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【アクセシビリティ向上に向けた課題発見と取り組み】症状検索エンジン 「ユビー」がスクリーンリーダーで利用可能に

ユビーでは「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」のミッションに向けた取り組みとして、アクセシビリティ向上のための改善を実施しています。今回、症状検索エンジン 「ユビー」に対し、全盲の視覚障害者4名にスクリーンリーダーを利用した検証を実施していただき、結果として大きな問題なく利用可能であると確認できたことをお知らせします。

ユビーをiOS VoiceOverで利用している状況のスクリーンショット。冒頭の質問文「頭が痛いの現れ方について、一番近いものを選んでください」を読み上げている スクリーンリーダーを利用した検証を実施して「症状に関する質問にユーザーが答える画面」「関連する病気を提示する画面」「医療機関を案内する画面」の主な機能の3点を利用できるよう、アクセシビリティガイドラインや、 専門家の知見に基づき改修を行いました

スクリーンリーダーを利用した実際の利用デモ

アクセシビリティとは

一般にアクセシビリティとは、アクセスのしやすさを意味します。転じて、製品やサービスの利用しやすさという意味でも使われます。
似た意味をもつ言葉にユーザビリティがありますが、アクセシビリティはユーザビリティより幅広い利用状況、多様な利用者を前提とします。

ウェブアクセシビリティとは

ウェブのアクセシビリティを言い表す言葉がウェブアクセシビリティです。ウェブコンテンツ、より具体的にはウェブページにある情報や機能の利用しやすさを意味します。
さまざまな利用者が、さまざまなデバイスを使い、さまざまな状況でウェブを使うようになった今、あらゆるウェブコンテンツにとって、ウェブアクセシビリティは必要不可欠な品質と言えます。
ウェブアクセシビリティ基盤委員会「基礎知識」より)

スクリーンリーダーとは

視覚障害者向けの支援技術であり、画面内の情報や操作結果をすべて音声で読み上げることで、視覚に頼らずともPCやスマートフォンを利用可能にするものです。
ただし、スクリーンリーダーで利用可能にするためには、ウェブサービス側が標準技術仕様に則り、適切に実装されている必要があります。
下記の動画で利用状況の概要を知ることができます。
視覚障害者(全盲)のウェブページ利用方法

なぜユビーがアクセシビリティに取り組むのか

これまでも、ユビーは高齢者や若年層に向けたユーザビリティについてはさまざまな取り組みを行ってきました。近くの公園でご高齢の方に使ってもらいフィードバックしていただく、社員の家族や祖父母に使ってもらって意見をもらう、実際に利用した方にインタビューするといった手法で、ITデバイスの利用に不慣れな方でも利用できるよう日々調整を重ねています。

こうした取り組みに加え、ユビーは昨年夏からアクセシビリティ向上のための改善施策を開始しました。Ubieではミッションに「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」を掲げており、この「人々」には、テクノロジーの恩恵を受けるすべての人が含まれていると考えているためです。

医療へのアクセスが必要となる状況はさまざまです。視覚障害、聴覚障害、上肢障害といった身体的な障害当事者にとっても、また病気や怪我などによって一時的にそれに近い状況である場合でも、医療へのアクセスは等しく提供されるべきです。そもそも身体障害は医療的見地から認定されるものであり、病気や怪我が障害の原因となる場合も多く、「アクセシビリティを必要とする人」と「医療へのアクセスを必要とする人」の重複は大きいと考えられます。

しかし、そうした状況では得られる情報に制限があったり、既存媒体を使った情報収集や判断が難しかったりする場合も多くあります。そのような局面でこそ、ユビーによる適切な医療への案内が助けになるのではないかと私たちは考えています。

症状検索エンジン 「ユビー」のアクセシビリティ課題

症状検索エンジン 「ユビー」においては、まずスクリーンリーダーで利用可能にすることが優先課題だと考えられました。

昨年夏の取り組み開始時点でアクセシビリティチェックを実施した結果、視覚的なデザインにおいては大きな問題は発生していませんでした。これまでの「ITデバイスの利用に不慣れな方でも、高齢者や若年層でもわかりやすくする」という取り組みによる結果と言えます。

一方で、スクリーンリーダー利用時においては、ボタンやリンクやチェックボックスを正しく読み上げない、開閉する箇所の状態がわからない、確認のダイアログ表示がでたことに気づけないなど、このサービス自体が利用困難となるであろう課題が見つかりました。

こうした課題に対し、まずメイン機能である「症状に関する質問にユーザーが答える画面」「関連する病気を提示する画面」「医療機関を案内する画面」の3点を利用できるよう、アクセシビリティガイドラインや、専門家の知見に基づき改修を進めました。

全盲の視覚障害者4名によるテストの実施

オンラインインタビュー時の様子:zoom上で、テスト参加者がスクリーンリーダーでユビーを操作する様子を、Ubieのデザイナーが見せてもらっている

改修を進めて一定程度まで利用可能になったと考えられたため、実際にスクリーンリーダーを日々利用している方にテストしてもらうことにしました。ガイドラインや専門家の知見はあくまで一般論であり、特定のサービスにおいて、アクセシビリティを必要とする当事者にとって使い物になるのかは、実際に使ってみる形でしか検証できないからです。

