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サヨナラの実感は突然

がらんとした本棚を見ると、急に寂しくなった。4月から一人暮らしをする家へ持っていく本をダンボールにつめていると、心も本棚と同じく隙間が空いていく。

一人暮らしをすることは私にとって本当に大きな決断だった。怖がりで、寂しがりで、私はとにかく一人暮らしには向いていない。しかし、いつまでもこうではいられない。強くなりたくて、後戻り出来ないように国公立も私立も県外の大学を受験した。1人でお留守番もできなかった私は、18歳になった。まだ夜中、廊下を小走りで通っちゃうけど、大丈夫だろうか。

大好きな友達とは皆、離れてしまう。飛行機に乗らなきゃ会えなくなる友達もいる。そんなの、寂しくて仕方がないけど全然想像もつかない。いつだって近くにいたのに。行こうと言えばすぐに来てくれたマクドナルドで、最後にあと1回だけ集まりましょう。あんなに会っていたのに、もうあと1回なんて信じられない。夏になれば、向こうで友達もできて楽しくできているだろうか。こんな寂しさ、忘れてしまうだろうか。そうなればいいけど、そうなるのも寂しい。本当は本よりも漫画よりも、連れていきたいのは友達。

会いたい時に会えなくなる人だけじゃなくて、もしかするともう二度と会えない人もいる。私は世にも珍しい、塾大好き人間。勉強は大っ嫌い、それでもあそこは私にとって最高の居場所だった。先生たちも、連絡先も知らないあの子も、もう二度と会えないのかもしれない。ルパン三世に似た塾長。ちょっと怖い副塾長のヒールの足音が聞こえるとみんなして焦って、ホワイトボードの落書きを消して、参考書を開く真似をした。帰るのがめんどくさくなって公園で寝たら風邪をひいたマヌケな先生、独り言の声がデカすぎる先生、勤務中にスイカゲームやる先生、黄色い愛車を自慢する先生に、いつもチョコチップクッキーをくれる先生、メガネをかけた最高に可愛い先生。こんな人達に会いたくて、毎日毎日10時過ぎまで塾に行った。絶対にまた、ご飯に連れて行ってください。もう二度と会えないなんて、寂しすぎるから。

拝啓、友人のみなさんへ。本当に、本当に、出会えてよかった。出来れば青春時代だけじゃなくて、人生の夏も秋も冬もずっと一緒にいたい。どうか、これが別れではありませんように。この日々や、今の寂しさを全て忘れてしまうんじゃなくて、いつかちゃんと思い出して懐かしいと笑えますように。一緒にお酒を飲めますように。早く結婚しそうな人ランキング、想像もつかなかった予想の答え合わせができますように。どこで何をしていても、きっと友達でいてください。敬具

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