収録日記:2024/02/07

冷え込みは続いていて、まだ路肩に雪が残っていた。
自転車で滑ったりしたら危険極まりないので、踏まないよう注意を払いつつ局まで走る。

2月11日放送分を収録。
「熊谷悠一アワー」と当時の担当者に命名してもらって、週一になってから305回目。
もう冒頭で話すネタはとっくに尽きている。枯れ切っている。

曲間の喋りも、どんどん短くなっている気がする。
必要最低限の情報のみ。
以前、駅の構内放送みたいだな、と自分で思ったことがある。
「次は渋谷駅、○○線はお乗り換え。○番ホームから、何時何分発です」というようなアナウンスに限りなく近い。
「次は新作の紹介です。2年振り3作目。先行シングルにもなっているこの曲が聴きやすいです。ミュージシャン名&曲名」
業務連絡か。
相変わらず愛想がない。

専門用語だったり、固有名詞はできるだけ省くようにしている。
初めて聞いてみるという人を常に意識しているつもりなので。一見さん大歓迎。
そう、マニア向けの話はアフタートークみたいな括りで、別枠で録ろうかなと思っていたりする。一人語りになっちゃうけど。問わず語りか。それのためにスタジオは使わせてもらえないだろうなぁ。


今回は追悼の意を込めて、番組史上最狂にうるさい曲を用意した。
勝手に師と仰いでいるピーター・バラカン氏はかけないであろう、そしてやはり紹介しなかった種類のものだ。
であれば、僕が取り上げるしかないでしょう。
高校生の頃だったか、夢中になったアルバムだった。
先にここだけでネタバレしちゃうとMC5のデビュー作ね。
この機会に聴き直してみて、いまだにヘッド・バンギング (※注:曲のリズムに合わせて激しく頭を上下に振る反射運動のこと)しながら本気で聴いている自分がそこにいることに呆れ半分、諦め半分だった。
40歳を越えても、まだ熱く反応できるのだなぁ。
三つ子の魂百まで、か。
死ぬまでロックに囚われたままなのだろうか。
60歳を越えたらどうだろう?
試してみても面白いかもしれない、そこまで生きていたら。


この番組は55分枠で、だいたい9曲を丸々かけられるので、毎週9脚の椅子が置いてあって、誰に座ってもらうかというイメージで作っていく。というか一つずつ埋めていく。
その都度、新作であったり、ライヴや映画、イヴェントなどに絡ませたりと、情報は探せば探すほど飛び交っているので、誰がやって来るかは自分にも予測できない。
その意外性が面白く、だからこそ飽きずに続けられている。
いただくリクエストも今のところ知らないものばかりで、守備範囲を広げる良いきっかけになる。

例えば今週も、ジャマイカのルーツ・レゲエから始まり、前述の元祖パンク・ロック、カントリーとソウルの間ぐらいの新人歌手、1980年代ソウルの名盤、1990年代の当時革新的だったグループ、コロンビアからの新鮮な才能、チリ人のラッパー久々の新作、アメリカ人サックス奏者、イスラエル出身のピアニストと、こういった並びは予測だにできなかった。
自分でも、「この人の頭の中はどうなっているのだろう」と思う。

でもどこかで縦糸というか、目に見えなくとも全体を貫く一本の線みたいなものを感じてもらえたら嬉しいな。
そんなものがあるのか分からないけど。


来週の中身はどうなるのでしょうね。また一から組み立て始めるのだけど。
毎週の金曜に新譜が解禁される。次は2月9日。
すでに数枚、楽しみな作品が控えており、そのさらに翌週も何枚か期待できそうなものが。
発売が待ち遠しいアルバムがある、こういう感覚も高校生の頃と変わらない。

最近、町山智浩さんがラジオだったかYouTubeだったかで、「人は中学生の頃ぐらいから本質的には変わらない」という主旨のことを言っていて、もしかしたらそうかもしれないな、と私も思い始めている。

考えていることは高校生のときから大して変わっていない。
もちろん、他のいろんなことは変わっていってしまったけど。


自分の番組は、ひいては自分の人生はどこに行くのだろう?と途方に暮れることがある。
でも多分、どこにも行かないのだろうな。
ずっとここにある。
今ここに存在し続けるのだろう。
生きている限り。

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