とてもキレイな箱庭で・・・映画「きみの色」
9月×日
HUMAXシネマ渋谷で「きみの色」(山田尚子監督)
三人の高校生がバンドを組む話(はしょりすぎかな)。
色がキレイだとか、人の動きの描き方が繊細だとか、そういうことはあるけれども、映画として面白いかというと、あんまり面白くなかった。
あまりにもキレイで微温的で・・・。
いや、わかるんですよ、あえてそうやっている、というのは。
大人への反抗とか、
友人との気持ちの行き違いとか、
自分にもコントロールできない感情の爆発とか、
そういういかにも青春映画的なものをあえて避けているのだということはわかるのだが、じゃあそれで面白くなるかというと・・・。
別に盗んだバイクで走り出せ、と言いたいわけではない。
言いたいわけではないのだが、ちょっと間違えばそういうことをしかねないふつふつとしたエネルギーみたいなものは、やっぱり必要・・・必要と言うか、「在る」んじゃないかな、いつの時代でも。
それを明確には描かないにしても、もうちょっと感じさせてくれたらよかったんだが・・・、少なくとも私には感じ取れなかったな。
もっとも私はアニメ映画に関しては正直よくわからないので、なにか見当はずれなことを言っている可能性はある。
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アニメ映画と実写映画は、全くの別ものだ。
一番の違いは作品の中に含まれる夾雑物・・・ノイズの量だろう。
実写映画の方が圧倒的にノイズが多い。
実写映画には作者(それが監督であれ脚本家であれプロデューサーであれ)にコントロールできないノイズがあふれている。
どこかの街角でロケをすれば、作者にはコントロールできない膨大な量の情報がスクリーンに映り込んでしまう。
人間を写せば、そこには作品とは何の関係もない人生を背負った人間がスクリーンに映し出されてしまう(どんなに「なりきり型」の俳優であっても、あるいはまったくの素人であってもそれは関係ない)。
そんなノイズの中で、
というかそんなノイズを使って織りあげられるのが実写映画である。
それと比べるとアニメ映画は比べ物にならないくらいノイズが少ない。
画面に映るすべてを作り手がコントロールできるアニメ映画は、実写映画とはほとんど別のジャンルの芸術だと言ってもいい。
たまたま興行的に同じくくりにされて、同じ映画館で上映されるのでこっちも同じような感じで実写映画も見ればアニメ映画も見るけれども、本当は全く違う見方/批評の仕方が必要なんじゃないかと思う。
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私は実写映画については、まあなんとなく自分なりの判断基準みたいなもの・・・他人に何を言われてもそう簡単には揺るがないようなものはあるけれど、アニメ映画に関してはそういうものはない。
というかアニメ映画のノイズの少なさ自体があんまりピンと来ない、と言った方がいいかも。
この「きみの色」に関しても、ノイズの少ない、とても丁寧に作られたキレイで繊細な箱庭みたいな作品だな、という以上の感想が持てなかった。
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