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日本が一番ってことでもないハナシ

1年ほど、外資の工場に派遣で働いていた。

そこは3交代勤務、金属加工の工場で、時給も良かった。

その時まで私は直接製造にタッチした事がなかったものの、自分が担当する専用マシンがあり、黙々と集中して取り組んだり機械操作を覚えるのが楽しかった。

その工場では月一回、30分早出して、各国各工場の進捗を聞く時間があった。

自分達が作っているパーツを他国でも作っており、生産率の比較グラフが示されるのだが、例月は日本が一番を取っていたのだが、だんだんフランスに抜かれる事が増え始めた。

一番の時はただただ嬉しいだけだったのだが、一旦抜かれ始めると、ただの末端派遣社員の自分ですら焦りはじめる。

この感覚は意外とみんなが感じていたようで、ヘタに「スピードアップしろ!」と言われるよりも躍起になった。

極力機械を止めないよう引き継ぎ、優先度の高いモノから前工程の担当に話をつけ、技術が未熟な作業も熟練者から教えを受けた。

正直、この時期が最高に楽しかった。

自分の技術や知識が伸びていくのがわかる。
同期で入った派遣同士で情報交換したり、休憩時間にも社員さんに質問しまくった。

そんなタイミングで、急に出荷ペースがダウンした。
2020年2月だった。

加工したところで出荷先がないのだから、どうしようもない。

私たち派遣は光の速さで切られた。
これはまあしょうがない。
そのための派遣だからだ。

漏れ聞いたところだと、社員さんも給料が8割5分になり、ボーナスもなくなったらしい。

結局、ライバルのフランスを追い越せないまま、その会社を去ることになったのが心残りだ。

今、あのグラフはどうなっているだろうか。

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