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ともにめせんをつくるデザイン

※この記事は、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダーシップコースの授業「クリエイティブリーダーシップ特論」の課題エッセイです。授業では、クリエイティブとビジネスを活用して社会で活躍されているゲストを毎回お招きしてお話を伺います。

2021年9月27日(月) クリエイティブリーダーシップ特論 第12回 ゲスト
大山貴子さん / 株式会社fog代表


サーキュラーエコノミー

大山さんはサーキュラーエコノミーの実践家だ。最近、サーキュラーエコノミーはよく聞く言葉であるが、よく分からないという人が多いと思う。ごめんなさい。自分がよく分かっていない。

昨年、ムサビで行われた政策デザインラボ「サーキュラーエコノミーとデザイン」に大山さんは登壇されており、サーキュラーエコノミーのことを「原材料調達から生産、購入、廃棄するまでのサプライチェーンの川上から川下の全工程において再設計・再定義を行い、全工程において資源を循環しうるモデルに変えていく経済のこと」として説明されている。廃棄物の再資源化だけの話ではない。


elab と fog  

循環型社会の実現に向け、大山さんは様々な活動に取り組まれている。この記事では、elab のプロジェクトと fog で取り組まれた「うんなんローカルマニュフェスト」を紹介したい。

elab では、循環を基本とした日常を「えらぶ」場として、レストラン、ショップ、ラボの3つの機能を持つ拠点を東京都台東区鳥越に建設中だ。最近クラウドファンディングで300万円を集めることに成功した。

「うんなんローカルマニュフェスト」は、島根県雲南市で行われた「雲南市で何か行動していく際に大切にしたい価値観を、10の言葉で表した行動指針」をつくるプロジェクト。

雲南市は地域活性化業界で知らないものはいないほど有名。ローカルチャレンジャーを生み出すおっちラボ、健康的な未来のまちづくりを目指すコミュニティナースなどは雲南で生まれた。コミュニティナースは全国的に展開されている。ちなみに、地域活性化業界なる業界があるのかは知らない。

その雲南で「地域内で資源が循環し、持続的かつ誰もがまちづくりに参加出来る雲南を作る」プロジェクトが新しく動き出し、その第一歩目として、市民の本音から生まれた「雲南で活動を行う際に大切にしたい価値観」を示すことで、市民全体が同じ方向へ進める状態を目指すと記事にある。詳しくは以下のサイトをご覧ください。


共視はビジョン

今回の講義は「大山貴子を解体する」というテーマで、大山さんご自身の生い立ちからこれまでを語られたのだが、学生時代に行ったエルサルバドルのゲリラ農村留学から今まで意識して活動されていることは、「ともにめせんをつくる」デザインだ。これを共視と呼んでいた。現地の人に溶け込み一緒に見るものの調整を行なう。

講義後にムサビCLコースの長谷川先生がこの共視について、大山さんの共視はまさにビジョンであると触れられていた。以前、長谷川先生に別の場所でビジョンについて伺ったことがある。その時の話を交えて自分の理解を整理したい。

ビジョンと言うと夢みたいなもの、かっこいいステートメントをイメージしやすく、ビジョンづくりと言えば夢や妄想を語ろうとなりがちだ。だが、ビジョンは夢物語でなくもっと地に足のついたものだ。もしビジョンが夢であるなら、ドリームという言葉を使えば良い。

ビジョンとは文字通り見るもの。つまり、ビジョンデザインは「同じものを見るためにどう場を設計するか」になる。既にビジョンがあるなら、創業者のビジョンといかに同じものを見るか、見れるかが鍵となる。

では、どういうデザインのプロセスを踏めば良いか。もちろん正解はない。本や論文を読めば色々とあるが、大切なのは以下の3つを参加者の間で徹底的に話して、共有して、情報量を増やしていくことだと思う。

1. それぞれの思い、やりたいこと
2. ケイパビリティ(できること)
3. 未来に対する洞察

情報量を増やしていくと3つの重なるところ、「こういう方向に行けば良い」という一種の確信めいたものが見えてくる。それこそがビジョンだ。逆に見えてこなかったら、恐らくそれは考え方が根本的に異なるので一緒にやらない方が良い結論になる。

という話を長谷川先生に聞いたことがあったので、大山さんの共視がビジョンの話であるというのは、まさにその通りだと思った。

関連して、自分が分かっていない点が一つある。ビジョンデザインは「同じものを見るためにどう場を設計するか」の場づくりと書いたが、大山さんは「場をつくるというより、人の息吹や存在を感じられることが重要。」、長谷川先生も「話している人の振る舞いや存在を知ることが重要。」と話していた。同じことを話していると思う。

これが分かるようで理解しきれてない。ただ、ここは頭よりも実践を通して重要性を感じていく必要がある気がする。それこそ大山さんが実践で得てきた知であるように。共視や息吹、存在。仕事においても研究においてもキーワードとなるのは間違いなさそうだ。

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