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小説|パラレルハウス|①エピローグ

「ここのスイーツさいこ〜💕」

眞子(まこ)は満面の笑みで
明(あきら)に言った。

明は眞子に笑顔で返した。

眞子「ねえ、今からどうする??」

明「どこか行きたいところある?あ、最近公開された新しい映画、どぉ?」

眞子「えーーー( ・ั₃・ั )映画はこの前も観たじゃん、他のことしよぉー」
「あ!そうだ!最近できたパラレルハウス行かない?!」

なんだかんだと主導権はいつも眞子。
明はそれにいつもついて行かされるばかり。
でもそんな眞子の天真爛漫なところが、明は好きだった。

眞子と明は付き合って約半年。
バイト先で知り合い、年齢は眞子の方が2歳年上。深夜のコンビニのバイトで2人きりになる事が多く、そこでだんだんと距離が縮まり付き合うことになった。
明は大学3年生の21歳。そろそろ就職活動しなきゃいけないのに全然その気がおきず、将来をどうするか考えることから、少し逃げていた。
一方、眞子は将来女優を目指して、演劇の勉強するためにバイトをしながらの生活。


明「パラレルハウスって何?!」

眞子「なんかね、友達から聞いたんだけど、身体中がすっごく気持ちよくなるんだって!それで、パラレルハウス行ったあとは、今までの世界が何だったんだろうって思うくらい不思議な感覚になって、一瞬隣にいる人が誰か分からなくなる人もいるって聞いたの。」

明「へぇ〜、なんか変なことされるんじゃないの?!大丈夫?怪しいなぁ〜」

眞子「なんでなんで!そんなこと言わずにさぁ、一緒に気持ちよくなりたくないの?!♡♡( *´³(´꒳` *)行ってみよ〜よぉ(^人^)」

明は怪しいと思いつつ渋々了承した。

明「ならさ、そこ行ったら今夜は一緒に俺ん家来てくれる?^^*」

眞子「んー、わかったー。もぅ、しょうがないなぁ」


眞子もなんだかんだで、ワガママ聞いてくれる明が大好きだった。いつも一緒にいられない分、2人でのデートでは思いっきりワガママをぶつけた。

そんな2人はいつも仲良しだった。もちろん小さい喧嘩はあるけど、先に明が謝ってその後眞子が「私もゴメン」と言うパターンでおさまっていた。

****

眞子は父親と年の離れた兄と3つ下の妹がいた。母親は眞子が高校3年生の時に病気で他界していた。2年前に兄は結婚して、兄嫁の実家である秋田で生活していた。妹は海外で生活したいと、3年前に高校を卒業してすぐにイギリスに行き生活していた。

眞子は高校を出てから、昔母親がよく作ってくれたようなケーキで、皆が幸せになって欲しいという夢を描いて、製菓の勉強のため専門学校に行った。そして憧れのケーキ屋に1度は就職したが、思い描いた将来と現実とのギャップについていけず1年で辞めてしまった。

兄や妹が家を出てからは父親との2人での生活。母が亡くなって以来、家事はやれる人がやるというスタンスで生活していた為、家族というか、どちらかというと共同生活者と言った方が当てはまるような感覚の家族だった。

眞子は仕事を辞め、将来の行き場を失っていた。そんな眞子をみて、昔から通っていたダンス教室の先輩から劇団を紹介された。

最初は見学だけのつもりだった。
だけど皆がそれぞれの夢を描いて必死に演技している姿をみて、心がギュッとなった。
その迫力ある演技に魅入ってしまい、いつの間にかその場で泣いていた。

そして、眞子は入団を決めた。昔から女優になりたいと思っていたわけじゃないのに、そんな私がお芝居の稽古に参加させてもらうなんて、おこがましいんじゃないかと遠慮する気持ちがあったが、そんなおもいは初日の稽古でかき消された。それくらい劇団は眞子にとって刺激的で楽しかった。

