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KYOTO STEAM 2022 国際アートコンペティション①-美術館で思考のクセを手放してみる-

今日これから綴っていくのは、
ほんの30分時間を潰そうと入った美術館で3時間も過ごしてしまった話です。

訪れたのはKYOTO STEAM 2022 国際アートコンペティション
京都市京セラ美術館 新館東山キューブにて開催されました。(明日2/13まで!)

このアートコンペティションは日本では類を見ない形式の国際コンペティションで、公募によりエントリーした41件の企業・研究機関と111件の作品ブランドの中から選抜された11組のアーティストと企業がコラボした作品が展示されています。
目指しているのは「アート×サイエンス・テクノロジー」の可能性を体現する事。

実は現代アートの楽しみ方が分からなかった僕が、何故かこの展示を訪れ、どハマりしてしまった大きな理由は「鑑賞する時の思考のクセを手放せた事」だと感じています。
まずはグランプリを受賞した作品と共に、鑑賞する上での僕の思考のクセをご紹介していきましょう。

タイトルは「とほく おもほゆ」
遠くのことを自然と思わせる、という意味の古語に由来します。
三木麻郁さんと国立病院機構新潟病院臨床研究部医療機器 イノベーション研究室がコラボした3Dプリント人工呼吸器に関する知見と造形サンプルがテーマです。

一見レゴの世界観を思い出す様なカラーリングですが、これは人工呼吸器と笛が組み合わされている作品で、全部で18点並んでいます。
空気が送り込まれると一つ一つが異なる音を奏でる様になっていて、その動きは呼応する様に和音を奏で始め、やがて沈黙します。

解説文には「宇宙を含めたあらゆる場所で製造、使用可能な3Dプリント人工呼吸器の開発を進めた意思と知性が一方にあり、もう一方に未知のウイルスに翻弄される社会の中で、呼吸という生命にとって根源的な営みを自らの手で捉え直そうとするアーティストの想像力がある。」とこの作品の存在意義が示されています。

という様に解説文をじっくり読み込んだ上で、作品に目を向けるのが僕の鑑賞スタイル。この作品がどういうコンセプトで、どういう思いがあって、それはアーティストのどんな原体験に基づいていて、なんていう背景を知ってワクワクするのが僕の思考のクセ。

でも、最初の2つの作品をいつものルーティーンで鑑賞した後、僕の中に残ったのは「なんだか面白くないぞ」という感想でした。
いつもは解説を読んでからの方が安心して鑑賞出来るはずが、今日は思考が限定される感じがしてひどくつまらなく感じてしまいました。
例えるならば、夏休み最終日に数学の問題集を何とか終わらせる為に、ただ巻末の解答例を書き写している時に過ぎいく時間の空虚さの様な感じ。確かに課題は終わったんだけど、自分に何も残っていない感じ。

終われば満足出来る数学の課題とは違って、今日は何故か満足出来ない僕。
時間潰しで来たはずなのに、そんな事はもう既に記憶になかったのかもしれません。忘れっぽくて困りますね。

そこで3つ目の展示からは、解説文に向く視線を振り切ってまずは作品の元に行ってみる事にしました。展示空間に足を踏み入れ、目で感じ、耳で感じ、体で感じて想像を膨らませてみるという実験をしてみました。

これはどういった作品なんだろうか、
自分はこの作品から何を感じているんだろうか、という事に可能な限りのエネルギーを注いでみる時間。

実験の効果はすぐに現れました。
作品を観察しようとする事で、自然に集中状態にいる自分に驚きました。
それもそのはず。謎解きをしている時に近いもので、
ヒントを見逃さない様に感覚が研ぎ澄まされていきました。
またその感覚は今回の展示の性質も相まって、目から入る情報だけではありませんでした。

どんな音が聞こえるか集中してみたり、目を閉じた時に感じる空間に対しての自分に集中してみたり、長くその場に留まった時に起きる変化に集中してみたり、その時に自分が何を感じるかに集中してみたり。
この想像している時間が鑑賞の醍醐味の一つで、これまでの鑑賞方法では欠けていたパラメーターなのだと思いました。

これまで閉じていたチャネルが一つずつ開いていく様な感覚を味わいました。
そしてチャネルが開いていくごとに、一つの展示スペースに留まる時間はどんどん長くなっていきました。
これが3時間滞在してしまった理由の1つ目です。

時間を忘れて楽しんでいると、会場が何やらザワザワしてきた様子。
首から赤い入館証をぶら下げた人の数が増えてきた。
話を聞いてみると、今回のキュレーターの方と3組の出展作家さんによるトークセッションが始まるらしい。ふらっと訪れてしまった展示会でそんな場に居合わせるとは何とツイているのだろうか!

これが理由の2つ目です。

さて、だいぶ長くなってしまったのでひとまずここで一区切り。
トークセッションの続きはこちらからご覧下さい!


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