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旅館じゃないんだからさ ネタバレありまくり感想

旅館じゃないんだからさ(再演)を観に行ってきました。

(座席の話)
チケットを発券して近鉄アート館の座席表で調べたら4列目真ん中あたりで、どセンターを引いた!と思ったのですが、いざいってみたら3面ブロックの下手側とかで全然想像と違って面白かったです。
対角線上に全然関係ない友達が縦並びで座っていたのも面白かったです。

(本編)
思い出したいところが全く思い出せなくて悔しいので台本noteを買いました。

2021年の方の台本note

千秋楽だしnoteだし、ネタバレ気にせず感想を書きます。

【千葉について】

2021年の台本noteにはバイトを新しく雇う理由の描写がなかったし舞台は練馬だったけど、今回はバイト募集について昼バイトさんが(結婚して?)東京に引っ越すからという理由付けがされていました。「東京に引っ越したらバイトできないくらいの地方」千葉靴流通センター」「国道沿いの大阪王将が潰れた」など、地方であることがかなり強調されていた気がします。大阪公演だと練馬の雰囲気が伝わらないからかなと思ったり、今は当時よりTSUTAYAが減ったからかなとも思います。

レンタルビデオショップが存在していて、タウンワークで募集しても大学生が見つけ出してくれる場所というだけでも「首都圏近郊感」は出ますが、当時より演劇初心者のお客さんが大半であろう今回はより丁寧に背景を見せているのかなと思いました。

【Tカードとサブスクとお金】

Tカード
形を伴った会員証が存在。安いけど更新料がかかって身分証か電気代のハガキなどの住所・名前がわかるものが必要。レンタル延滞はむちゃくちゃ金取られる。

サブスク
会員料金が高いけど会員証はない。気づかず加入し続けていたらめちゃくちゃ金取られるけど、映画を見ることに関しては物の貸し借りでお金が発生しているわけではないので、想像以上に金をとられる心配はない。

Tカードは連絡先が変わっていたら使う時まで延滞に気付けないし返却日に勝手に返されることもないので、延滞で7万も取られる羽目になるのですが、物(ビデオ)が必要だったのでそこから色んな過去が芋づる式に発覚します。サブスクのアカウント共有に関してはそこまでして連絡を取ることもしないので会って初めて伝えていました。利用されている側は履歴を見るたびにいつか言おうとは思っていたのでしょうが。

どっちも共有できてしまうものではあるけど、サブスクはアカウント証明できる物がないから逆にスパッと切れない。共有相手側に委ねられたものなんだと気付かされました。

ちなみに、「また点滅に戻るだけ」ではプリクラの会員料金を払い続けていた(友達のプリクラを自分のアカウントで捌いて共有していた)のが発覚して、誰がどの割合で払うかみたいな話がありましたが、アカウント共有とお金に関して複数回描いてるのはどうしてでしょう……。

【タイトルの解釈】


①レンタルビデオショップは泊まってビデオを観る場所じゃない。

(料金表の泊数は)お客さんの泊数ではないです。ビデオの泊数です。

〈台本noteより一部抜粋〉

結構序盤に出てきて、たしかに【旅館じゃない】んですが、【旅館じゃないんだからさ】って言う感じでもないからきっと先にもっとタイトル回収してくれる話があるだろうと思って観ていました。間違ってないけど、現代文の選択肢で2個残して最後に消去法で消す方みたいな。

②最後のシーン
レンタルビデオショップで泊まって信玄餅食べながらビデオを観た→旅館じゃないんだからさ
と言ってしまってはあまりに野暮なので、想像上の「旅館」から本編に寄せる形で書いてみます。
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旅館の和室に入ると机の上の菓子盆に目が行く。信玄餅にテンションが上がるも、夕食までそんなに時間も無いのでとりあえず置いておく。夜、ご飯もお風呂も済んで部屋に戻ったけど寝るには早くて、数少ないチャンネルをザッピングしていたらどうでもいい映画がやっていた。信玄餅が残っていたことを思い出した。

