悪魔のグルメ 外伝2

2020/10/28現在、カクヨムにて無料で読むことが出来ます。

小説家になろうで消されてしまったので、修正版を執筆中です。

それでもいいという方のみご購入ください。



 学校の裏手には山があって、山の中腹あたりにポツンと井戸がある。
 昔は誰かが住んでいたのかもしれないけれど、今はもうそこら中を樹やつたが時間と共に覆い尽くして、家があったことすらわからない。
 ただ、枯れた井戸だけがある。
 学校の近くだから、近寄った子供が落ちたりしたら危ないということで、井戸だって撤去されてもおかしくないのだけれど、なくならない。
 この街のみんながみんな、井戸のことを知っている。
 井戸についてこんなうわさがある。
 ある男が、人を殺した。
 埋めようと山まで死体を担いで行ったが、山を登っている途中で疲れてしまった。
 暗い夜だ。
 人は、疲れると色んなことがどうでもよくなる。
 人を殺すのは疲れるし、死体を片付けるのはもっと疲れる。
 男は衝動的に近くにあった井戸に死体を投げ落とした。
 すっとした。
 そして帰って眠り、次の日の朝に目が覚めて、自分がとんでもないことをしたことに気が付いた。
 男は再び山へ向かった。
 自分が今、どういう気持ちなのかもわからなかった。
 自首するべきなのか、死体をもう一度隠すのか決めかねたまま、ただ死体を見に行った。見てから決めようと思った。
 しかし、死体はなかった。
 井戸を覗き込んでも、ただ暗がりがぽっかりと口を開けているのみ。
 ライトで照らしても、朽ちかけた縄で底まで下りてみても、死体の髪の毛一本落ちていなかった。
 男は自分の正気を疑った。
 夢でも見ていたのかと。しかし、人を殺した感触はあまりにもリアルに手にこびりついていた。
 結局、男は自首をした。
 けれど、死体がどこにも見つからず、被害者はただ行方不明になったということで、男は警察からまともに相手をされなかったそうだ。
 そんな話に尾ひれがついたものが、この街のみんなの中に浸透している。
 ――人喰い井戸。
 信じている人もいれば、ただのうわさだと言い切る人もいる。
 僕は、それが本当のことだと知っている。

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