見出し画像

2022年間ベストアルバム / Best Albums of 2022

先日の「熊谷悠一アワー」でも放送した2022年間ベストアルバム。
こちらでもまとめておきます。
順位はなく、ABC順です。
ここでも各アルバムからの推薦曲を一つ貼り付けておきました。参考までに。でも、どれも他にも優れた曲が多数収録されている作品です。

May Erlewine 『Tiny Beautiful Things』

アメリカはミシガン州出身の自作自演歌手。
いくつかバンド名義の作品もあり、それらも含めると15年ほどは活動しているようだ。
自身名義の今作で初めて知ったが、とにかく曲が良い。特にメロディ。
丁寧に紡がれた全10曲は1つとして無駄がない。
素朴ながら温かみのある声と的確な演奏、音楽とはそれだけで十分なのだと言い切りたくなる。
文字通り隠れた宝石とでも形容したくなる人。過去作も聴き進めてみたい。




Jake Xerxes Fussell 『Good and Green Again』

伝統曲を解釈し、現在に復活させる。ノース・カロライナ拠点、4枚目の作品。
本人の歌とギターを中心とした、これぞフォーク音楽という佇まいながら、管楽器なども効果的に加わり彩りもある。
普段着そのままという感じの全く飾らない人で、生活に根ざしたところから出てくる音楽なのだろうなと想像させる。
朴訥としている歌声ながら、妙に心に刺さる。




Natalia Lafourcade 『De Todas Las Flores』

ここ何枚か、自身の出自であるメキシコの音楽を追究する作品を出していたようで、自作曲でまとめたアルバムは久し振り。
音楽家として器の大きさを聴き取れる歌と、全体に尺を持たせ、ゆったりとした演奏に余裕が感じられる。
今どき珍しく全12曲で1時間を超える量だが、最後まで聴き入ってしまう洗練度の高さ。
伴奏に徹したギターMarc Ribotの確かさ、まだ20歳というピアニストEmiliano Dorantesの貢献も光る。




Miranda Lambert 『Palomino』

9枚目のアルバム。カントリー界では人気・実力共に最高位とされる一人。
私としては今一番カッコ良いロックとして愛聴した。
ほぼ全曲を共作、作曲能力の確かさも証明している。
1曲だけMick Jaggarのカヴァーがあるが、原曲の持つゴスペル的な迫力をより引き出している点でこちらに軍配が上がりそう。
前作『The Marfa Tapes』は意図的に生々しい録音方法だったが、そこから再演の3曲も含め、ここではきっちりと完成形を提示。
ほとんど白人しかいないライヴ風景に面食らわないわけではないが、カントリーもアメリカ音楽における柱の一つ、ジャズ、ブルーズ、ソウル、ヒップホップなどに並ぶ表現形式だと捉えていて、日頃から分け隔てなく接しているつもり。




Anaïs Mitchell 『Anaïs Mitchell』

私の狭い趣向と限られた経験からだが、現在進行形で最重要ソングライターの一人と位置付けている人。
もっと柔らかく言えば、今はこういう音楽が一番好み、というだけかもしれない。
自身の名義としては10年振りだが、3人組のバンドBonny Light Horsemanも同時進行させており、2枚目のアルバム『Rolling Golden Holy』も今年出している。やはりそこでも、この人が書いて歌う曲が最も好き。
どこか可憐でありながら芯の強い歌声に魅了され続けている。




Hannah Rarity 『To Have You Near』

イギリスやアイルランドで今でも伝統音楽を受け継ぐ人たちが生まれ続けていて、それらも今、私の最も惹かれる種類の音楽となっている。
グラスゴーからのこの人は伸びやかな歌声がとにかく素晴らしい。天賦の才と言える。その魅力を引き立てる弦などの編曲も秀逸。
アルバムとしては2枚目のようで、いくつか伝統歌も取り上げているし、トム・ウェイツのカヴァーもある中、自作曲も優れている。




Jimetta Rose & the Voices of Creation 『How Good It Is』

今のソウル、あるいはゴスペルと呼べる、歌の持つ力に身を委ねられる傑作。
同時にヒップホップ以降の現代的な感性も内包している音作り。
Sons and Daughters of Liteというグループが唯一残した40年以上前の作品に影響を受けているようで、そこから2曲取り上げている。
もう1曲のカヴァーはRoland Kirkだし、Funkadelicを下敷きにした曲もある。
よって自作曲も同趣向で、ブラック・ミュージックの一番カッコ良いところなのではないか。
Jimetta Roseは今年ソロ名義でもう一枚出しており、そちらも聴いてみようと思っている。




Oumou Sangaré 『Timbuktu』

世界的な評価を得て久しい、西アフリカはマリの歌い手。
今作はWorld Circuitから。発売数は極端に少ないが、出す作品はどれも名作という音楽レーベル。
そういうことで聴く前から内容は確約されていた。
全曲を書き下ろし、制作も手がけているので、主役の意図通りに録音できたのではないか。
伝統的な楽器を基調にしつつ、スライド・ギターなども配置し、うまく融合させている。これにより、広く訴えかける可能性を獲得しているだろう。




Kae Tempest 『The Line Is A Curve』

ロンドン拠点、4枚目。一つ前の2019年作『The Book of Traps and Lessons』に続いて選出。
元々は、リズムに合わせて詩の朗読(ポエトリー・リーディング)と言える表現形態だったが、今はもうラップ/ヒップホップの範疇で語られている人かな。
前作までKate Tempestと名乗っていたが、ノンバイナリー(自分の性自認が男性・女性という性別のどちらにもはっきりと当てはまらない、または当てはめたくない、という考え)であることを公表、名義も改め、髪型も大きく変えての新作。
もう少し英語が聴き取れれば…と悔しいのだが、このヒリヒリとした緊迫感は如実に伝わる。
普段この種の音楽に触れていない自分のような人間にも、音も声も切実に迫ってくるものがある。




Molly Tuttle & Golden Highway 『Crooked Tree』

気心の知れたバンド仲間たちなのか、Golden Highwayという名義で録音。
カヴァー作を挟んでの、3枚目かな。
当初からギターの名手として評価が高かったが、自身のルーツに向き合った今作で一気に飛躍。
まさに水を得た魚の如く、溌剌とした歌と演奏が全編にみなぎっている。
Jerry Douglasとの共同制作。
ゲストも豪華なのだが、本人が最も輝いている。
いま最高の状態にあると言えるでしょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?