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AI問診・AI受診相談はオンライン診療と違う?遠隔医療の種類や定義をまとめてみた

Ubieで働くことに興味がある方やメディア関係者など、日頃さまざまな方とお話するなかで、「Ubieが開発・提供しているAI問診やAI受診相談はオンライン診療なの?」という質問をよくいただきます。

結論からいうと、AI問診およびAI受診相談はオンライン診療やオンライン健康相談とは異なるものです。
医療業界の関係者以外には違いが分かりづらいかもしれません。

そこで、AI問診・AI受診相談およびコロナ禍で注目度が高まっている遠隔医療について、それぞれの定義・提供企業・関連サービスについてまとめました。

遠隔医療サービスとは

ここ数年、テクノロジーで医療をもっと身近に、便利にするサービスが急激に増えています。

とくに、情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為は「遠隔医療」といいます。医師ー患者間で利用される遠隔医療の種類として「オンライン診療(遠隔診療)」、「オンライン受診勧奨」、「遠隔医療健康相談(オンライン健康相談)」が挙げられます。それぞれ具体的にどんな行為を指すのか、もう少し詳細に説明していきます。

①オンライン診療(遠隔診療)

「オンライン診療(遠隔診療)」とは、遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察や診断を行い、診断結果の伝達や処方等の診療行為をリアルタイムでおこなう行為です。

主な提供企業およびサービスとしては以下のようなものが挙げられます。

■CLINICS(クリニクス)オンライン診療 / メドレー社

予約、事前問診、ビデオチャットでの診察、決済、薬・処方箋の配送をワンストップで完結できるオンライン診療システム。患者さんはスマートフォンや PC を用いて、居場所を問わずに診察を受けられます。富士経済社調べでは、導入実績がNo.1とのこと。

■curon(クロン) / MICIN社

予約から問診、診察、決済、処方せんや医薬品の配送手続きまでをオンラインで完結できるサービスで、全都道府県、約5,000の医療機関が導入。2020年2月には全国47都道府県で調剤薬局を展開する日本調剤のオンライン服薬指導システム「日本調剤 オンライン薬局サービス」との連携が発表されました。患者さんがクロンでオンライン診療後、オンライン服薬指導の予約も行おこなえます。

■スマルナ / ネクイノ社

生理や避妊に関する悩みを持つ方と医師や助産師、薬剤師などの医療専門家をつなぎ、オンライン診察やピルの処方、相談を受けることができるプラットフォーム。2018年6月のサービス開始から2年で累計20万ダウンロードを達成しています。


このコロナ禍でオンライン診療を初めて知った/利用したという方も少なくないでしょう。厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)は、2020年4月10日に開催された総会において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染防止のため、初診を含む電話・オンライン診療を時限的・特例的対応として認めました

自宅からでも医師の診察が受けられるのは便利な反面、普及に向けては課題もあります。対面診療に比べて得られる患者の心身の状態に関する情報が限定されるため、その医療上の必要性、安全性および有効性等を担保する必要があるのです。そこで、厚生労働省では2018年2月から「情報通信機器を用いた診療に関する検討会」「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」を開催し、必要なルール等について検討を重ねています。

日本医師会も、「解決困難な要因によって医療機関へのアクセスが制限されている場合に、 適切にオンライン診療で補完する」との見解を述べており、初診については原則直接の対面で行うべきとしているのが現状です。

オンライン診療の恒久化に向けては、2020年12月に開催された政府の規制改革推進会議にて、2021年夏頃を目途に骨格を作成することが決まりました。今後の動向が注目されます。発表されたら、このオープンファクトブックでもご紹介したいと思います。

②オンライン受診勧奨

「オンライン受診勧奨」とは、遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して患者の診察を行い、医療機関への受診勧奨(受診の必要性を判断し、受診を勧めること)をリアルタイムでおこなう行為です。

患者さん個人の症状に応じた必要最低限の医学的判断(疾患のり患可能性の提示等)を伴う行為ですが、診断や治療方針の伝達、一般用医薬品の具体的な使用の指示、処方等は行えません。これらを行う場合は「オンライン診療」に分類されます。

関連サービスとしては、マイシン社が2018年12月よりインフルエンザ罹患時のオンライン受診勧奨サービスの提供を開始しています。

これは2018年から実施されている「規制のサンドボックス制度」を活用し、実現したものです。革新的技術、サービスを事業化すべく、地域・期間を限定して規制を停止する制度のことで、医療分野での認定は本件が初。インフルエンザが疑われた際、オンライン診療サービス「クロン」のビデオ通話機能を使い、協力医療機関注の医師からアドバイスを受けられるものです。通話中、医師等の指導のもと、検査キットを使って患者が自宅で検査をし、医師がその結果を見ながら、受診を促す、出勤を抑制するなどアドバイスを行います。

③オンライン健康相談(遠隔医療健康相談)

「遠隔医療健康相談(オンライン健康相談)」は、医師もしくは医療従事者から受けられる健康相談サービスです。あくまで「医学的助言」にとどまり、患者さんの個別的な状態を踏まえた診断などの具体的判断は伴いません。

オンライン診療は医師ー患者間でおこなうことや原則初診は対面であることが厚労省の方針で掲げられていますが、遠隔健康医療相談では医師以外も参加でき、初診からオンラインがOKなのが特徴。公的医療保険外のサービスであり、医療関係法令の制約を受けません。

