ハナコのこと

エレンといいます。「ハナコのこと」書いてみました。

ハナコのこと

エレンといいます。「ハナコのこと」書いてみました。

最近の記事

はじまりの記憶

ハナコの最初の記憶はぼんやりとした自宅を含めた集落を屋根くらいの高さから俯瞰しているような感じの映像だ。ハナコの家は2軒つながりの長屋で隣は叔母一家が住んでいた。自宅から数分歩いたところに父が働いている工場があり、家の前には工場で使う木製のパレットなどがいつも雑然と山積みにされていた。玄関を出て左手には一本のイチジクの木があり、その横で父が2坪ほどの小さな畑でサラダ菜を作っていた。何もないところから、石で囲いを作って、土を入れて父がゼロから作った畑だ。「サラダ菜っていう野菜が

    • 静かなある春の日のこと

      生と死は、地面に落ちている木の葉が風に吹かれてふわっと裏返るような、たったそれだけのことだとハナコは言っていた。そして、その日は本当に何の変哲もない日の朝に突然やってきたのだ。 そんな風にいつも言っていたのに、心が震えた。ハナコは自分が何をしたらいいのかわからなかった。その時はどんな順番で何をしたのか全く覚えていない。 #創作大賞2024 #オールカテゴリ部門

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