****

団員の中にはいつも優しくしてくれる先輩がいる。

啓太「あ、眞子ちゃん、おっはよ〜!」

眞子「おはようございます!!(*' ')*, ,)ペコリ」

さやか「ちょっとー、挨拶は後輩からするものよ!顔が見えなくても、入る前から声出して!」

啓太「おいおい、昭和じゃあるまいし、そんな堅苦しいこと言わずにいいじゃん。さやかにとっても可愛い後輩だろ。それに時代は令和だぞ。令和ヨロシクって言うだろ笑」

さやか「ん、もぉ〜、啓太はいつも可愛い子には甘いんだからー」


中條啓太(ナカジョウケイタ)29歳。
彼はアクション俳優を目指して上京するも、スタントの仕事の撮影中に事故で骨盤を骨折。それ以来、思うような動きができなくなったため活躍の場を舞台に移し、舞台俳優として活動中。劇団一のさわやかイケメン。

唐澤さやか(カラサワサヤカ)26歳。
彼女は母親が女優で父親が映画監督という、言わば芸能一家のサラブレッド。気性が少々荒いところがあるが、実はとっても心優しい女性。お酒が大好きで、酔っ払うと口癖のように「白馬の王子がいつ迎えに来てもいいように、私は常に最高な女でいるのよ!」とまわりを少々シラケさせる。


*****

一方明は、愛知県の田舎にある柿農家の三男坊。1番上の兄は10歳離れていて、父親と共に代々受け継がれた農業を手伝っている。かつては地元でも有名なヤンチャ野郎だったが、今では落ちつき結婚して2人の子供の父親に。
5歳上の2番目の兄はそんな父と兄の背中をみて、清掃業を傍らにしながらも、地元を活性化したいと古民家や廃屋を何かしらで利用できないかと地元の仲間を集め奮闘中。兄弟きっての負けん気の強さで市や行政に立向かう若きホース。

そんな兄達に囲まれてた明だが、兄弟の中では1番大人しく母親や祖母によく可愛がられていた。
兄達とは違い、外で遊ぶより部屋でゲームしたりする方が好きだった。宿題もきちんとして、成績も普通より少し上で優秀といえば優秀。どちらかと言えば陰キャタイプの男子。

明はそんな兄達との生活に飽き飽きしていた。自分が専攻したい学科がたまたま東京の大学にあったため、何となく東京に行きたいと両親に言ったところ、
父親が「そうだな!お前も一人前の男として、東京の街で勉強してこい!」とわけも分からず背中を押された。一方母親は「ちゃんとたまには帰ってくるんだよ」と心配そうな声とは裏腹に少しホッとした表情だった。

そんなこんなで、明は上京して2年半。
コンビニのバイト先で知り合った眞子と付き合うことになった。お互いに学業や稽古がある中で、バイト以外で2人で過ごせる日は2週間に1回くらいのペース。

年頃の男としてはもっと会いたい気持ちもあるが、眞子のことを考えると、自分の気持ちを少し押し殺してしまう。べつに身体が目当てではないし、それだけならAVで充分だ。
だけどたまに無性に男としての性を抑えられなくなる時は、デリバリータイプの風俗を利用することもある。

****
(2人は40分くらい歩いた…)


眞子「着いたぁ〜♡♡パラレルハウス(〃∀〃)キャ♡」
明「スゴい行列じゃね。並んでたら朝になるんじゃないの?( ・᷄д・᷅ )」

明は喜ぶ眞子の顔を、このままずっと見られるなら並んでもいいかと内心思っていた。

眞子「う〜ん。まぁ、でも明と一緒にいれるなら私平気。パラレルハウス行きたいし、次会う日にあるかどうか分からないから・・・」

明「え?期間限定なの?!なんで?」

眞子「うん、このご時世だしさ、きっと運営費とか結構かかってるんじゃないのかなぁ。よく分からないけど、もし次無くなってたら明のせいだからね!!」

明「はぁ?なんで俺?
分かったよ。俺も眞子と一緒に居れるなら朝まででも付き合うよ」

眞子「ありがとう♡♡さすが私の彼氏!」


2人は入れるのが何時になるかわからないパラレルハウスの行列に並び、順番を待つことにした。



つづく…

次の話→②黒服


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