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ある飲み会でのこと コップ一杯の夢と適量のノンフィクション

時々飲み会に参加する。知り合い何人かとだったり、打ち上げで大人数だったりと色々だ。もしも物語だったら、運命の出会いでもあるのだろう。だけど大抵の場合はその場限りで終わる。

一期一会も悪くはない。くだらない話、真面目な話、お酒と雰囲気がそうさせるのか、些細な内容でも笑いがおきる。どうせ明日には忘れてる、だから普段はできないような大胆な言動もできる。年齢や肩書きの垣根を越えて楽しくお喋りして、連絡先を交換することもなくまた月曜日からそれぞれの人生を歩み出す。幾重もの線がたまたま1箇所で合流して、また線が続いていく。

片方を壁、もう片方を人に挟まれて動き回れないような苦い思いもする。でも出会いがなくてもその時の出来事が次のモチベーションに繋がる。

バッドエピソードはハッピーエンドへの架け橋なのかもしれない。

テーブルには会話に夢中で誰も手をつけなくなった揚げ物が残り、グラスの氷が溶けてゆく。運転して行くから飲酒はできないし、運転中のシーンなんて物語ではカットされるんだろう。でもカットされた部分にだってストーリーがあり、どこを切り取るかによって見方も変わってくる。オレンジジュースで我慢したがやっぱり呑みたかった。例えそれがグラスジョッキの周りに浮かぶ水滴だったとしても。

二次会、三次会になるにつれて1人、また1人と減っていく。睡魔で帰りたくて、それでもまだなんとなくいたくて、今日しか会えない人達と気の済むまで語り合いたい。眠気とアルコールでまわらなくなった舌に、それでも名前の知らない飲み物を喉に流し込む。

別れを告げ駐車場までの道でいよいよ一人になると、それまでの賑やかな思い出は既に過去の記憶となる。車内にこもる熱気は私を現実へ呼び戻す。その頃には眠気も通り過ぎ、なんだってできる気がしてくる。深夜3時になっても車は走り、街灯や信号だって灯っている。街が寝静まっても変わらず世界はまわっているんだなと、星がかき消された夜空を見つめながら妙に冴えた頭で考えた。

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