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あるバンドの記憶

昔、2回だけライブを見たバンド

もう30年以上前に、2回だけライブを見たバンドのことを書こうと思うのだけれども、正確な記録ではもちろんないし、全然間違っていることを書くかもしれないし、甘酸っぱい青春のエピソードなどかけらもない。
最近、色々なものの名前がパッとでてこない、なんてことが多くなってきた人間の、記憶の切れ端みたいなものだ。
何しろ、さっきちょっと実際の記録を検索して見ただけで、重大な記憶違いが判明した。
そのバンドを初めて見たのは渋谷の映画館で行われたコンサートで、当時大学生だったぼくは(大学は東京ではなかったので)、夏休みで東京に戻ってきている時にそのコンサートに行った、と記憶している。開場時間よりかなり早くついてしまい、うだるような暑さの中、近くの公園で時間をつぶした記憶がある。
ところが今そのコンサートの記録を見ると、開催されたのは3月になっている。
どこかで記憶が混線してしまっているのだろうか。
このまま色々調べていくと、なにもかも間違っていた、なんてことになりかねないので、もう事実を調べたりせずに、記憶のまま書いていきたい。

アトミックカフェフェスティバル

そのバンドを最初に見たのは、さっきも書いたが渋谷の映画館で行われたオールナイトコンサートだった。
 「アトミックカフェフェスティバル」というコンサートで、反核・反原発の理念のもとに開催された、みたいなやつだったが、ぼくはあんまりその辺に興味があったわけではなく、いろんなバンドが出るから行ってみようか、という程度の認識だった。
憶えている出演者は、ガールズバンドの草分け的存在のZELDAとか、ケラ(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)率いる有頂天とか、スタークラブとかルースターズとか。
ぼくの一番の目当てはルースターズだった。たしかボーカルの大江慎也が抜けたばかりで、カリスマ的な人気のあった大江が抜けた後のルースターズってどんな感じなんだろう、と思って見に行ったのだった。
そしてルースターズを含め、色々なバンドを見た中、一番印象に残ったのは、それまで全然知らなかったバンドだった。
ボーカル・ギター・ベース・ドラムス、というシンプルな4ピースバンドだったが、まずびっくりしたのはボーカルの男が全裸でステージに飛び出してきたこと。
後ろのほうの席だったからはっきり見えたわけじゃなくて、あれ?服着てない?って感じだったが、場内がどよめいていたからやっぱり全裸だったんだと思う。何曲やったかは忘れたが途中で服を着たという記憶もないので、ずっと全裸だったんじゃないだろうか。
曲調はシンプルなロック。
そして、なんだろう、「大きく口を開けて歌っています」というような、なんのてらいもない明朗なボーカル。
ぼくの音楽の趣味としてはもっと屈折した感じとか、皮肉な感じとか、あるいはもっとブルースよりの曲調とか、の方が好きだったのだけど、そのバンドの、なんだかすごく分かりやすい迫力に、趣味とか好みとかを越えて圧倒されてしまった。
絶妙な変化球が良いよなあ、と言っている奴がど真ん中のストレートにほれぼれさせられてしまう、みたいな・・・
なにしろ「ボーカルが全裸」という強力なギミックよりもそのバンドの音楽の方が記憶に残っているのだから相当なものだ。

新宿ロフト

あのバンド、もう一度見てみたいな、と思い、どこかでライブをやっていないかと情報誌で探した。
インターネットなんて無い時代。情報を得るのは雑誌からだった。
「ぴあ」それから「シティーロード」、そんな雑誌で調べて、新宿ロフトでライブがあると知って行ってみた。
ワンマンライブではなく、3つのバンドが出て、トリがそのバンドだった。
ライブハウスで聞くそのバンドの音はさらに迫力が増して聞こえた。
ギタリストが歌う曲もあり、てらいのない直球勝負という点は変わらないものの、また違う味があって良いアクセントになっていた。
曲の途中でボーカルが嬉しそうに「今日はチャーミーが来てくれてるんだ」と言ったのを憶えている。見ると客の中に、確かにラフィンノーズのボーカリストの顔があった。

そのバンドの名前

ブルーハーツというそのバンドは、その後まもなくメジャーデビューし、すぐに超がつくほどの人気バンドになったが、そのあとは一度もライブには行かなかった。
すごく人気が出てチケットが取りにくくなったのもあっただろうし、
スゴイな、と思ったとはいえ、結局ちょっと自分の趣味ではない、というのもあったのかもしれない。やっぱり俺は切れのある変化球が好きだなあ、とかね。


そんなわけで、今でもブルーハーツというと、あの渋谷の公園、うだるような暑さの中、時間をつぶしていた時のことを思い出すのだ。

って感じで締めようと思っていたんだけど・・・
そうか、3月かあ・・・
うだるような暑さのわけがないよなあ・・・

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