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大人の階段を目の前に苦しむ思春期を思い出す「ゴーストワールド」

私の人生でやり直したいことランキング5位くらいにランクインすること。それが成人式です。

私は人生のうちに思春期が二段階に分けて来ていたと思っており、初手が高校時代とすると高校卒業で新たな第二の思春期に突入したと思われます。

初めの思春期はまだ可愛いものでしたが、高卒で集団行動ないし群れを離れ、社会人になってしまった私にはとても痛々しい第二の思春期が訪れ、そんな真っ只中にあったビッグイベントが成人式だったのです。


私は地元の中学を卒業後、東京の専門高校に進学した為受験という受験は経験しておらず、みんなが寝る間も惜しんで勉強に励む傍ら、ひたすらダンスに明け暮れていた為当時から「あの子は東京の専門高校に進むらしい」という周りからの"別物感"に大きな誇りとプレッシャーを勝手に持ったまま卒業したものですから、ビッグにならないといけない。という強い信念を持って埼玉から3年間通っていました。が現実はそう甘くなく、なんら変わらぬ一般人のまま高校を卒業し、どこに行くあてもないので卒業と同時にポイっと社会人になったのです。


社会人となってもまだ私は"別物感"のプライドを捨てきれず、どの環境にいようとも"私はあなたと違うので"と言った何様ばりのスタンスで生きてきた為人と比べられることも、同類としてまとめられることも拒み続け20歳を迎える頃には完璧な思春期野郎が出来上がっていました。

問題の成人式はというと、最強に厄介なプライドを携えていた為久々に会うみんなに「今何やってるの?」と聞かれるのが嫌で最初から全力の一匹狼を演じ本当に仲良い人以外とは話した記憶すらなくそそくさと帰り、残った写真は空っぽの体育館の写真のみでした。


何をやってるんだ全く。と、くだらないプライドなんか捨てて全力で騒いでこいよ。と今の私なら20歳の私の背中を押してあげられるが、当時はがむしゃらになってた私の周りで大学生活を謳歌し、余裕な顔でしゃくしゃくと大人の階段を登っていく順風満帆なみんなが嫌で仕方なかったんだろうけど、そんな中でも"私はみんなと違う"という強い信念をガクブルで握りしめて尖りまくっていたので余裕がない自分も悔しかったんだろうと今になって心をチクチクさせながら思ったりします。

そんな痛々しくも苦い思い出を「ゴーストワールド」を見てぶわっと思い出しました。


大学卒業後で思春期真っ只中のイーニッドが周りの人間や環境に心の中で中指を立て、面白くないこと(自分に都合の悪いこと)には素直に牙剥き出しながらも、大人にならなきゃいけない環境に心がついていかないもどかしさや寂しさを痛いくらいに感じながら、自分の思春期と重ねてまた胸が痛くなるそんな感情で心が真っ黒になる体験を致しました。

自分より一歩先に大人になり始めた友達のレベッカにもなんだか裏切られた気になり、何も考えず素直に自分の思うままに従えばいいのに、と思うイーニッドが同類と思ってるさえないおじさんシーモアが大人な対応をするたびに嫌気がさしたり、ぶつけどころのない怒りが伝わってくるたびにあの頃の私を思い出して隣で肩を抱いてあげたくなるような感情が芽生えます。


大人にならなきゃいけないのになりきれない、馴染めない苦しさってなってしまえばすごい速さで時間が過ぎ始めて気づいたら25.30と歳をとってしまうものだけど、改めて思い返すと乗り越えたり、吹っ切れるきっかけって絶対にあったなーと思い出し始めて、今考えると今の私になるきっかけ自体がそこにはあったな。と頑張ってきたな自分!と言いたくなる瞬間が詰まっている気がします。

思春期は、痛くて、くだらなくて、黒歴史よりも真っ黒で真剣に笑えない過去だったりするけどそれも私なんだな。となんだかんだ自分が愛おしくなるそんな不思議な期間なのかもしれないと映画をみた数時間後にニヤニヤしながら思ったりしました。(気持ち悪い)

またそれと同時に、そんな恐ろしい頃の私を大きな心で見守ってくれていた家族や両親や仲良くしてくれていた友達には今も本当に頭が上がらないなと思うのです。

自由を求めて今を楽しく行きたいけど、現実って本当にそんなに甘くないからこそしっかり現実見えてるやつが本当に憎くてつまらない人!私はこんな人になりたくない!てうまく向き合わないようにすり抜けてるのに、不意にばったり出会うかのように向き合っちゃう時があってその瞬間に自分の見て見ぬ振りしてきた幼さに一気にがっかりしてしまう時、初めて自分を客観視できて痛々しく思うようなそんな胸がちくっとする経験をゴーストワールドを通してじわじわと忘れていたあの頃を思い出しました。

気づいたら勝手に大人になっていたと思っていたけどそのきっかけがどこだったのか、童心を取り戻すことが難しくなったのはいつからなのか、そんな今の自分の原点を振り返りつつ一年の締めくくりにちょっと痛いけどそんなこんなで今年も一年がんばったな。お疲れ様自分。と思えるであろうこの映画を今回はお勧めしたいと思います。



今回は自分エピソード多めでお届けしてみました。
今はもう笑って話せる過去も当時は真剣で、理不尽な大人や早々と大人ヅラしてくる友達にイライラしながら、共感なんて1ミリも求めてないはずなのに心のどこかでなんで誰もわかってくれないんだろう。と思いながらも、やっぱり私は変わってるのかもしれない。なんていう言い訳で自分を納得させてた痛いあの頃が皆さんにもきっとあったと思いたいです。

久々に見たミニシアターは、普段の大きな映画観と違って自由な座り方や態度の大人が多く、ミニシアター独特の雰囲気と人間が集まっていて、この空間の一員である自分に酔いしれつつ、ゴーストワールドの余韻に浸って歩く渋谷の夜は久々に他の人とは違うので。と尖った私で歩けた気がしてとても気持ちが良かったものです。


end

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