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【短編】Starlight Fantasia

「宇宙ラジオ」EX:冬ラジオ

(……あ)
地元の駅周りが、色とりどりのイルミネーションで輝いている。雪の結晶もあればトナカイを形作っているものもあった。もうそんな季節か。するとヒュウ、と冷たい風がぶつかってきて、思わずマフラーに口元を埋めた。みーちゃんがこの時期よくやる癖みたいなものだったのだけど、何故かわたしにまでうつってしまった。ちょっとあざとい感じがするから、自分でやるのは微妙に嫌だ。人がやるのはいいけれど。改めて見渡すと、木々が青いイルミネーションで飾られていた。それを見ると、「青の洞窟」をわたしは連想する。
確かこの時期になると渋谷でやっているイベントで、そこ一帯が青い光に包まれる。わたしは写真でしか見たことがないけれど、森城さんだったら生で見てるのかもしれない。
洞窟の中なら自分も、他の人も、否応なくみんな青く照らされ青に染まる。ここに天神蒼がいたらきっとわからない。全てが青い世界でだけあの人の特異性は消え、神でも何でもないただの人になる。みんなが青い目になるから。
キラキラ光る青い世界に白い雪が降る。天神蒼も花峰さんも、すーちゃんもみーちゃんも森城さんも、吉薙さんでさえも、わたしも、みんなその世界の一部になる。みんなで同じ、青と白の世界を見ている。その煌めきの中できっと「綺麗だね」と言い合い、わらいあっている。さんざめいている。そんな空想を浮かべ、わたしはマフラーの中で、一足先に口角を上げた。

作家修行中。第二十九回文学フリマ東京で「宇宙ラジオ」を出していた人。