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仕事も人もまさに「テロワール」。この場所だからこそ生まれ得るもの

こんにちは。
アートコーディネーターのwakaと申します。
普段は、地域の文化や人の魅力を見つけ出し、
アートやデザインを組み合わせながらそれらを発信する仕事をしています。
そんなわけで、きちみさんの発信をお手伝いさせていただいております。

私は普段、青森県の八戸市に住んでおり、きちみ製麺のある白石市とは、
当然のことながら異なる気候風土や文化を持っています。
故に、白石のその魅力が際立って見えます。
例えば、駅を降り立った瞬間に広がる、木々の緑のグラデーション、
手の届きそうな距離に聳える山々の稜線。
そんな美しい自然の風景を抜けて、きちみ製麺を初めて訪れたのが、
今年の春のことでした。

青々とした山とそこにかかる雲、目で見たらもっと美しい

聞いたことがある「うーめん」という存在

私にはそれまで、「うーめん」には、
「体に良い」という漠然としたイメージと、
「麺が短いパッケージ」という認識程度しかありませんでした。
「白石温麺」という文字の読み方も曖昧で、
「しろいしおんめん」と間違えて読んでいたこともありました。
しかし初めて滞在したその日、どれだけ多様なうーめんの文化があるのか、
白石のうーめんカルチャーが奥深くこの地域に存在しているかを知りました。
それは下記のようなことからも感じ取ることができました。

100年フードに認定された「白石うーめん」。白石蔵王駅前にて。

「常連さん」から感じる文化

現代は、いつどこにいても、物が買える時代。
八戸でも白石温麺が買えるように、
その土地に赴かなくてもほしいものを手に入れることができます。

でも、初めてきちみ製麺を訪れ売店に足を踏み入れた時、
とてもワクワクしました。

「うーめんがこんなにある!」
「ここで作っているものが買えるんだ!」と。
地元の方にしたら当たり前のことかもしれませんが、
なんて贅沢なんだろうと感じました。
そう、それは製造しているその場所で購入できる贅沢さです。

そこに、常連さんたちがやってきて、
贈り物やお土産に商品を選ぶ姿がありました。そして、
今日はこれがおすすめですよ、と声がけするスタッフの姿がありました。

白石が生み出した食文化と、それを介して生まれるコミュニケーションが、
この土地には根付いていることを知りました。

春夏秋冬、このようにしてうーめんを通じて四季を感じてきたのだろうと。

職業としての「テロワール」

丁寧に作られ、お客様へ届けられるのを待つうーめん。かわいい。

もう一つ魅力的だなと思ったのは、
白石の食文化が仕事を生み、人を育むことに直結していることでした。

白石で生まれ育ち、うーめんを身近に感じてきた方々が、
きちみの従業員となり、その文化を100年先に残すために奮闘している。まさにここだからできる仕事、ここで生まれ育った人たちが作り上げる仕事。

少し使い方が違うかもしれませんが、
わたしはこのきちみのあり方そのものが、「テロワールだな」と感じました。
長く勤務されているベテランが多いことも、それを物語っていると思います。

コロナ以降は特に、いつどこにいても、
どんな仕事でもできる時代へと変化してきていますが、
その土地に暮らしてきていなければ生まれない仕事というのが確実に存在します。

土着の文化を守りながら革新を続けるきちみのうーめん。
これからもうーめんを通して、
そんなカッコいい働き方を提案してくれることでしょう。

つづく。

今川和佳子(合同会社いまじむ/アートコーディネーター)