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教育ダッシュボードのつくりかた② ~カスタマージャーニーマップをつくろう~

前回に続き、「教育ダッシュボードのつくりかた」の2回目です。
一応、4~5回見込みの長い記事になってしまいますが、まなびポケットのダッシュボード機能をつくる過程で得た気づきなどをできるだけ共有していきたく、そうなると色々観点あって長くなり、、
本来は自社の競争優位のために公開しない情報だったりするので、珍しがっていただき、お付き合いいただけたらと。

ちなみに、まなびポケットのダッシュボード機能については、以下でウェビナーをやることになっています。
noteで不明点あれば、以下のウェビナーでガンガン投げつけていただければ、基本なんでも答えるつもりです。興味・疑問・苦情などなどあれば、是非ご参加くださいー

前回のおさらい

ちなみに前回の第1回はこちら。

5行で書くとこんな感じですかね。

記事の反響やコメントでは、「先行指標が重要」という点で興味深いと言ってくださる方が多かったのが印象的でした。
ちょうど先週のNHKスペシャルで、衛星画像での夜の光の強さと密度が、その国のGDPと強く相関することが紹介されていたりしていました。これもある意味で先行指標ですね。

夜明るいということは景気が良い、という直観でも分かりやすい指標です。
その国における日々の街の夜間光量を計測しておけば、3か月に1度のGDPの発表を前に値が予測できるとも言えます。
ぐふふ、これを参考にGDP発表日にデイトレードをすれば大儲けできそう。

脱線したので、話を教育ダッシュボードに戻します。

ボトムアップでダッシュボードの要件を考える

前回がトップダウン、例として教育振興基本計画から考るアプローチをしてみましたが、今回はボトムアップ、ダッシュボードの利用者の視点で要件を考えてみます。

ダッシュボードってEBPM(エビデンスに基づく政策立案)目的もあれば、現場で日々役に立つものであることも求められるはずで、恐らく多くの自治体・学校ではその両方を兼ね備えたものを求めるのだと思います。
前者目線でのトップダウンアプローチ、後者目線でのボトムアップアプローチということで、どっちの要求獲得・整理もしておく必要があります。

ダッシュボードの利用者も、その立場によって目的や用途が変わってくるはずです。主な利用者を区分すると「児童生徒」「先生」「学校管理職」「教育委員会」「保護者」になってくるのでは、と思っています。
ざっと違いを書いてみるとこんな感じでしょうか。

児童生徒や保護者は、原則自身のデータを取り扱うのに対し、先生は担当するクラスや学年、学校管理職は学校全体、教育委員会は管轄する全ての学校のデータを取り扱うこととなります。取り扱うデータの範囲が広くなっていくことにより、見とるデータの深さも広いと統計的なものにならざるを得なくなってきます。
また、活用方法についても児童生徒や保護者などは、振り返りや状態の把握などでの活用が多くなりますが、学校管理職→教育委員会となっていくほどデータを分析する活用が多くなってくるはずです。

上記はあくまで傾向なので、必ずしもそうでない場面もあるかと思います。例えば、特定の生徒の重大な問題などが教育委員会の方にエスカレーションされて対応することもあるはず。その場合は対象生徒の状況を深く確認することが求められることが考えられます。
この辺考えていくと、それぞれの役割の方々の具体的な行動や業務が分からないと、ダッシュボードの要件がつくれません。

なので、各役割ごとのカスタマージャーニーマップ的なものをつくっていきます。

カスタマージャーニーマップとは?

カスタマージャーニーマップって馴染みない人の方が多いのかも、です。商品の企画時などのマーケティング時に使われる手法で「顧客の行動がどのように変化し、商品購買や利用に繋がるのか」をまとめたものです。
具体的にはこんな感じです。

カスタマージャーニーマップとは?目的・作り方・事例を徹底紹介!より

顧客の状態が「認知」→「興味」→「検討」→「購買」→「利用」と商品提供側にとってポジティブに変化していくように描かれます。その際にどんな接点があり、そこでどんな感情になるのか、次のステージにいくにはどんな体験や価値が必要か、ということをまとめた図です。

