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映画『クール・ハンド・ルーク』同時視聴祭

初ドミューン。
渋谷パルコ、映画館の一つ上にスタジオはあった。
DOMMUNEの名前はよく耳にしていたし、たまに見てもいたのだが、最近Amazon独占配信のポッドキャスト「DOMMUNE RADIOPEDIA」を発見して、これから過去回を聴き漁っていこうと思っていたところ。

映画『クール・ハンド・ルーク』(1967)は、ピーター・バラカン氏が最も好きな映画と公言している一本。
その愛ゆえに、内容とかけ離れた意味の邦題は決して口にしないという。
そのこだわりに敬意を表し、私もここでは原題で表記させてもらう。

昨夜行われたイヴェントはこの映画の同時視聴祭、要はウォッチ・パーティという形式。
会場及び配信で各自一斉に再生しながら、ゲストたちの会話を副音声的に楽しむもの。
こういった鑑賞方法も実は初めてだった。

映画に関しては今最も信頼している町山智浩さんの企画ということで期待していたのだが、ちょうど近辺にいて直接会場で参加できる時間帯だったので当日申し込みで行ってみた。

おかげで控えめに言っても至福の体験、と同時に改めて自分の生き方を根本から見直せと胸ぐらを掴まれたかのような、天啓に打たれた一夜となった。


そもそもこの映画を最初に観たのは、恐らくほぼ10年前の別イヴェント。
それもやはりバラカンさん関連で、原宿のお店での上映会だった。
自分としてはそれ以来の2回目で、そのことをバラカンさんに伝えられて満足であった。

自分が学生の頃からラジオを通じて追いかけていたDJバラカン氏と、なんだかんだでここ10年ぐらいは触れ続けている町山さんとのやり取りは、基本的にどの話をされてもついていけるので聴いているだけで楽しく、今まで音楽と映画が好きで本当に良かったと思わせてくれるものだった。

音声は上映後のトークも含め、翌週火曜にポッドキャスト配信されるそうなので、ここで細かくは書かないが気になる方はそちらをぜひ。

「このシーンが良くて」とか「ここは隠された意図があって」とかワイワイやりながら、ついでにチビチビ酒も飲みながら、やっぱり楽しいもんです。

上映中も脱線話が多かったが、アフタートーク部分はさらにその先へ。
バラカンさんのロンドン時代や来日してすぐの時期など、思い出話で盛り上がる。
人と人がいろんなところで繋がっているのが面白い。
話題に上がっていたカズ・ウツノミヤさんについては、町山さんが直前にリンクをツイートしていて、何気なく目を通していたのですんなりと話に入っていけた。
10年以上前のインタビューだが、まだ読めるのでここでも貼っておきます。


私は世代もあってか、最初に音楽を真剣に聴き始めたきっかけの一つがニルヴァーナ。
自分が興味を持ったときにはすでにカート・コベインはこの世を去っていたのだが、影響を受けたなんてものではなく、ギターを買ってバンドスコアも揃えて、できるだけ似た音になるようにエフェクターで歪ませながら、シャウトを真似して叫び声を上げていた。
そういうこともあって、感慨深さはひとしお。
これまでの蓄積してきた点と点が不意に繋がり、線となる瞬間がいくつもあった。


それにしても肝心の映画は、主演ポール・ニューマンが体現する生き様があまりにも芯を食っているというか本質的な問いを投げかけており、自分自身の弱さと情けなさとの大きすぎる距離にうなだれてしまうほど。こんなかっこいい大人にはなれそうもない。
苦役のような人生であっても、腐らずにやっていけるか。
不条理な状況が続いても、屈することなく自分の態度を貫けるか。
諦念を抱えながら日々をやり過ごすだけの人たちの中で、自分だけは一人不敵な笑みを浮かべる余裕を最後まで失わずにいられるか。

寓話のような、それもきわめて宗教的な、という評もされていた中で、同時にこれ以上ないほど人間臭く、人懐っこい人物像を確立している。

後年まで語り継がれるぐらいの名台詞も多く、その辺りも音声配信も併せて確認してほしい。

また機会を作って、何度でも観たい映画だ。

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