暇でやることのないバイト先のレンタルビデオショップで、そんな夜を過ごした。

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泊まるという観点だと、ホテルじゃないんだからさでもいいし、泊まってビデオ見るなら快活CLUBじゃないんだからさでもあるのですが、正直「ホテル」は色んな意味を持ちすぎていてミスリードになりかねないしダサい。「ホテルじゃないんだからさ」なんて見たくない。
それはそうと、この話で出てくる信玄餅や京都旅行などの話が旅館感を引き上げているのではないでしょうか。それから片山さんは京都旅行に男と行くような人だと思います。一人でも行く。


最後のシーンには感想が山盛りあるので何から話して良いのやらという感じなのですが、まず言えるのは、「蓮見さんが作るエモさってこういうのだったよな~でもこんなに凝縮されてたっけ?」ということ。それはきっと私が今まで短い尺のコントばかり見ていたからで、長尺で丁寧に登場人物の背景を見せられたら、そりゃあ反動で大きく心を揺さぶられますよ、という感じです。

真っ暗な中でビデオの光で顔だけ照らされる演出はおしゃれだし、それでいてドラえもんの、”黒い背景に顔だけ丸く抜かれた終わり方"を彷彿とさせます。ドラえもんの映画を借りた莉奈と今の彼氏とクロスする部分でもあるのかなと思ったりしました。

対比構造や共通点などが各登場人物にあり、それぞれの経験から誰かに対して味方になったり敵になったりしていたのがよくできていて図に起こしたくなりました。リアルタイムで発言を追うことはできても、関係性と過去の経験が追いきれなかったりして、配信を頼りたいところです。(台本でもだいぶ助かっています)

【片山】

まず個人の感想から書きます。片山さんは序盤ずっとちょっとズレたことを言ってたのに不意に的を射たことを言うのでずるいというか、良いとこあんじゃんって感じで好きです。

あらすじを映画のCMみたいに読むの、結構恥ずかしい気がするんですが、結構大きい声で読み上げていたのが得点高いというか、憎めないなと思いました。ちゃんと書いてある「?!」をテンションで表現しているところに聞き手への優しさと素直さと欠落した羞恥心を感じました。周りにどう思われるかはそんなに気にしていなさそう。塚田さんには今までも見せてきた姿だと思いますが、バイトの新人もいるとか関係ないんだ。あと普段から定期的に過去の視聴履歴見てるとことか人の住所調べたり思い出への執着がすごい人で、だからこそ色々覚えてるから人望もあるのでしょうが、こんな人に好かれたら怖いとも思います。間取りから生活を想像するまでが鮮やかで怖い。下手に刺激せずを背中を見せずに一歩ずつ後退りする元カノの振る舞いは大正解で、逆にそれ以外の解は無いような。
元カノのアカウントでアマプラ限定のドキュメンタル見るのは片山さんの信念に沿ってて芸が細かいなと思います。映画はレンタルすれば良いので。

【脛まである】
荒くれモードになってからの片山さんは空回りしているように見えて本人は必死なので、みんなが制止するんじゃなくて割と受け止めようと耳を傾けていたのがよかったです。一歩引いて見てしまうとDVD積み重ねて脛まであるって言ってるの、意味が分からなかったですが。でも好きな時は好きなところにもなると思う。嫌いになったらめちゃくちゃ嫌なポイントだろうと思う。だから「あの時のアレめっちゃ嫌なんだけど!」って後出しでイライラするんだろうな、その時は「かわいい」と思ってるから怒らないけど。
今の司法で昔のことは裁けない、、。

【塚田】

塚田さん基本巻き込まれてる立場でずっと不憫でした。バイト歴3年から来る余裕なのか対処の仕方が手馴れてるし、休みモードになるとぺちゃくちゃ喋ってる感じもこれまたバイトの先輩感があってよかったです。

【レジの小銭の入れ方】
これは片山の入れ方に違和感があったから二人とも演じる上で意識しているのかなと思ったのですが、塚田さんは3種類小銭があったら最後の小銭はトレーを傾けて入れていて、やっぱり慣れているのですが、片山さんが1年やってるくせに全部つまんで入れてました。絶対トレー手前に持ってきて入れたほうがいいのに。そういうところが片山さんなんだと思ってます。

