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ビルドダイバーズRe:RISEの感想。死と再生の物語

ついに最終回26話の配信が終わり、完走したビルドダイバーズRe:RISE。ガンプラを主役においた「ガンダムビルドファイターズ」からシリーズ4作品を見ていて感じたことをまとめます。ネタばれが多分に含まれます。

個人的に楽しめなかったビルドダイバーズ(無印)

前作ビルドダイバーズが正直全然おもしろくなかったので、当初あまりRe:RISEにも期待はしていませんでした。

ビルドダイバーズ(無印)が面白くなかったのはとても単純な理由です。主人公に動機や背景がなく薄っぺらいキャラクターだったから。ガンプラ初心者の主人公「リク」が、ガンプラバトルをオンラインでやってしまう仮想空間「GBN」で活躍・成長していくストーリーでした。

素人の主人公が、実は持っていた才能と動機がよく分からないガッツで超短期間でトッププレイヤーに上り詰めるのです。オンラインゲームとガンプラ(模型)という、積み重ねた時間と経験がモノをいう世界で主人公補正をやってしまったのは良くなかった。使っていたガンプラも、ダブルオーとディスティニーという雑な組み合わせが残念でした。対象年齢を下げて新しい購買層を取り込みに行ったのかもしれないですが、成功したのでしょうか?

ストーリー後半になると、GBNという電脳世界にまつわるテーマに進んでいきますが、ヒロインのサラが可愛い以外はあまり見るべきものがなかったです。自分は、序盤はリアルタイムで見てましたが、後半は全話終了後に一気に流して見て「あぁこんな話になったんだ」と思って終わりました。

なぜガンプラがダイブしなければいけないのか

ビルドダイバーズに思い入れできなかったのは、ストーリーだけではなかったと思います。ガンプラバトルを仮想空間でやってしまった弊害が大きかったのではないかと思うのです。

第一作目の「ビルドファイターズ」では、実際に人が作ったガンプラをバトルシステムが読み込み、さらに謎の物質である「プラフスキー粒子」でガンプラを動かしてバトルする、という設定でした。ビルドファイターズは文句なく傑作なので是非見てほしい。

ビルドファイターズではガンプラが実際に動いて戦う、という世界観を作るために「ファンタジー」の要素を全力でぶっこんできます。具体的に言えば「異世界」です。これは、ガンプラという実際に存在して簡単に買えてしまう商品と、ガンプラバトルという現実には体験できないものを結びつけるために必要な設定でした。ただし、あくまでファンタジーは舞台装置であって、その設定を掘り下げることよりも、ガンプラへの愛、主人公2人の友情が主テーマです。そしてファンタジー設定を回収して1作目は完結します。2作目の「ビルドファイターズトライ」は世界観を踏襲しガンプラを実際に戦わせる話でした。作品としては可もなく不可もなくでしたが、ガンプラという商品の可能性を大きく広げました。「ビルドシリーズ」という新たなジャンルを作るという意味では、ここで完結しています。

シリーズ3作目の「ビルドダイバーズ」になると、ガンプラバトルの設定が変わります。人が作った現実のモノであるガンプラを、バトルシステムがスキャンして、GBNという電脳空間でプレイヤーと共に再現します。プレイヤーはアバターを使い電脳空間にダイブして、そこでガンプラに乗り込み戦う。二度手間です。

設定が変わったことで、電脳空間であるGBNで起きるゲーム攻略やゲーム内のバトルが物語の主となります。現実のガンプラをそのままバトルに使わなくなったので、バトルをしてもガンプラが壊れない。ガンプラよりもゲームプレイヤーとしての技術を上げることに時間を費やす。…その結果、前作までは多くの時間を割かれていた「登場人物がガンプラを作る場面」が劇的に減りました。ガンプラで儲けるよりゲームで儲けるほうに力点を置いた、ということかもしれないですが、そのあたりの事情には明るくないので特にここでは言及しません。

個人的には、最近よくあるVRMMOを舞台にしたアニメになったのか(オッサンは視聴者ターゲットから外されたのかな)、という印象でした。ビルドダイバーズを最後まで見ても、作品の表現の幅を広げるため、という理由以外に、あえて舞台を電脳空間にした理由は分かりませんでした。作品中では、キャラクターが無闇にGBNというゲーム空間を礼賛する描写が繰り返されていて「それ、キャラクターに言わせちゃダメだろ」という感覚でした。今でもあれはダメだったと思います。

そしてビルドダイバーズRe:RISEへ

やっとこ話を戻しますが、4作目の「ビルドダイバーズRe:RISE」についてです。ビルドダイバーズRe:RISEは、才能と実績はあるが過去の出来事によって傷ついた主人公の「ヒロト」を中心に淡々と物語が展開されます。ストーリー内外含め、いくつか前作から大きな変更点がありました。