主なプレーヤーやサービスとしては以下のようなものが挙げられます。

■LINEヘルスケア / LINEヘルスケア社

LINE上で゙医師に健康相談できるサービス。からだの不調やお子さんの急病など様々な不安に医師が直接回答します。診断や処方はできません。30分間リアルタイムで相談、もしくは、時間帯を問わず質問し随時回答を待つ投稿型の2つの方法で相談できます。内科・小児科・産婦人科・整形外科・皮膚科・耳鼻咽喉科に対応中。

■LEBER(リーバー) / リーバー社

24時間365日スマホで医師に相談ができるアプリ。現在300人以上の医師が登録されており、チャット形式にて最短3分で回答が得られます。一般向け医療相談アプリ「リーバー」に加えて、教育機関に毎日の検温結果と体調、出欠席の報告ができる「LEBER for School」、企業向けに検温・体調報告とストレスチェックを組み合わせられる「LEBER for Business」も展開されています。

■小児科オンライン / Kids Public社

お子さんについての悩みをスマホで、現役の小児科医に相談できるサービス。平日18〜22時、LINEや電話で相談できます。1枠10分の予約制。病院に行くべきかどうかの判断やお子さんの体調不良など、親御さんならではの疑問、不安が解消できます。

※1
医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条より、医師が行う医行為は「医師の医学的判断をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為」と解されています。

ユビーAI問診・症状検索エンジン「ユビー」とは

では、弊社が提供しているAI問診やAI受診相談はどうでしょうか。

「ユビーAI問診」は医療機関の紙の問診票のかわりにタブレットやスマートフォンを活用したWeb問診票です。問診とは「医師が患者を診察する際、まず、本人や家族の病歴、現在の病気の経過・状況などを尋ねること」で、すべての医療の入り口となるプロセスです。医療機関の受付や自宅で患者さんが症状を入力し、20問程度の質問に回答すると、症状の詳細を診察前に医師等に伝えられます。

私たちは、医療従事者の業務効率化を支援するためにこのサービスを開発しました。患者さんが入力した症状を医学的な文章に翻訳し提出するなど、情報収集・情報記載・情報検索の業務を効率化。これにより残業の主な理由であるカルテ記載などの診察事務が1/3に削減され、より患者さんに向き合った診察が行えます。2018年8月のサービス提供開始以来、現在までに47都道府県、400以上の医療機関に導入されています。

一方で症状検索エンジン「ユビー」は、生活者の適切な医療へのかかり方をサポートする受診支援サービスです。ユビーAI問診同様に20問程度の質問に回答すると、関連性のある病名や、それに対応する地域の医療機関情報などが提示されます。医師などの医療従事者を介在せず生活者が単体で使用します。そのため、診断や受診不要の指示・助言など医学的な判断を伴わずに、医療機関への受診などに関する情報提供を行います

コロナ禍での「受診控え」などが懸念される状況下で、生活者が適切な地域医療にアクセスでき、病気の早期発見や医療機関への早期受診へつなげることを目的に開発しました。2020年4月のサービス提供開始以来、2021年5月時点で月間80万人が利用しています。

2022年にはUS版もリリースされました。※2023年3月追記

前述のとおり、ユビーAI問診・症状検索エンジン「ユビー」は疾病の診断、治療、予防を目的としたサービスではなく、それらの医療行為をおこなうものでもありません。「問診」は医師の存在を前提に診察前・中に原則必ず行われるものであり、Web問診票はそのいち手段です。したがって、AI問診(Web問診票)は遠隔で医療行為をおこなうオンライン診療とは異なり、また、医師などの医療従事者が介在しない点からAI受診相談(Web医療情報提供)とオンライン健康相談も異なります。

症状と関連性のある病名を「参考病名」として根拠とともに表示しますが、あくまで情報提供に留まり、最終的な病名の判断(診断)は必ず医師が行います。医師が本来の業務に集中できるよう、また、生活者が適切な医療に繋がれるよう、弊社は今後もテクノロジーでサポートしていきます。

まとめ

今回は遠隔医療に該当するオンライン診療、オンライン受診勧奨、オンライン健康相談(遠隔健康医療相談)とAI問診・AI受診相談との違いや各サービスにできること・できないことをご紹介しました。

診断などの医療行為が行えるかどうか、また、医療従事者を介在するか否かによって各サービスのカテゴリが異なります。こうしたポイントを把握しておけば、それぞれの違いが理解しやすくなるでしょう。体調が優れずどのサービスを使うか迷った際などには、本記事を参考にしてみてください。

次回は「医療業界の市場規模」をご紹介予定です。ご興味ある方はぜひマガジンをフォローしてくださいね。

参考

『「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の策定について』
 厚生労働省医政局長、2018年3月
『オンライン診療の適切な実施に関する指針』
 厚生労働省、2018年3月(5,6,30ページ)
『オンライン健康相談について日本医師会の提案』
 公益社団法人日本医師会、2020年10月(1,4,5ページ)
『第48回国家戦略特別区域諮問会議 規制改革推進会議 第2回議長・座長会合(議事要旨)』
 内閣府、2020年12月(18ページ)

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