最後のシーンも良かったです。好きな男が元カノのことを忘れてないのをずっと感じながら過ごしてきてるのが、ひしひしと伝わるからこそ最後の頑張りがグッときました。Tカード更新してコーヒートラベルを借りさせる行為がここまで意味を持つなんて。塚田さんは直接的な発言はしないけど行動としては結構分かりやすくアプローチしていて、これは相談相手ができたら喋っちゃうよね、って感じでした。この時の及川くんの後輩ムーブは結構手慣れてて、お姉ちゃんいそうだなと思いました。
最後のシーン、奢ってあげるところもめちゃくちゃ良いです。レンタルビデオに愛着がわいている片山はまだ気づいていないけど莉奈のサブスク共有から外させる手伝いも後々するのでしょうか。アマプラの履歴共有されるなんてTカード内の情報よりよっぽど存在感あるので。塚田アカウントに引越しさせてあげてください。
とはいえ莉奈視点で見るとFire stickを実家に忘れていたということは、引越先でちっちゃいロックマンみたいな片山がアマプラ内で同棲してることはないということなので良かったです。東京の莉奈ちゃんに侵食する片山にはなってほしくない。

【莉奈】

(納得させるためのウソかもしれないけど)映画がそんなに好きじゃないのに、すごい熱量の片山に付き合っていた莉奈。大学までかなと思いながら付き合っていたんじゃないかと思いました。楽しいけど結婚も考えるとフリーターは現実的じゃないし、東京憧れもあるし、みたいな。今の彼氏は片山より面白みに欠けるかもしれないけど落ち着いていてお似合いに見えます。コーヒートラベルの思い出を上書きしようとする彼氏の姿もありましたが、そんなことでコーヒートラベルの片山を上書けるとは思えないし、意地張って借りたりせずに帰ってくれてよかったです。

莉奈が映画を覚えていないのは片山と過ごす時間に価値を感じていたからで、それこそ映画は「一緒にいる口実」にすぎなかったからだと思います。片山は見たことある映画は見ないでほしそうにしてたけど、別に今の彼氏と見たところで3年後には忘れていそうです。短期記憶メモリ。#映画

コーヒートラベルはガラガラの映画館で見てつまらなかったから、思い出の中に映画もちゃんと入っている。普段は鑑賞後に映画について話すときも、複雑であればなおさら、片山ばかり語っていて莉奈は「そうだねー」「そうかも」「たしかにー」って感じだったかもしれませんが、コーヒートラベルは要素の列挙だから莉奈もポンポン話せたんじゃないかなと思います。(莉奈のこと見くびりすぎ…?)

【及川の彼女】

最近付き合った彼氏のバイト初日に来るイタさがあったり、嫌なことをその時言えなかったり、結構女の子っぽい女の子なのですが、仕返しするときの抜かりなさが強者のそれで好きです。
別れるときは花の名前教えて消え去るし、自己中メンタリズムみたいな記憶に残りやすい悪口でえぐってくる。粘性のある毒みたいなものを感じます。

最初にバイト先に来た時にへらへらしながら及川の視線に入るところに行って、そのあと真正面になる位置の一番遠い棚にいるの、すごい分かるなと思いました。バイト先に行っちゃいはするけどこっちから近づくのは邪魔っていうのは分かってる。線引きが甘いんだけど一応あるから本人的にもそこまで悪いことしてると思ってない感じがリアルでした。

彼女はイヤだと思っても、言って嫌われるなら堪えた方がいいな、みたいなことを人生の中でたくさん経験してきた子だから優しい及川を彼氏に選んだと思うのですが、「言ってくれればよかったのに」みたいな優しい人の言い回しも自業自得みたいなニュアンスでくみ取ってしまうし「あなたが言ってさえくれればこちらはなんとかできましたよ」みたいな根拠のないもしもの戯言に聞こえて、現実味のない夢の話を語ってきた元カレが浮かんでしまうのかなと思ったりもしました。 
片山はそんな元カレにコーヒートラベルをおすすめしたんだろうな、これが今回のいろんな修羅場の引き金になってしまうのですが。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               

【エニタイム】

この人の感情を推測することはできないけど、レンタルなんもしない人が秀逸でした。めちゃくちゃ笑った。
行動としてはギリギリいなくはない人、、?と思いますが、たまに出るクリティカルな発言が、「こんなこと言える人、もうちょっと普通をわきまえて生活してるでしょ」と思っていしまいます。


他のキャラにも言及したいけどひとまずこれで。

最高に面白くて心が動いた演劇でした。
大阪に来てくださってありがとうございました!


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