河童52

康介は坊主が策を話し始めるだろうと黙り待っていると。
「無いのならばやってみる」
康介と娘へ視線をなげると、
「では」と動き始める。
娘の方はすでに判断ができない心であろうが、康介としては坊主の策を聞いておきたかった。
坊主は河童の亡き骸に手を合わせ、その足を掴み戸口へと向かい外の様子をうかがう。
ゆるりと戸口を開け、河童の亡骸の足を掴んだまま外へと引きずり出していった。
娘も呆気にとられそれを見ている。
康介も何をするのか聞けずに見とれている。
「なっ、何を」
そこまで言葉に出したが、続きがでない。
坊主は死体をきちんと寝かせ、ない腕をあるがごとく腹の上で組ませている。
そして傍らにたち、手を合わせ経を唱える。短い経を唱え終わると、スタスタと社の中へと戻り、百姓たちが置いていった供え物をつかみ、外へと持ち出し河童の亡骸の横に並べだした。
何事が始まるのかと康介は見とれている。
坊主が供え物を並べ終えた頃を見計らい、
「何をどうするのです」
そう尋ねてみた。
「やってみるのだ」
坊主が一言だけこたえる。
「なにを」
康介が聞き返す。

坊主は聞こえているのか無視しているのか、供え物を並べ、戸口を閉め刀の鞘で戸口が開かないようにしっかりと固定すると、もとの場所に腰を下ろし、胡座を組んで康介に向かいあい座った。

康介は坊主と向かい合い何か喋るだろうと待つ。
坊主は一言。
「やってみるのだ」
康介に向かい力強くしゃべる。
「・・・なっ、なにをです」
とりあえず聞き返す康介。
「やってみるのだ。村人たちがやったように供え物をし、亡骸もしっかりと供養し、こちらに争う意思がないことを示すのだ。河童たちの娘にたいしての悪戯から始まったこと。うまく行けばこれで治まるかもしれん。なにもしないよりは・・これでしばらく様子見よう。」
康介は頷くしかなかった。
娘の方は頷くこともしていない。
康介も何も浮かばないし何もやる気が起きない。
坊主に頼る気ばかりになっている。

怪我もある。
河童どもと争ったところで何処までやれるものなのか怪しいばかり。
無駄なことであっても今は坊主に頼るしかない。
言われるがままで居るしかない。

雨音がやみ蛙のこえも聴こえてこない。何をするでも考えるでもなく、ただ静かに座り場違いな眠気を振り払う坊主。
うずく身体を庇いながらただその時を待つ2人だった。
坊主と康介そして静けさと同化した娘。
そのときが来るのをまっていた。

自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!