今回はITリテラシーが高く、ウェブブラウザやアプリの利用に慣れていて、スクリーンリーダー利用歴が10年以上の全盲の視覚障害者4名にテストを実施して頂きました。こうした属性の方が使えることがまず最低限のラインであると考えたのと、利用の際の課題がなぜ生じてどう改善するとよいかを解説頂けるという点で、このような人選になりました。

症状検索エンジン 「ユビー」においてはスマートフォンでの利用ケースが多いため、iPhone + VoiceOverと、Android + TalkBackの2つの環境でテストを実施しました。
※VoiceOverとTalkBackは、それぞれiOS / Android OSが提供しているスクリーンリーダーの名称です

当日はオンラインでテストを行いました。Zoomで接続し、iPhone・Androidの画面と音声を共有いただきながら、こちらから提示したタスク(頭が痛くなったので、ユビーを開き、症状を入力、結果画面から医療機関を探し、どこで受診するか決める)に沿って操作を行い、タスクが進められるかを試してもらいました。

テスト結果と新たにわかった問題

テスト結果としての評価は良好でした。社内チェック時点で挙がっていた問題は解消されており、「症状に関する質問にユーザーが答える画面」「関連する病気を提示する画面」「医療機関を案内する画面」においても、情報を理解して操作するという点では大きな問題なくテストを終えることができました。

特に症状の質問画面においては評価が高く、次の質問の見出しを最初に読み上げるようにしていたことで、迷わずテンポよく回答できると評価頂きました。

評価が高かった症状に対する質問画面のデモ

一方で、以下のような課題がまだ存在していることも確認できました。画面が見えているユーザーに伝わっているものが、スクリーンリーダーユーザーにも過不足なく伝わっているかという点でいうと、改善余地があるという結果でした。

  • スタート画面の冒頭部に見出しがないため、見出しから構造を把握する使い方をする場合において開始ボタンに気づきにくい

  • 質問に答える画面では質問内容と回答ボタンに意識が向けられるため、画面内に表示されている他の要素(例えば「残り何問」の表示や、現時点で関連する可能性が高い病気の表示など)に気づきにくい

  • 質問に答える画面では見出しが最初に読まれるが、結果表示画面が出たときには見出しを読み上げないため、画面が切り替わったことに気づきにくい

  • 結果表示画面において、アイコンを読み上げない箇所や、開閉する箇所の状態を読み上げない箇所があり、画面がどういう状況にあるかの把握に迷うことがある

こうした点に対してもインタビュー後に改善を行い、現在は問題を解消できていると考えています。

今後の展望と私たちの取り組み

今後の取り組みとしては、以下を考えています。

  • 課題の改善と再テスト

    • 見つかった問題の改善を行いながら、再テストを実施します。今回はITリテラシーが高い方々に向けてスマートフォンでの利用ケースを中心にご協力いただいたため、次回の再テストでは一般的なITリテラシーの方や、PCでの利用ケースでのテストを計画しています。

  • スクリーンリーダー以外での利用状況におけるテスト

    • 今回はスクリーンリーダーに着目した改善を行いましたが、今後はそれ以外での利用ケース、例えば弱視であったり、タッチデバイスやマウスなどが使いにくい方にとっての使い勝手についても確認していきたいと考えています。

  • 課題が起こりにくくするための取り組み

    • 正しくアクセシブルにする作り方を社内で共有する、画面を構成するパーツを一元化しつつアクセシブルにする、画面を作った際に自動チェックを入れるといった方法で、改善結果が維持され、問題が再発しないよう仕組み化を取り組んでいきます。

  • 症状検索エンジン 「ユビー」以外のプロダクトのアクセシビリティ改善

    • 上記のような仕組みを他プロダクトにも横展開し、ユビーが扱うプロダクトの全体としてのアクセシビリティが向上するように共有を図っていきます。

  • 社内での取り組みの外部発信

  • 新たな課題領域の特定と改善

    • 今回のテストの中で聞かれた声として、医療機関までの道順がわからない、紙の問診票への記載を要求される、プライバシーに関わる内容を他の人がいる場で読み上げられるといった、そもそも視覚障害者にとって医療にアクセスする際にさまざまな局面で大きなハードルが存在することがわかりました。今後、ユーザーへのインタビューを重ね、こうした課題に対してもユビーが解決策を提供できるケースがないか、検討を行っていきたいと考えています。

症状検索エンジン 「ユビー」のフィードバックをお待ちしております

ユビーは「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」というミッションを遂行するため、引き続き誰でも使いやすいプロダクトを目指して改善を積み重ねていきます。

こうした改善を行うためには、利用者のフィードバックが不可欠です。
ぜひアクセシビリティを必要とする方に症状検索エンジン 「ユビー」を使ってみていただき、下記のお問い合わせ窓口からご意見・ご要望をお聞かせいただければ幸いです。

お問い合わせ

また、ユーザーインタビューにご協力いただける方も常時募集しております。アクセシビリティを必要とする状況でユビーを利用したことがある方は、ぜひ以下のフォームからユーザーインタビュー候補としてお申し出ください。

※症状検索エンジン「ユビー」は2022年4月にUS版もリリースしました。(2023年3月追記)