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【詩】オルゴオルと三つ星ダンス


螺子が廻る時 誰もが目覚め
誰も知らない舞台が始まる

何も見えない箱の中
月と太陽だけが輝いて
私を招くの
「舞台で踊ってくれないか」
何も見えないなら躓いてもばれないね
箱の隙間から漏れ出づる闇

幕が上がる 煌めく観客達
誘人の前で静かに踊る

ひとつふたつみっつで足の音 カタカタと
くるくるり 不揃いのステップで
古い映画みたい 不器用な彼女は
暗闇でひとり踊り続ける

どこかで見えた小さなほうきぼし
大丈夫 誰も気付きはしない
月色のパニエだけ ひらひらと舞う様に

「月が綺麗ですね」
ほうきぼしの告白は
回転木馬の渦に消ゆ

「どうか、このまま」
「オルゴールはネジを巻いた分しか踊れない。そうだろう?」
「ああ何て美しい!」
「この世界に光は来るのだろうか?」
「ここに光は彼女だけだ。外のことなら諦めろ」
「ああ何て美しい!」
「その彼女だって舞台の上でしか光になれない」
「ここにいるのは待ち人だけだ。誰もが皆待っているのさ」

言葉を飲み込んだ回転木馬が止まってゆく
一等星の希望たる少女は
その奏で絶えるまで 月の光纏い
ひとりどこまでも踊り続けた

作家修行中。第二十九回文学フリマ東京で「宇宙ラジオ」を出していた人。