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「2028年、街から書店が消える日」が身に染みた話

 大学時代、実家に帰省した際に実家で営む書店のビジネスモデルを知って悪い意味で驚愕したことをこの本を読んで思い出した。当時の実家の書店はマーケティング不在のビジネスモデルだったのだ。

 はじめまして!1年後に実家の書店の建替えを予定している本屋のしょーちゃんです。

 先日東京に行った際に立ち寄った書店でこの本を見つけて家に帰ってから読んでみました。今回は感想や気づいたことを書いていこうと思います。長くなるかも知れませんがお時間があればお付き合い頂けるとうれしいです!


 1.書籍の紹介

 書名:「2028年 街から書店が消える日」
 著者:小島俊一
 出版社:プレジデント社
 ISBNコード:9784833425346
 発売日:2024年5月22日
 定価:1870円(税込み)

 気になった方は是非ともお近くの本屋orお気に入りの本屋さんでお買い求めくださいませ!

 

2.読んだうえでの感想

 まずはこの本、具体的な数字を交えて出版業界のリアルを生々しく描写しています。
 これから出版業界に進みたい学生の方、出版業界に転職を考えている方、私のように出版業界に身を置きながら業界について改めて学びたいという方にオススメの一冊となっております。これからの本屋のあり方を強く説いていると感じました。
 とは言っても出版業界に身を置く方々にとっては耳の痛い部分があるなと思いました。私自身読み進める中で自分自身の仕事への向き合い方を考えさせられるいいきっかけだったと思っています。
 ここからはこの本を読んだうえでの個人的な気づきがメインの内容となります。どうかご了承のうえお読み頂けるとうれしいです(※以下の内容は決して他者を非難する意図で書いていません。あくまで私・私のお店自身の事です)。

 

 気づいたことその1:選書の判断基準が曖昧だったかも?

 書店で発注業務をしていると自分でも気がつかないうちにこんな思考が頭をよぎります。

「これ今売れてるみたいだから仕入れよう」
「これジャケットがきれいだから仕入れよう」

 改めて自分の選書における判断基準を文字に起こしてみると非常に恥ずかしい…なんて曖昧なんでしょう…。
 売れ筋の本をそろえることも、ジャケットのビジュアルが良いから買うのも100%悪いわけではないと思いますが、もうちょっと軸というかしっかりした判断基準がほしいなと思いました。
 今のところ選書の基準を考えるとこの3つが軸になるのかなと思います。

 ①本を買うであろう人の”顔”を思い浮かべること。その人に本をギフトとして贈るならどんな本がいいか?
 ②その人にとって少しだけ未知の部分を盛り込んだ要素があること。

 そして選書の軸とは少し違うかも知れませんが、作中にあった”書店は出版社・取次の売りたい本を販売する場所ではなく、読者が買いたい物を代行して仕入れて販売する場所”という一文がありましたがそこが刺さりました。

 

 気づいたこと2つめ:お客さんのこともっと良く観察したほうがいいかも

 この本を読んでいてまず最初に思った事。

 「あれ、もしかして自分ってお客さんのこと知ってるようであまり深くは知らないんじゃ…」

 言い方は良くないかも知れませんが顧客管理が出来ていない事に気づかされたんです。
 もっとお客さんの”趣味嗜好”や”価値観”などにも触れられるといいのかなと思いました。
 仮に初対面の人とお会いしたとして、目の前の人が今後どういった間柄になるかはすぐにはわかりません。商売に限った話ではないかも知れませんが、なるべくなら良い関係を作りたいですね。もちろん目の前の相手に自分が何をするかによって付き合いは変わってきますよね。全て自分次第っていうことかなと思います(どんなオチだ)。

 

 気づいたこと3つめ:書店も小売業の一種であるということ。

 「今更かよ!」と思うかも知れませんが、この本を読んで改めて気づかされました。

 ”本は文化的な物でそれを扱う書店・本屋は街の文化の拠点”

 これは確かにその通りですが、その言葉に囚われすぎていた部分があったように思います。
 いつからか「良い本を置いておけば人が気がついてお店で本を買ってくれる」というある意味現実逃避にも似た考え方をするようになっていた気がします。でもそんなに商売は甘くないですよね?その甘さを見透かされたような気がしています。
 そして本を売るためには気づいたことその1で書いた「お客さんの顔を思い浮かべた選書・仕入れ」を行うだけではまだまだ不十分です。私が考えるに書店にも”物を売る仕組み”つまりは”マーケティング”が必要と考えています。
 この記事の冒頭にも書きましたが、当店はマーケティング不在の商売をしていたように感じます。マーケティングでいうところの4P・マーケティングミックスを書店という業態で考えるとこんな感じになります。

 ・Product(商品)
 新刊は取次から見計らいで送品されてくるし、基本在庫は出版社のセットや取次の常備でそろえることが可能。
 ・Price(価格)
 再販制度で価格の決定権は出版社が決めるから書店はその値段で売るしかない。
 ・Promotion(プロモーション)
 売れる本さえ置いておけば売れるから不要(ほんとうにこんな考え方で今までやってきたから、プロモーションという概念がそもそもあまりない)
 ・Place(流通)
 書店の店頭で販売するorお客様のところにお伺いする外商のみ(大手の書店さんには自社ECサイトなどを持っている所もあります)

 こんな感じかなと思います(恥ずかしながら当店をイメージして語っており全ての書店さんがこうという事を言いたいわけではありません)
 価格面は再販制度の対象だから手を付けられませんが、他のプロモーション・流通・商品はてこ入れができるのではないでしょうか?マーケティングをもう一度勉強する必要がありそうです!

 そして同時に既存のお客様と新規のお客様どちらも大切にする仕組みも必要かなと思います。

 「お金につく客 人につく客 会社につく客」

 これは私が昔どこかで聞いた言葉ですが、既存のお客様ももともとは新規のお客様です。お店のファンになって頂きたいですね。そのためにはまず色々なお客様との接点を増やさないと!

 

 最後に

 この1冊を読んで、自分の仕事に対する姿勢だけでなく書店という仕事を客観的に見ることができた気がします!
 読み返してみると「ほんとに自分の個人的な話だな!」というのが正直な所です。ここまでお読み頂きまして誠にありがとうございました!気になった方は是非お近くの書店でお買い上げの上お読みください!
 
 


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