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東京都復興記念館(その1)

防災の日から一か月くらいたったある日、ふと思いたって東京都復興記念館に行って来た。

両国にある、関東大震災の資料・被災品や写真などを保存・展示している建物。第2次世界大戦後は東京の空襲の資料も追加で展示されるようになった。

関東大震災に関して興味を持ったのは、好きな作家・・・岡本綺堂、内田百閒・・・などが震災を経験し、そのことについて書いているのを読んでから。
特に、ちくま文庫「文豪怪談傑作選」というシリーズの中の「妖魅は戯る」という巻には、巻末に「文豪たちの九・〇一」という形で四人の作家の関東大震災に関する文章を収録していて、これがとても面白かった。
作家は寺田寅彦・内田百閒・田中貢太郎・岡本綺堂。
やはり実際に経験した人の話というのは興味深い。


さて、東京復興記念館だが、前に一度行ったときには、思ったより小さな建物だし、ずいぶんしょぼい展示だな、と思った記憶がある。
しかしずいぶん昔のことで、その頃はまだ関東大震災に対する興味もほとんど持っていなかったので、もう一回行ってみることにしたというわけ。

最寄り駅は両国。
西口を出て両国国技館の横を通って江戸東京博物館の方へ。

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江戸東京博物館の所で左に折れてちょっと歩くと東京都慰霊堂の塔が見えてくる。

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この慰霊堂は関東大震災の被災者の遺骨を納めるための霊堂として震災の7年後の1930年に建てられたもの。
設計者は伊東忠太。
築地本願寺を設計したことで有名な建築家だ。
築地本願寺はインドっぽい様式で有名だが、この慰霊堂もなんとなくエキゾチックな雰囲気がある。

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伊藤忠太は妖怪/怪獣好きということでも知られている人らしく、慰霊堂の内部の照明は怪しげな獣が抱え込んでいる。

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東京都復興記念館は慰霊堂の付帯施設として1931年に建てられた。

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設計者は、Wikipediaには伊藤忠太と佐野利器との共同設計と書かれているが、今回開かれていた特別展「復興記念館~その軌跡をたどる~」のパンフレットを見ると、どうもそうとは言い切れないような感じ・・・Wikipediaもそんなにあてになるものでもないしな。
しかし設計したのが誰だったとしても、慰霊堂との調和というのは考えられたらしく、復興記念館の外壁にも怪獣がいる。

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復興記念館の外側には震災に伴う火災で変形してしまった車や鉄骨などが展示されている。

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復興記念館の前に大勢の小学生が整列しており、嫌な予感・・・。
開館時間になると案の定、ぞろぞろと記念館の中に入っていく。
まいったな、と思いつつも小学生たちの後から記念館の中に。

記念館に入ると正面になかなか重厚感のある階段が。

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小学生たちはやっぱりうるさい。
小学校3,4年かな、という子たちで、この年頃の子供はもっと楽しい場所に連れて行ってあげればいいのに、と思ったがまあ仕方がない。先生らしき人に「うるさくてすみません」とか言われてしまってかえって恐縮した。
タブレットみたいなもので展示物を撮影している子供が大勢いて、時代を感じる。
ちょっとうるさいのを我慢して展示物を見ているうちに子供たちはもう見終わって出ていったのか静かになった。
まあそんなに大きくない建物なのでさっと見たらすぐ終わってしまう。

1階2階とも、真ん中に展示室があり、その周りを通路が囲んでいる形。

2階の展示室。
壁には震災を描いた絵画、室内には復興に関係した模型など。

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前に来た時は、なんか地味で古めかしいな、としか思わなかったが、今回はこれはこれで悪くないな、と思った。
木張りの床がキイキイ音を立てるのも、趣があると言えばある。

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2階の通路の片側には東京空襲に関する展示が。
これは前に来た時にも思ったのだが、蛇足、という感じがする。
どうしても関東大震災がメインで東京の空襲については「ついで」という感じがしてしまう。
もともとは慰霊堂も復興記念館も関東大震災の被災者の慰霊と復興の記念の建物。
第二次世界大戦中の東京空襲の身元不明の死亡者を慰霊堂に合祀することになったため、記念館にも空襲の資料を展示するようになったらしいのだが、地震と戦災ではまったく性質が違う災害だし、それぞれきちんとした展示がされるべきで、「復興の記念」ということで強引に一緒にした印象がぬぐえない。

1階へ

1階は主に写真や遺品等。

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(皇居前広場に避難した人々)

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(交番に貼られた伝言の張り紙)

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(尋ね人係ちょうちん)

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(1階通路)

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(1階通路のステンドグラス)


前に来た時も印象的だったのが竹久夢二の絵。

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震災後の東京の様子をスケッチし、文を添えて「都新聞」(現在の東京新聞)に連載されたもの。
入口で本にまとめたものを売っていた。
竹久夢二「東京災難画信」(画は旧字体)
1000円也。
慰霊堂も復興記念館も入場は無料なので、入場料代わりに購入。

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久しぶりに来てみたが、今回は面白かった。
展示自体は前に来た時とそんなに変わってないと思う。
前回の印象が悪くてハードルが下がっていたから、と言うのもあるのかもしれないが、結局こちらの興味の問題のような気もする。


あ、あと入る時は気が付かなかったが、建物を出る時、正面扉がカッコイイことに気が付いた。

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