河童53

21

雨がやみ風が出てくる。
そして月あかり。

天と地の間には何があるのか。
この世に生まれ見たものは、一時の幸せとその後の不幸。
わずかな光明が見えて浮かれていれば、どこから来たのか何が来たのか、我が身を闇へと押し流す。
今は闇へと押されているのか。
ならば今この時に光明を観たいものだ。

坊主と康介は静かに寝転がっていた。娘は疲れの色もこく、たたずむ姿が気味も悪くある。

囲炉裏のも元気なく、風を欲するわずかな赤みが残っているだけ。
坊主はただ憂鬱。
「まだまだ若い」の言葉があといく月夜と続く康介は、この夜の事すめば大阪にゆくか、関東にゆくか。
どこにも火の手はあがらないだろうか。ならば生まれ落ちた地へと帰るか。
不安との付き合いもそこそこに、明日へとつづく日々に我が身を翔ばしていた。

雨音強く風もつよい。
「夜が明けるまではどれ程だろう」
雨風の音に不安を増やし、明るい朝を求める康介。
坊主はポツリと「少し冷えてきた」
朝が近いと康介の言葉に応えたのか、ただ火の勢いがないと言いたいのか、坊主は立ち上がり辺りをみまわす。焚き物はわずかな小枝のみ。「うむっ」力を感じる納得を喉からだし再び寝転がる。
身体は大の字にして天井を見つめている。深く息を吸い込み吐き出す。チラリと康介を見れば痛みがあるのか股をさすっている。

娘へと目を移せば、先程までの若く男心を惑わすような雰囲気は失せ、憔悴した姿をポツリと見せている。淡く薄く澱んだものが身を包んでいるかのよう。

その姿が今の不安をます。坊主はため息をつき、自らの行いに「ため息で気を弱らせている」
あらためて深く吸い込み長く吐き出してゆく。
呼吸に集中していると、
ガサリと音がする。
ガサリゴトゴト。
供え物が動いている。
供え物が動かされている。
康介が供え物のある方へと顔を向け、坊主は耳を向ける。
坊主と康介が目を合わせる。
娘が狼狽して騒がないかと二人が目だけを向ける。
娘は寝ている。それとも気を失ったのか。
静かに横たわっている。供え物の動く音が気を追いやってしまったようだ。

外では音がする。転がる音に混じり「カーッ」と絞り出すような唸りも聞こえる。
身動きせず気配を感じている坊主と康介。
「成るように為るだろう」
二人の男たちは今の流れに身を置いて、どこを観るでもなく宙を見ている。外から流れ入る音が目の前に原因を想像させている。
音が消えて事の成り行きも見えるだろう。
その期待でききいっている。

自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!