、私は元気です。

南部観測所に対してネオキン肉バスター方式で強制着陸する様子

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細かいプレイ報告はこちらのMin.tにまとめてあります。

豊富な事故事例をツイートでまとめています。ヒヤリハット事例を共有して事故を未然に防ごう!


(おわりです)



いつもたくさんのチヤホヤをありがとうございます。頂いたサポートは取材に使用したり他の記事のサポートに使用させてもらっています。