河童40

「ほんとうだね。子どもだからと云って嘘はダメだよ。おじさんたちは、何代か前はお侍だろう。嘘はダメだから」
「先祖のことまで誰に聞いた。まあ、よい。今となれば昔のこと。儂は約束するから、子ども、お前も約束しろ。村でおとなしくしていろ。上の者の言うことも聞くのは大事なこと、村へ帰りおとなしく。よいな。」
長がする約束ならばと、幼き年寄り平太は、踵をかえし一人村へとかえって行く。

16

「と、儂が知っているのはここまで。あとは噂でしか知らん。その後河童は村へと何度も現れたらしい、儂らの村は河童といえども、争いはしたくない。が、しびれを切らした短気なものや、他の村は河童どもと、石合戦を何度か繰り返したみたいで。そうなれば頭に石をうけ、お互い激しくおさまりもつかない。
でかい石で頭を割られ、床に伏せるものも、死んだものもいたようだ」
年老いた平太は、話を少し休み。
「あとで皆が気づいたことが、河童どもは村に来て悪さをしても、こちらから仕掛けない限り、食べれそうなものを、少々失敬してただけだったみたいで。」

社にいる者は黙って年老いた平太の話を聞いている。
百姓たちもここまで詳しく話を聞いたのは初めてらしく、年寄りの話を聞き入っていた。

康介が一人頷き
「そうか、そうなのか」
納得したと、話をうけとり、
「年寄りどの、いや、平太翁と呼ぶか。呼び方は後々として、水のことも、石積のことも河童の仕業で、その河童にしてみれば、その石積も川の流れも水も、息が出来るか出来ないかと同じ。生きるか死ぬかにかかわる大事なことで、辺りに暮らしていた河童たちにしてみれば、水も魚もいいように扱われ・・・。
村人たちに息の根を止められそうに成っていたわけだ。」
康介は一人喋り、納得して話を続ける。
「村人はこの世に河童の物語はあれど、見たこともなければ、辺りにすんでいる河童のことなど、気にしたこともなく、ある日いきなり現れ、出会い頭にお互い驚き、恐怖も感じ、得物が手にあれば振り回しもする、手元の石でも、つかんで投げたくもなる。」
康介は自分の話に自分で頷きながら話を続ける。
「河童の方も驚き応戦するのもわかる。
うん、切りつけた者の気持ちも解る。河童の気持ちも考えれば。うん、河童も恐ろしく身を守りたければ、頭にもくるだろう。うむ、河童の気持ちも解る。」
康介の喋りに年寄りが、
「うむ」
康介の話の続きを語る。
「そこで、河童と言葉は解りあえぬとも、こちらの考えは通じるのではと、塞き止めている場所の小屋をばらし、新たに四方五尺ほどの台と日除けをもうけて、酒と少しの食物を置いていた。
水路の方も、あ互いに水を分けあうつもりだと、解るように工夫をしてみた。」
年寄りは息を吐き、そして大きく吸い込む。
「儂らの気持ちが解るのか、河童のほうも、村に現れることがなくなった。・・・河童どもは普段どこにいるのか、夜、食べ物や酒は、綺麗さっぱりと朝にはない。しかも、散らかしたように感じない程度に散らかるぐらいだ。
・・・棲みかに持ち帰るのだろうが・・・どこにすんでいるのか。見事に誰も河童の居所が解るものはなかった。そんなに速く歩き走ることもできないだろう。速く泳げても、川の水は少ない・・。
何はともあれ、少ない食べ物を分け与えているのは通じたようだった。」

その後に河童との争いは起きることもなかった。



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