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「文車妖妃のメソッド」第7話:メソッド審査

第6話:消えた審査員

2日目。加藤が出社すると志村、新井、高木、五十嵐(仮)は既に席に座りパソコンに向かっていた。

「おはよー。早速だけど審査の方法を教えるね。昨日、楽しかったみたいだね。志村さんがさっき教えてくれたよ。ええやんええやん」

向かいの席の新井が話してくる。

「昨日渡した『嵐文メソッド』を出してね。あ、それ、言うの忘れたけど社外持ち出し禁止ね。万が一ね、外で紛失したら、恐らく一発解雇だよ」

さらっと恐ろしいことを言われた。が、納得はできる。1年に1回の文章大賞に人生を賭けて挑戦する人もいるのだ。その審査基準なんて数百万円出してでも買う人はいるだろう。

「今からわんさか記事を読んでもらって審査するんだけど、どういう基準で○を付ければいいかわかんないよね。だからメソッドその1があるんだ」

1.タイトルは凝っているか

「タイトルに惹かれないのは落としていいよ」

「惹かれるって、具体的にどういうことですか?」

「えーっとね、たとえば『7月23日の日記』とか、そういうのはアウトだね。アイドルや有名人ならそんなタイトルでも読んでもらえるけど、一般人の7月23日は誰も興味がないからね」

なるほど。たしかに自分が記事を読む時、タイトルで読むか読まないかを判断している。そして推しのアイドルならどんな記事でも読むのは間違いない。

「ここでそうだなー。半分は減らせると思うよ。ちよさんが独り言で『あうとーあうとー』って言ってるのはタイトルのことだね」

「わかりました。次の2も教えてもらっていいですか?」

2.書き出しは先を読み進めたくなるか

「うん。記事の鉄則は、タイトルの役割は記事に興味をもってもらうこと。そして最初の文、つまり書き出しね。これは2行目を読んでもらうためにあるんだ。ちなみに2行目は3行目を読んでもらうためね」

読者は浮気性だ。作者が頭をひねり時間をかけて書いたものでも、あっさりと読んでいく。一文目に興味がなければ即記事を閉じてしまう。だから書き出しは重要というわけだ。

「書き手ってね、みんな『自分は興味をもたれてる』って思っちゃうんだよ。だからどんな文でも読んでくれるって変な自信があるんだよね」

いつのまにか横に志村が立っていて、ニヤニヤしていた。

「ふうこん、完璧じゃん」

「志村さんが教えてくれたことを、そのまま伝えてるだけですよぉ」

「嬉しいねぇ。加藤くん、今ふうこんが言ったように、まずはタイトルと書き出しで選別していくといい。これだけで半分は落ちるから。それが終われば、クリアした作品で、残りの8項目を見ていけばいいよ。で、加藤くんの『ふつう』の感覚がめちゃくちゃ役に立つわけだ」

タイトルと書き出し。それだけでほとんどが落とされてしまう。加藤はこれまで趣味で記事を書いてきた。適当に書いてきた。タイトルと書き出しに重点を置いていたか? まったくだ。プロの世界、審査の厳しさを目の当たりにする。

(加藤、話しかけてすまない)

五十嵐(仮)から声がする。ドキっとしてチラッと横を見ると、笑顔はなく、怒っているような厳しい顔をしていた。

(この審査基準は、偽物だ)

第8話:真・嵐文メソッド

第1話:https://note.com/u_yasushi/n/n50fe762ef006
第2話:https://note.com/u_yasushi/n/n2aefa79ddb17
第3話:https://note.com/u_yasushi/n/n7766d2efafdd
第4話:https://note.com/u_yasushi/n/n14db0d504832
第5話:https://note.com/u_yasushi/n/ne3df7df82afc
第6話:https://note.com/u_yasushi/n/nce363b3a3b6d
第7話:https://note.com/u_yasushi/n/n988d2fbbea88
第8話:https://note.com/u_yasushi/n/nc7891dfdb586
第9話:https://note.com/u_yasushi/n/nf24d6f4b8133
第10話:https://note.com/u_yasushi/n/n7df18307a437
第11話:https://note.com/u_yasushi/n/n3729eec39423
第12話:https://note.com/u_yasushi/n/n986740e6ffa6
第13話:https://note.com/u_yasushi/n/ne4d645a75975
第14話:https://note.com/u_yasushi/n/na38f84e5a63f

#創作大賞2024
#お仕事小説部門

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