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企業の目的が「従業員利益の最大化」だったころ

「日本式経営とは・・人間第一主義」と言ったのはソニーの創業者、盛田昭夫さんですが(盛田昭夫著「Made in Japan」より)、人間第一主義の重要なところは、会社が利益より社会貢献を目的としていた点だったと思います。お金のためだけでなく社会のために働くということが人々のやりがいにつながりました。

私自身、電機業界にいたころ、研究開発を何のためにしてたかと考えたらやっぱり、科学技術の発展のためとか、人々の便利さや幸せのためとか、社会を良くするためだった。それが、従業員のモチベーションを高めていたと思います。人々が誇りをもって働ける職場を作ることが、人々を尊重するということ。それが人間第一主義につながっていました。

利益は生活のためにも社会貢献のためにも絶対必要です。だけど、そればっかりを追い求めると、他人を蹴落としてでも利益を得るという殺伐とした社会になっちゃう。社会の公器と言われた企業の多くの人々が、社会をよくするためにがんばろうと思ってたのって、素敵な社会だったんじゃないでしょうか。

日本的経営には別の定義もあります。『協調的な労使関係を基盤にして、従業員利益の最大化を目指す経営』です(橘川 武郎, パトリック・フリデンソン著「グローバル資本主義の中の渋沢栄一」)。人間第一主義の別の見方というわけですね。会社が従業員利益を最大化していたからこそ、従業員は社会貢献を目指すことができました。そんな時代は80年代までですかね。会社は誰のものと訊かれたら従業員のもの、と答えていた時代です。

今は株主資本主義で、会社は株主のもので、会社の目的は「株主利益の最大化」です。従業員がどんなにがんばって利益を増やしても、株主が全て持って行くこの仕組みは、とても封建主義的です。領民がどんなにがんばっても領主が持って行ってしまいます。
株主の方を見なくていいわけじゃないけど、もう少し従業員の方を向いて欲しい、日本的経営を思い出してほしい。バブル前の日本型経営を全否定する必要はないと思うのです。

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