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サッカーダイジェストの凋落が著しい

 かつてサッカーダイジェストはサッカーマガジンと並び業界誌として権威を保っていた。自分も2000年代は毎週両誌とも隅々まで購読しており、良くも悪くもサッカー観戦の参考にしたり知識を得ていた思い入れのある雑誌である。
 そのサッカーダイジェスト、ここ数年の凋落が著しいことについて大半のサッカーファンは同じ思いを抱くと思う。具体的に言うと、ネット記事における低レベルかつ中身のないまとめ記事を乱発している現状だ。

 やり口は以下の通り。

 (1)
 ・欧州所属選手が活躍する
 ・簡単にプレーと結果内容載せた上で、
  ネット上の一ユーザーの感想をコピペして掲載
 ・「○○が活躍! 『○○半端ないわ』
  『やばすぎやろ』と話題に」

  というタイトルで掲載
 (2)
 ・有名選手がSNSを更新する
 ・その内容およびコメント欄をコピペして紹介
 ・「△△が語るXX! 日本とのギャップとは?」
  
というタイトルで掲載

 他にも様々なやり口があるのだが紹介していくだけで自分のIQが低下していくので上記2例程度で勘弁していただきたい。この2例挙げただけで、「あのさぁ…もっとマシな仕事あるだろお前ら…」と呆れ返る。
 これの何が問題なのか、情けないのかと言うと、一番はネットでカチカチとコピペしてまとめた、記事作成者の思いや考察がほぼ無く、誰でもでき、バリューを生まない「作業」を、かつて権威を持っていたサッカー専門誌がやっていることだろう。
 「構成●サッカーダイジェストWEB編集部」としか記されておらず、記者名は当然ながら無し。原稿を書いた記者の色も感情も出ない単なるまとめ記事。
 ネット上で無数にある、素人のまとめ記事と何が違うのコレ?
 専門誌のクレジットとはいえこれは時給1,000円のバイトでも作業可能。それこそサッカーの知識や興味がなくても可能。ただ単に話題になってるハイライト映像やSNS見てTwitter上の感想やInstagramのコメント欄からいくつかコピーしてくればいいだけ。誰でもできる。

 ついでに言わせてもらうと、タイトルで「天才やん」、「ホンマ神」とか関西弁を結構な高頻度で混ぜ込んでくるの何なの?


 ハリウッドで黒人俳優起用が暗黙のうちにマストになってる世界の潮流を踏まえて、日本のネット界でも一定数関西弁を混ぜ込まなきゃいけない多様性配慮の風潮とかが、自分が知らないだけで既に周知のマナーみたいになってるの? 知らなかったから教えてくれよ。

 逆に言えばこういうタイトルの時点で、
「あ、サカダイだ(見る価値なし)」
として無駄な時間を回避できるので有難いとも言えるが。
 こういう中身のない低レベルな記事が流れてくるのを見るだけでも脳内リソース無駄消費に繋がるのでブロックしているが、別のプラットフォーム、例えばYahoo!ニュース記事でも一目でサッカーダイジェストが作ったまとめ記事だとわかるタイトルで上がってくるので目障り。
 記事を読んでもほとんど得るものがない。選手・監督のコメントや狙い、記者の独自の推察や今後の展望等がサッカー観戦の幅を広げ、戦術眼なり観戦の楽しさや中長期のシーズンの面白さにも繋がっていく。短文の感想コメントまとめを見たところで何も繋がらない。

 これを良しとするサッカーダイジェスト編集部の方針にも驚く。建屋の中で単なるネットのまとめ記事によりPV集めて広告費稼ぐスキームは、現地取材行って様々なテーマを持ち記事を書く専門誌の立場と対極にあると思う。
 これは編集部の立場に寄り添って考えるのであれば、「背に腹は代えられない」、「いくら権威失墜して馬鹿にされようともPVと広告費を稼ぎたい」という思いなのだと認識している。間違っても「このネットまとめ記事を楽しみにしている読者が沢山いるから」という使命感ではないはず。そんなことはサッカーダイジェストがやる必要が無い。世に蔓延る素人のまとめ記事で良い。

 雑誌も過去に比べれば部数激減、かつては毎週発売だったのに今や月に一度の発売、売上げ激減で相当厳しい財政事情なのかもしれないし、他に稼ぐ手段がないのだと思う。おまけにJ1だけだった昔と比べ、国内はJ1・J2・J3まで拡大し、海外組と呼ばれた中田・稲本・小野・中村だけだった時代から、ヨーロッパクラブでプレーする日本人は今や200人以上。ここまでサッカーが広がっていると手が回らず省エネで適当な記事を乱発するしかないのだと思う。
 編集部の財政事情が厳しい状況は、外部ライターへの発注激減にも繋がる。そのため、原稿料をセーブする必要があるので各ライターに依頼してまともな原稿書いてもらうくらいなら、自分達で適当に省エネで作れるSNSまとめ記事をUPしておけばクオリティは爆下がりだが従前と変わらない記事の量をキープできるという事情もある。
 とはいえ、ここまで粗製濫造していたら現地に足を運んだまともな取材記事ですら信頼性が共連れで落ちるし、「どうせサッカーダイジェストは低レベルなこたつ記事でしょ」とサッカーファン全体に認識されているので、目先の小銭稼ぎより大きな目線で信頼を落とすことによるデメリットの方が大きいと感じる。

 サッカーダイジェストは2015年1月に週刊から隔週発売に変更、そして2023年6月には隔週から月刊発売に変更となった。その月刊化の際に当時の本田健介編集長が誌面に載せた宣言は以下の通り。

紙媒体は過渡期を迎えて久しく、〝オワコン〟ということばも使われるようになりました。しかし、編集部一同、誌面からこそ伝えられる感動、熱があると信じて取り組んできたからこそ、忸怩たる想いもあります。ただ今回のリニューアルは決してネガティブなものではありません。月刊になることでこれまで以上に、専門誌として深く、詳細にサッカーの魅力を発信できると願い、さらにデジタル分野での挑戦にもより力を入れていきます。

 こんな宣言出していたのに、オワコンと化している現状。ネットまとめ記事のどこに「伝えられる感動、熱」があるんですかね?

 最後に、利害関係者でもない自分が何故ここまで述べるかと言うと、率直に今の凋落が残念だから。

 サッカーの文化はピッチ上のプレーだけではなく、それをとりまく様々な関係者によって醸成され、文化が向上するものであり、メディアもその一つ。

 信頼性があり権威のあるメディアが日々試合内容等を振り返り論評していくことでサッカー全体の価値高まりに寄与していく。

 ところが日本におけるサッカー専門誌の一つがこんな中身のないまとめ記事乱発しているようじゃ、文化は高まらないわけですよ。
 泡沫メディアならまだしも歴史があるサッカーダイジェストでしょ?
 その矜持もなく、こたつ記事を垂れ流しているのは情けないので勘弁してほしいし、残念。

 ただ、自分も買わなくなって久しいし、凋落を招いた責任の一端はあるのかもしれない。サッカーダイジェストに限らず紙の雑誌自体が過度期を迎えているのも確か。そうなると改善の余地はなく、このまま日々まとめ記事が続くのだろう。


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