河童61

「人・・・ひと。儂が必死になり・・・人だったか。」
自分が必死にやったことを想像して思考が止まる。
ふと自分の左腕に痛みと、重さを感じ、しかも動かないのに気づき目を腕にむける。
腕は切口がいくつかと、そこから滴る血が見える。
その流れる腕先には黒い髪の毛と・・・。
「なんだ・・・。」首を傾け動かぬ腕の先をみる。
「くび・・。」
生首だった。
「うわっ」
坊主は驚き、振り払おうと腕を振るが思うように動かない。
神経をやられたのか筋をやられたのか眉間に伝わる痛みが増す。

昨夜は、我を忘れ河童どもと争い、そして。
記憶をたどる。

斬りつけて回った相手は違うようだ。
「河童どもでは」
違う。
今、目の前に現実がみえ、動かぬ指がその現実を掴み離さない。
ゆるりゆるりと辺りを確かめる。
そこには死に人が何体か。
「もしや、もしや。」
いくら思い出したところで、現実は見えた通り。
「まさか、まさか。」
似たような同じ言葉が繰り返される。
しばらく「・・・。」黙りこみ。
「ひと・・・だったか・・・。」
からだが震えだす。
坊主は人を斬ったことに震えたつもりでいたが、違うようだ。
「なぜ、百姓が。」
周りの同じ人が自分を仕留めようとしていたことに、無意識が恐怖を感じている。

「どう言うことだ」
わかっている気がする。
「・・・私が斬ったのは・・河童は・・・ 」
総てではないが解ったようか気がする。
震えが止まらない。

女こどもをおもいだす。
そちらに目をむけると、怯えた目、怒りの目、憎しみの目と、泣きじゃくる目が坊主を視ている。
坊主は死体に目を向け、そして自分の指に絡まる髪の毛とその首に目をやる。
「儂が・・儂がやったのだろうな」
坊主が呟き、女たちに目を向ける。すると女の一人が社にむかい悲鳴をあげた。
そこに居る皆が、生きて居る皆が社に目を向けた。
社の入り口には娘が立っていた。
服も髪も乱し、返り血が顔や服を赤くしている。
どこを見るでもなく立ち尽くしている。
よくみると娘の傍らには、事切れたあの生き物が、娘の手首を握り絞めている。
娘はそれに気づいているのか、無視をしているのか、ズルズルと引きずり、ゆるり歩いている。恨みの強さか握る指は離れる気配がない。

社の入り口の数段の階段を魂の抜けた娘の体は危なげにおりる。その傍らには引き摺られるそれがガタガタと着いてくる。
階段をガタガタと引き摺られるそれは、滅多刺しにされているのがよく解る。体は身体の体を、辛うじて成している。

それでも娘の腕を握るその恨みの意志は事切れてないようだ。
娘は静かにヨロヨロと坊主のもとへ、亡骸引きずりよってくる。
歩の風貌に気味の悪さを感じ半足うごく。

近づく娘の顔は能面のよう。無表情の仮面は血の斑点をつけ、片足をかばっているのか、







自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!