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映画「ブラック・フォン」のこと、原作者ジョー・ヒルのことなど、

TOHOシネマズ新宿で「ブラック・フォン」(スコット・デリクソン監督)
これはなかなかの佳作。
(ただ、ホラーが苦手、あるいは残虐なシーンは一切駄目、と言う人にはお勧めしない)

ほとんど前情報は知らずに、ホラーらしい、ということとタイトルだけを知っている状態で見に行ったのだが、タイトルがちょっと気になっていて、それでオープニングのクレジットを注意して見ていた。
そしたら「ジョー・ヒル」の名前が出てきて、ああやはりジョー・ヒルの「黒電話」の映画化なんだ、と。

ジョー・ヒルはアメリカの小説家。
大ベストセラー作家であるスティーブン・キングの息子。

初めて読んだのが「20世紀の幽霊たち」というデビュー短編集で、これは「珠玉の」という形容がふさわしい傑作だった。
純然たるホラーから、純文学といっていいような作品まで幅広く、しかしどの作品にも奇妙な魅力に満ちていた。
これはすごい作家だな、と驚いてその後に発表された長編も何冊か読んでみたが、長編の方はつまらなくはないけれどちょっと冗長な印象で、「20世紀の幽霊たち」には遠く及ばないと感じた。

でも「20世紀の幽霊たち」という短編集1冊だけで、もうお父さんを超えたのでは?と個人的には思っている。
(もっともスティーブン・キングに関しては有名な作品を何冊か読んだだけなので見当はずれかもしれない)
世界的に知られているベストセラー作家の息子として生まれた人間が作家を志すというのはなかなか大変だろうなあ、と思う(当初はキングの息子であることを隠していたらしい)が、これだけ質の高い作品でデビューするのはすごい。

「黒電話」はその「20世紀の幽霊たち」に収められた短編。
ごく短い話で、だからこの映画は「黒電話」の映画化というよりは、「黒電話」をBased on(基にした)映画という感じだと思う。

何人かの少年が誘拐されて行方不明になる事件が続けて起こっている中、主人公の少年も誘拐されて地下室に閉じ込められてしまう。
どうやってそこから逃れるか、というストーリー。
原作の不思議な雰囲気を出せているとは思えないが、その代わりに、少年少女を描いた映画としてなかなか魅力的なものになっている。
1970年代のアメリカ。
それほど裕福ではなさそうな地域の少年少女たちの描写がとても良い。

地下室から抜け出そうと一生懸命がんばる主人公の少年も、兄を助けようとがんばる主人公の妹も、誘拐された他の少年たちも、皆それぞれ魅力的だ。

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