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「本づくり」ここだけの話

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テーマは「編集者の本音」。読者や著者の方にわざわざ伝えるほどではない。けれど、じつは大切にしていることを書きました。参考になるかもしれませんし、ならないかもしれません。
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#新書

新書のタイトルを考えるときに心がけているたったひとつのこと。

最近、自分の新書タイトルだけでなく、部内のタイトル会議に参加する機会も多くて、「タイトルで本の生き死にが決まるなぁ」と思うことしばしばなので、自分がどんな感覚でタイトルをつけているか、振り返ってみた。 もちろん「売れるタイトルのつけ方」と大見得を切ることはできないので、あくまで自分の場合、と断っておきます。 大前提として、想起しておかなければならないのは「新書コーナー」は目的買いよりも衝動買いが圧倒的に多いはずだ、ということである。 たとえばビジネス書の棚の前にいくお客

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企画は「熟成タマゴ」のように考える

苦労した話から。 書籍の編集を始めた頃、企画の深め方も、タイトルのつけ方もいまいちわかっていなかった。タイトルを100個くらい書き出してみるのだが、どれもピンとこない。最終的にはダーツで決めた(くらいの感覚だった)。目の前に心惹かれる素材(著者のメソッド)があるのに、その最適な届け方がわからないのだ。 これって、その渦中にいると相当しんどいんですよね。 外部の「見えている人」からするとこうすればいいのに!ってすぐわかったりするのですが、考えているつもりでも、まったく答え

編集者の本音④売上よりも大切にしていること

3刷2万部。 おかげさまで「医者の本音」に重版がかかりました。 このブログが売れ行きに貢献しているわけではありませんが、もちろんうれしいのでここでご報告!まだまだポテンシャルのある本だと感じてます。 こうして関係者とともに精魂込めて作った本が売れるというのは、なにりよりもうれしいことなのですが、それ以上に大切にしているものとは何か?というお題目です。 最初にお断りしておくと、やはり「本が売れる」というのはすごく大切な事。 編集の仕事って、お願いしてばっかりなので、唯

編集者の本音ーー編集者の「大丈夫です!」はどこまで当てになるか?

8月6日配本で担当の書籍が発売になります。 中山祐次郎さんの「医者の本音」というタイトルの新書です。 タイトルにあるように、外科医である中山先生が、普段患者に伝えることのない「本音」を包み隠さず書くよ、治療や薬のことはもちろん、金、女、死…包み隠さず明かしますよ。 と、そんな本です。 実は本書はタイトルで少しもめました。 「医者の本音」では、まるで著者である中山先生が医者を代表して、最大公約数の「本音」をぶちまけるような見え方をしてしまう。そうではなくて、あくまで本

編集者の本音② 持ち込み企画に、なぜ冷たいのか?

本を出したい。 そんなご相談だったり、企画提案を受けることがあります。 知人のプロデューサーさんの紹介や、出版パーティー(あまりいきません…)や飲み会で知り合った方から後日、改めてというパターンもありますし、突然「あの本の奥付をみまして…」と手紙をしたためてくださる方など、出会いはさまざまです。 「なぜ編集者は持ち込み企画に冷たいのか?」 と銘打ってみたわけですが、「いや、そもそも冷たくはないかも」と一方で思う自分もいます。編集者はつねにあたらしいネタを探していますし

編集者の本音③「本と金」–書店からの買い上げとランキング操作は是か非か。

「本を購入をしたいんですけど」 発売前に、著者さんからそんな申し出を受けた僕は、すぐさま返した。 「それ、書店から買ってくれませんか?」 通常、出版社を通じて自作の本を買うと「著者価格」と言って少し安い価格で購入することができる。しかし、ここで僕がしたのは、書店から直接まとめた冊数を買ってもらえませんか?という提案だ。 その効能は、書店での「ランキング入り」と「一等地」への展開を狙えること。当然、定価での販売になるので、著者の方の持ち出しになってしまう。 (まず、こ