主人公が中学生から高校生になった。久々の無口主人公です。対象年齢を上げています。趣味がガンプラで無口だとただの暗いオタクになってしまいますが、ヒロトは元々は明るい人物たったと語られます。しかし、ついに最終回まで明るさが戻ることはありませんでした。

心の底からガンプラを楽しんでいるキャラクターがいない。ヒロトのチームメイト達もまた、過去に傷や迷いを抱えています。なので、視聴者が求めていたであろう、スッキリ爽快なガンプラバトルになりません。これは、Re:RISEがその名の通り再生の物語だということを開始時点から明らかに示していました。これ、どうやって面白くするんだろうな、と思いましたが、2クールをしっかり使ってちゃんと面白くなりました。

ヒロインがいない。これについては、様々な意見があると思いますが、主人公ヒロトにとってのヒロインは、物語の開始時点で思い出の中にしか登場しない存在になっています。ヒロインのポジションに近いキャラクターは数名登場しますが、ヒロインではありません。ヒロトの幼馴染は、ヒロトの事情を知りつつも見守る役割で姉の立ち位置です。チームメイトのメイがヒロインになるのか?と危惧しましたが、進展しませんでした。当初、ほとんど感情を見せないヒロトですが、ストーリーが進むにつれて徐々に笑顔が戻ります。が、最後の最後まで悲しみは残りました。笑っても、すぐその後に空を見上げてしまう。離別したヒロインへの愛情を抱きつつ、その悲しみは癒えないままストーリーは終わります。別離は解消されず、残り続ける。心の整理はついたように描写されていますが、この先もヒロトは悲しみと共に過ごすのだろうな、と思わせます。

ガンプラ同士のバトルから、ガンプラを使った戦争へ。主人公たちは常に、たった4機の戦力で防衛線・撤退戦・ゲリラ戦を強いられます。これまでのシリーズにあった、対戦相手との交流や友情はありません。正体不明の敵モビルスーツと、ただただ戦い続けます。ゲームがゲームではなかった、これも単独では使い古されてきた設定ですが、ストーリーの進行とともに状況が判明し、犠牲者も出ます。一作目のビルドファイターズと同じくファンタジー要素が入ったことで、今回はストーリーがよりハードになりました。

放送がネット配信になった。地上波と同時配信ではなく、テレビ放送は無しです。これも、上記の変化とあわせて、対象年齢を上げているポイントだと思います。ネット配信になったことで、登場するガンプラの紹介を別の動画(登場人物のカザミが配信している動画、という扱い)に回せるようになりました。アニメ本編から切り出せる要素はコンテンツを分ける戦略でしょう。この方法で、劇中でガンプラを作るシーンが減った前作の問題を回避しました(解決はしてない)。また、ネット配信になったことで視聴者同士のやりとりも生まれます。決して明るくはないストーリーでも容認される舞台を用意したように感じました。

死と再生の物語

Re:RISEは、死と再生の物語でした。死と再生のテーマは、文字が発明されて以降、人類が普遍的に物語のテーマとしてきたものです。特別に珍しくはありません。しかし、今回は数が多い。

イブの死とサラの再生。イブの死とメイの誕生。ヒロトのダイバーとしての精神の死と再生。シドーマサキの死と再生。アルスの死と再生。エルドラの星としての滅亡と再生。エルドラ先史文明の滅亡とELダイバーの誕生。

解釈の幅を広げれば、もっとたくさんあると思います。テーマとしては普遍的ですが、問題はこの量です。ここまで死と再生を描く必要がどこにあったのか、ということ。

最初は、ガンプラ同士を戦わせるガンプラバトルが無くなり、仮想空間のバトルシステムであるGBNが誕生したことから、ストーリー全体を通して「世界の死と再生」をやったのかと思いましたが、最後まで見たことで考えが変わりました。そうか、これは世界を創るプロセスなのか、と。

まだ生まれたばかりで、ルールも秩序もない新世界=GBN。これが真に新たな世界になるための儀式。善と悪の争い(これが前作)。英雄の別離。生と死の概念の定着。新たな生命の誕生。現実の生死(エルドラの新しき民の戦い)と結び付けることで、GBNが本当の世界になる。
この世界を作るプロセスは「神話」と呼ぶのが妥当ではないか。創世の神話ということです。

こうなってくると、この話でのガンダム、ガンプラとは何なのかが気になります。新たに生まれた世界の次の主役はELダイバーで、ガンプラを作る人間でもガンプラでもない。仮想空間の意味付けはできたとしても、結局のところダイブする意味はよく分からない。新たな生命と過去の生命の交流、もしくは交雑?それはこの先また新たなストーリーで示されるのかもしれません。
まぁ、これはただ自分の受け取った感想を書いただけなので、単にミスリードを重ねているだけかもしれないです。当面の今後の展開は人気投票結果をもとにしたガンプラバトルがメインになるようなので、その後のストーリーに期待します。

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