これを応用し、1日の時間の流れを左から右に進めるようにし、業務の遷移を上記の図の「ステージ」に見立て、どんな業務をどんな感情で行っているのか、そこで「ダッシュボードによって業務が楽にする・質が高まるポイントがあるか」を洗い出していく感じです。

フォーマットとしてはこんな感じ。

項目を簡素化し、行動の部分でその役割の方の業務を記載。その時の思考・感情をポジティブ/ネガティブで書きだしていきます。
そのうえで、ダッシュボードがその業務に役立つであろう機能のアイデアを書きだしていく感じです。

実際にヒアリング調査した例

具体的にどんな感じでまとめていったのか、実際の例を貼ってイメージをつかんでいただけたらと。
と言っても、とても生々しいもの(負の感情も余すところなく書いている。でもそういうのがとても大事。)なので、読み取れないぐらい解像度で貼ってみます。

とある指導主事の方のインタビュー結果を、カスタマージャーニーマップに整理した一部です。
毎日のルーティーン業務のみを抽出し、出勤からランチまでの時間での業務について「思考・感情(ポジ・ネガ)」と、ダッシュボードが価値を出せるポイントをまとめています。あ、追加で必要となるデータの書き出しもやっていますね。

この指導主事の方のインタビューでは、上記の粒度のものが全部で12個作っています。日々の業務もあれば、突発的な業務もあり、また議会対応など特定期間での業務もあったりするので、それぞれ書き出していく感じです。
そうすると、前述した「特定の生徒の重大な問題などが教育委員会の方にエスカレーションされて対応することもあるはずで、その場合は対象生徒の状況を深く確認することが求められる」みたいな突発業務のことが見えてきて、必ずしも「指導主事の方は広く自治体全体のデータが見えれば良い」みたいなことではないことも分かってきます。

当然、校長先生などの学校管理職と、普段から授業を受け持つ先生方では、これとは全く違う図になってきます。
1日・週・月・学期・年度、それぞれの期間に応じた業務もあり、それぞれ書き出していくことで「どんな場面でどんな機能を持つダッシュボードであれば、それぞれの方々が日々活用し役に立つものなのか」が見えてきます。

手間がかかるが絶対に省略できないプロセス

可能であれば、それぞれの役割の方で複数の方にインタビューしてみると良いと思います。

さらに私たちの場合は、サービスとして全国の皆さんに活用してもらう必要があるため、これを複数の自治体・学校で相当数のインタビューを行っています。
やってみると、ほとんどの自治体・学校での要求は似通っており、多くの部分が汎用化できることを確信しています。そのうで、地域や学校としての特性・特色を踏まえ、どこをカスタマイズ可能にしていくのか、の区分が肝で、そこを意識して調査をしています。

このカスタマージャーニーマップをつくってみると、前回紹介した教育振興基本計画から抽出したデータ(トップダウン)と、今回のダッシュボード利用者が日々要求するデータ(ボトムアップ)で、かなりの部分で乖離があることが分かってきます。

教育振興基本計画から追っていくべきデータを洗い出した例

トップダウンだと「望ましさ」への抽象的なアプローチになり、ボトムアップだと「目の前の業務への対処」への具体的なアプローチが増えてくるためです。
これ、恐らくどの自治体でも「どっちも大事」なはず。なので、その両方を叶えるものが必要になってくるはずです。

要求は抽出できたが、それをどう表現するか

前回と今回で、トップダウンとボトムアップでのダッシュボードに対する要求獲得の方法を書き出してみました。次回は、それらの要求をどう表現していくのか、についてまとめてみたいと思います。

実は色んな自治体へのヒアリングをしているなかで、びっくりするような話も聞いています。
既に教育ダッシュボードを運用し始めている自治体で、実際の学校現場に聞くと「ダッシュボードは最初はオッと思って見ていたけど、今はあまり見ていないよ」という話です。
これは1件ではなく、複数であった話でした。

この辺り既存のダッシュボードでいくつかデザイン上の課題が見えており、「ダッシュボードをどう表現するか」で大きく変わってきそう、という仮説を持っています。

次回はその辺りについて、書いていきたいと思います。
では今日はこの辺で。ではまたー。

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