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ヤンキーになれなかった話

中学生のとき、ヤンキーに憧れた。
勉強でも運動でもとにかく上を目指すのが当たり前だった時代、スクールカーストの上のほうにはヤンキーがいた。

中流階級の無干渉でもない親がいる家庭に育った私には、ヤンキーになるのは難しかった。
ヤンキーになるには、化粧や髪、服装も重要だ。それはできる範囲でなんとかなったが、あとは時間だ。
ヤンキーは夜に遊ぶ。もちろん私の門限は早め。7,8時が限界だった気がする。友達の家に泊まりに行くと言って夜中まで遊んだ。親がいつ帰ってくるかわからない家、だしっぱなしの毛布で朝方に寝た。
泊めてくれた友達は、そのうち急に学校に来なくなった。

私はヤンキーが羨ましかった。自由で強くて、上だと思っていた。
ただ、私のことを嫌うヤンキーもいた。私は恵まれていたし、勉強もできたし、見た目もそんなに変えずに、幸せそうだったからだと思う。ヤンキーに必要な影の部分が足りなかった。門限が早いと、なぜもっと自由な家に生まれなかったのかと思ったこともある。

結局私はヤンキーにはなれなくて、部活と勉強に打ち込んだ。


大人になって、学年の中でもかっこよかったヤンキーに偶然会い、「きれいになったね。」と言われた。その子は結婚して、少し太って、少し影のある表情をしていた。中学生のときの私が、ヤンキーに憧れたような眼差しで、私のことを見ている気がした。

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